ナハト編:出会い・上

 ナハトの目は未来を見ることができる。だが長い年月でその力は彼に苦痛しかもたらさなかった。今は眼帯をして未来を見ないようにしている。

 刃を首筋に当て、ゆっくりと沈めていく。その時。

「うわああああああああ!!!!!」

 男が飛び出してきた。

 わざわざ静かな場所を選んでいたのでこれには流石にナハトも驚いた。事前に”視”て確認しておくべきだったと後悔した。視線を声のする方へ向けると人間が魔物の群れに追いかけられている。

 (マジか.........あ〜〜〜〜もう見過ごせるわけ無いじゃんこんなの..........)

 彼は冷静だが冷酷ではない。咄嗟に剣を引き抜き青年に迫る魔物の爪を受け止める。その勢いのまま剣を振り抜く。ナハトの常人離れした膂力は近くの魔物を大量に巻き込みその全てを斬り伏せていた。


「怪我ない?」剣を鞘に収めながら尋ねる。

「うん........ありがとう.........」

「ここ魔物うじゃうじゃいるから危ないよ 早く帰りな」

「ああ......うん.......」

 煮え切らない返事をする青年。

「帰りたくない感じ?」

 青年はゆっくりと頷く。

「その......帰る場所がないんだ」

「.......」

「俺の魔力の質が魔物好みらしくてさ。どこへ行っても魔物に襲われるんだよ。だから家族からも見放されて......そんで魔物から逃げまくってこんなところに........」

 言われてみればとナハトは納得する。彼の魔力量は常人よりも遥かに優れている。

「なるほど」

「そういうアンタはここで何してるんだ?危ないって言ってたじゃないか」

 説明が面倒になったナハト正直に告げる。

「あ〜〜死のうと思って人来なさそうなとこ来たんだよ」

 当然だがミディは驚愕の表情を浮かべる。

「死......!?え!?なんで!?」

「いやなんか疲れちゃって やることなくなっちゃったし」

「そりゃ俺にはアンタの事情は分からないし詮索もしないけど.......でも、でも.......」

 青年はそこでとあることに気づく。

「そ、そうだ!!やることがないって言ってたよな!?」

「言ったけど......」

 青年はナハトの両手をがしっと掴む。

「俺の護衛になってくれないか!?」

「はあ.......?」

「頼む!!俺一人じゃすぐ魔物に食われちまう!!」

(どうするか...........いずれにせよほっとけないしなぁ........)

「.......分かった。手伝うよ」

「やった!!ありがとう!!俺ミディ。よろしくな!!」

「ナハトって呼んで」

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