第10話 記憶

 モルテは先程あったことを仲間達に共有した。

「ハイスが神...?私が眷属...?」

 あまりの情報量に頭がパンクしかけているセイラ。

「まあ全部あのアーディとかいう男が言ってただけなので確証は無いですけどね」

「アーディか〜〜神出鬼没だよね。モルテも会ったことあるんだ」

「ナハトも?」

「うん、まあちょっとね」

 二人はアーディと何かあったようだ。

「ごめんなさい!!」

 頭を下げるセイラ。

「どうしたの!?」

「私のせいで危ない目に遭って...こんなことに巻き込んでしまって...」

 俯くセイラ。

「気にしないでいいって〜危険は日常茶飯事だからさ」

「でもこれ以上助けてもらうのは...」

「いえ。俺達の目的は神です。ですからセイラさんと利害は一致してます。好きでやってることなので責任感じる必要はないです」

「...わかった。お願いするね。ありがとう」

 セイラは渋々納得した。

「でもこれで振り出しに戻っちゃったね。どうするの?」

「現状手がかりはセイラさんしかありません。頑張ってもらいましょう」

「私?」

「眷属としての力を使えば主であるハイスの位置が割り出せる可能性が高いです」

「そっか...!!私が力を使いこなせれば...!!頑張るね!!」

「とりあえず今日は休もう」

 今日はひとまず解散することにした。




「モルテ」

「ああ、ナハトでしたか」

 モルテの部屋を訪れるナハト。いつもの軽快な雰囲気は無く、真剣な表情をしている。

「他の人に言えない話ですね」

 会話が漏れ出ないように結界を部屋に展開するモルテ。

「話早くて助かる〜流石だね」

「俺どさくさに紛れてセイラちゃんを視たんだよね」

「そしたらさ。何回やってもハイスと再会してるセイラちゃんは見えなかった」

「...」

「考えたくないけどさ。最悪の想定をしておく必要があるよね」

「でも俺はセイラちゃんが傷つくところを見たくない」

「分かりました。じゃあ直接神に聞きましょう。手荒な手段になりますけど」

「え!?神に会う手段あんの!?」

「ないです。だから俺を餌にして釣り出します」

「ここだけの話、俺今フリーの神様なんですよ」

 モルテは氷神との出来事をナハトに説明した。モルテは神として神界に行かなければならない。だが彼はそれを断り続けているため粛清対象になっている。つまりモルテが目立つような行為をすればすぐ神と接触できると言うわけだ。

「だから神釣りだして情報吐かせましょう!」

「いやいやいやいや。簡単に言うけどさ。勝ち目あんの?俺とモルテはともかくミディとセイラちゃんが危ない目に遭うなら賛成できないね」

「それは大丈夫です。俺が身代わりになれるんで」

「どういうこと?」

「そのままの意味です。俺は他人の致命傷を肩代わりできるんです。俺は生き返るから心配いらないし」

「記憶は?」

「...」

「やっぱ大丈夫じゃないんじゃん」

「覚悟の上です。勇者を助けるためなら俺はどうなってもいいので」

「はあ...まあいいや。言っても聞かなそうだし」

 ナハトが部屋から出て行くと、モルテはベッドに倒れ込む。

「はあ〜〜〜〜〜〜...」

 モルテは死ぬたびに記憶が消える。今までに何度も死に、何度も記憶が消えてきた。一応記録として出来事などは残してはあるがそれを読んでも他人事のように感じてしまう。

 (俺は一体誰なんでしょうね...)

 悲しい笑みを浮かべるモルテ。いくら記憶が消えようと勇者を救うことだけは忘れない。

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