ナハト編:出会い・下
「ここ足場悪いから気をつけて」
ミディを安全な場所に逃がすため道案内をするナハト。
「ああ。そういえばナハトって大人びてるな〜何歳ぐらいなんだ?」
「う〜ん5000歳?ぐらい?覚えてない」
冗談に聞こえないトーンのナハトの言葉にミディは驚愕する。
「は...?」
「俺魔族だし」
「ま...魔族...?」
ミディの反応も無理はない。大半の人々が魔物や魔族に対して恐怖を抱いている。特にミディはその体質から魔物に襲われることが多く良いイメージを持っていなかった。ナハトから距離を取ろうと一歩、また一歩と下がっていくミディ。突然ナハトが声を荒げる。
「そこ...!!崖!!」
「わああああああああああ!!!」
「......っ!!ミディ......」
必死にミディを抱きかかえるナハト。
「う.......俺........生きてる.........?」
「そうだナハトは!?」慌てて周囲を見渡すが誰もいない。少し冷静になってきた彼はこの高さから落ちたら普通は助からないこと、地面の感触に違和感があることに気づく。恐る恐る下を見るとーーー
「ナハト........!!」かろうじて人の形を保っているナハトがいた。体のあちこちが折れ、取り返しのつかない量の血を流している。
「そんな.......どうしよう......」
そんな中ナハトが口を開く。
「お......おも......」
「ああごめん!!!!そうだ病院......!!」
「魔物の住処に病院あるわけないじゃん」
「あ......そうだよな!!!!えっと......」
慌てて思考がおぼつかない。
「放っておけば治るから気にしなくていいよ」
素人のミディから見ても致命傷だったはずのナハトの傷が少しずつ消えていっているように見えた。
「えっ.......治ってる........?魔族ってこんなに回復速度早いのか......?」
「ああ魔族の回復速度は人間よりは早いだろうけどそれとはまた別だよ。俺が不死身なだけ」
「え?」
「え?」
「不死身ってほんとか......?」
「マジマジ」
怯えるミディを安心させようと自分の能力を明かすナハト。しかし、それは彼にとって逆効果だったようだ。
「不死身ってことは常人なら死んでる怪我も食らうんだろ?それってめちゃくちゃ痛いだろ.........」
ミディは泣きそうになっている。
「えっ」
ナハトは面食らっている。不死身なら平気だな!!よかった!!というリアクションを期待していたのだが現実はそうは行かなかった。ナハトの未来視は常時使っているわけではないのでたまに事が上手く運ばないときがある。
痛みはもちろんある。それにナハトは常人より痛みを感じやすい体質だ。即死級の攻撃を受けても死なないためその痛みをもろに食らうことになる。ミディの指摘は正しかった。ただナハトはその長い人生で彼の痛み、辛さについて言われたことがほとんどなかった。寧ろ死なないからと過酷な戦場に連れて行かれたり、捨て駒として使われることが多かった。
「不死身ってめちゃくちゃつらいだろ...?」
確認のようにナハトに尋ねるミディ。
「まあ...でも羨ましがる人が大半だよ?よくそう思ったね」
「あんな怪我して平気なフリしてるお前を見てたらそう思うわ!!」
「ははは...ごめんね」
自分の本質を見抜かれている。ミディには敵わないなとナハトは初めての感覚にむず痒さを覚えていた。
「謝るのは俺の方だよ...魔族ってだけでビビって怪我させて...迷惑かけたよな。本当にごめん」
頭を下げるミディ。
「ふふ」
「なんで笑うんだよ!」
「ごめんごめん。律儀だなと思って」
人間とこのようなやり取りができる日が来ようとは思ってもみなかった。あの時死を選ばなかったことを少しだけ良かったと思えたナハトだった。
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