第6話 セイラ

「え...やってない...そんな...」

 セイラは魔界にある建物のドアの前で立ち尽くす。やっとの思いで頼れる場所を見つけたのに。

 行く場所もない彼女はひたすらドアの前で待つことにした。

 数時間が経過した頃。人の気配がする。セイラは目を凝らして辺りを見回す。

「もしかしてお客さん!?ごめんね〜今日ちょっと立て込んでて」

 柔和な態度の男がこちらに向かって駆けてくる。近づいてきた際に気づいたがその男は酷い怪我を負っていた。生きているのも不思議なくらいに。思わず悲鳴が漏れてしまう。

「ひっ...」

「ああごめんね...怖がらせちゃったかな」

 セイラと距離を置く男。男は怪我の影響がふらついている。

「...っと。とまあこんな感じだから今日はちょっときついんだ。また明日来てくれるかな」

「どうにか今日中にお願いできない...?いや!ごめんなさい忘れて。帰るね...」

「待って。君は帰る場所がないんじゃない?」

「...!!」

「君は藁にもすがる思いでここを訪ねてきた。違うかな?」

「そう...」

「じゃあ答えは簡単だよ!うちに泊まっていけばいい」

「ああもちろん部屋は個室にするね。野郎ばっかで申し訳ないけどそれで良ければ」

「いいの...?」

「困ってる女の子見過ごせないからね」

 ウィンクする男。それを見てセイラは少し微笑む。



 ナハトとミディは便利屋のようなものを営業している。

「ナハトお前早いんだって!」

 ミディが慌てて追いかけてくる。

「お客さん来てたんだもん。今日は遅いから泊まってもらうことにしたから。案内しといて」

「やけに肩入れするな...」

「なんでだろね。昔の俺と同じ目してたからかな。やんかほっとけなくて」

 セイラとモルテ達を置いてナハトは疲れたからと自室に直行する。

「...」

 ベッドで横になり、ナハトは一人思考を巡らせていた。彼は先程嘘をついた。見えていたのだ。はっきりとした未来が。その未来では。

 血に濡れた仲間たちが力なく血に伏している姿が見えた。そして別の場面でモルテについてははっきりと見えた。

 (モルテは勇者に殺される...つまり勇者を助けたらモルテは死ぬ。俺はどうしたらいい...?)

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