第13話 騎士団
モルテは先程の拷問で入手した情報を頭の中で反芻していた。
神であれば神界と地上の行き来は容易だと思っていた。だが実際神になった今でも神界に行くことができない。
どうやらそれは創造神が絡んでいるようだった。
神といえど序列は存在する。創造神、それはこの世界と神を作った存在。間違いなくこの世界の頂点に君臨する者。創造神の許可なく神界に入ることはできない。
つまりどうにかして神界に入る権限を得なければならない。
(問題はその方法ですね...)
あえて捕まる方法も考えたがリスキーすぎる。敵の本拠地で捕まった状態から抵抗できるとは考えにくい。
(やはりこの方法しか...)
残された方法はただ一つ。創造神を地上に引きずり出すこと。直接創造神に許可してもらうしかない。脅してでも。
だが成功率は限りなくゼロに近い。この世界のトップに叶うはずがない。さらにトップを敵に回すことは世界を敵に回すと同義。いずれにせよ過酷な道であるのことは間違いない。だがモルテはとうに覚悟はできていた。
勇者の為なら世界を敵に回すことなど容易い。本当は休まず刺客を殺し続け創造神まで辿り着きたかったがそろそろ仲間達に心配される。何事もなかったかのように部屋に戻らなければならない。足早に帰還しようとするモルテであったが。
「天使殺しの大罪人め!!」
(面倒な...)
荘厳な出で立ち。騎士団だろう。
騎士団は主に治安維持を行っており魔界からの侵攻を防ぎ人間界を守ることを目的としている。人間の味方なのだから必然的に神や天使を崇めている。だがモルテにとっては敵でしかない。人間を守るという目的は一致しているが神界に仇なす存在であるモルテは決して騎士団と相容れない。モルテの目的はあくまで神。人間は守護すべき存在だった。だからここで殺す訳にはいかない。そういった意味ではモルテの能力は無力化するのにうってつけだ。騎士達の足元を凍らせる。
「あなた達とは戦うつもりないんで。じゃ」
手を降って逃げるモルテ。
「待て...!!!くそっ動けない」
乱暴に足を動かすがモルテの氷はそうやすやすと破れるものがない。
(危なかった...)
人間の敵であり、魔族の敵であり、神の敵であるモルテ。世界を守ろうとする彼だが守れば守るほど敵が増えていく。自嘲するかのように笑うモルテ。時折自分が何故こんな目に遭わねばならないのか、そう考えるときがある。自分のこともよく分からなくなってきている。だが全ては勇者のため。それだけがモルテの心を支えていた。
「その支えがなくなったら彼はどう壊れるのかな?楽しみだね!!」
遠くからモルテを覗く影が1つ。黒い髪に黒い目、黒い服を身に纏うその姿は夜そのもののようだ。彼は妖艶に微笑む。
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