第4話 ナハト
「モルテ!!モルテ!!」
「...ぅ」
瞼を開くモルテ。
「寝過ぎだよ!早く起きて!」
マレクは昨晩の死闘は知らない。モルテは傷を巧妙に隠していた。寝ぼけながら端末を確認するモルテ。そこにはフィロからの連絡が入っていた。
『来たぞ』
『ただ少し面倒なことになっている』
『とりあえず来い』
フィロらしい簡潔な文章だ。
「フィロから連絡が来ました。行きましょう」
診療所に到着する。しかし、探し人はどこにもいないようだった。
「来たな。お前、説明しろ」
フィロは側にいる人間に説明を促す。人間は狼狽しつつも話し始める。
「頼む!!ナハトを助けてくれ!」
「落ち着いてください。何があったんです?」
「俺を狙う魔族から俺を守ってナハトが連れて行かれた...」
「なるほど」
「これ以上は俺の手に余るからな。やるなら勝手にやれ」
悪態をつくフィロ。
「そうですね。とりあえず助けに行きましょう」
人間の案内で移動しつつ言葉を交わす一同。
「そういえば流れで助けを求めちゃったけどあなたは...?」
「そういえば名乗ってなかったですね。俺は魔族のモルテ。この小さいのはマレクです」
「俺はミディ。ナハトの相棒だ。よろしくな」
「へえ。あのナハトが相棒を。心変わりしたもんですね」
「へへ...」
誇らしげにするミディ。
「ついた。ここだ」
足を止める3人。
そこは魔界にある廃墟のようだった。魔物が住むのにはうってつけだ。
「突入します。俺から離れないでください」
「待って!!正面突破なの!?」
「人間二人連れてる時点で隠密行動は無理ですよ」
魔物は人間の気配に敏感だ。
入口のドアを蹴破るモルテ。中には大量の魔物がいたがモルテが一瞬で氷漬けにしてしまった。
(雑魚は問題ないけどナハトを攫った魔族が問題ですね...)
モルテは光神との戦いで負傷しているため魔族の数によってはどうなるか分からない。すると突如ミディとマレクを突き飛ばすモルテ。先程まで二人がいたところに魔法陣が展開される。鈍い音と共に魔法攻撃が発射され廃墟が崩れていく。至近距離で攻撃を浴びたモルテであったが咄嗟に氷の盾を作って防御していたため無傷だった。しかし今は二人の無事を確保するのが優先だ。氷の盾を蹴り二人の頭上に飛び込み、二人を抱え込む。
ガラガラと崩れていく廃墟。3人は瓦礫の山に埋もれてしまった。
「...っ」
瓦礫を力任せに押し上げるモルテ。咄嗟に覆いかぶさったため2人は無事であった。しかしモルテの腹部に破片の一部が刺さっている。先日の負傷のこともあり激痛が走る。
「モルテ!」
「...平気です。それより」
モルテの視線の先には魔族がいた。先程魔法を使ったのはあの魔族だろう。周りに仲間がいないことを気配で感じ取りモルテは安堵する。一人なら何とかなりそうだ。モルテは相手の能力を無効化することができる。魔法使いとの相性はいい方だ。しかし無効化能力は勇者の力だ。モルテの手に余る。負荷が大きいためあまり無茶はできない。どう戦おうか思考を巡らせていると。
突然魔族の体が両断される。
「!?」
魔族の背後から現れたのは眼帯をつけた男だった。ミディが嬉しそうに声を上げる。
「ナハト!」
「ミディ。無事で良かった」
「いや自分の心配しろよ!!というか捕まってたんじゃ」
「さっき廃墟崩れたときにどさくさに紛れて逃げれたよ」
「そっか。とにかく早く手当しよう。酷い怪我だ...」
ナハトは全身が赤く染まっていた。捕まっていたのだから拷問でもされていたのだろう。ナハトは安堵したのかその場に崩れ落ちる。
「ナハト!」
「この傷じゃ...もう...」
ナハトは明らかに致命傷を負っていた。
「ああ大丈夫ですよ。ナハトは不死身なので」
「え!?そうなの!?」
「魔族は死なない俺をいたぶるのが好きなんだよね...なんか盛られたみたい」
ナハトは不死身だった。それをいいことに今まで沢山の勢力にいたぶられ続けた。
ナハトの体に手をかざすモルテ。
「...呪いがかけられてますね」
「そんな!!どうすれば」
「てかなんでモルテいるの」
「その話は後で。助けてほしかったら俺の目的に協力してください」
「俺今死にかけなんだけど!?」
「死なないでしょ。ほら早くしないとどんどん苦しむことになりますよ」
「悪魔!!わかったよ...」
モルテは手に力を込める。無効化能力を使ってナハトにかけられた呪いを解除した。しかし負担が大きかったようだ。口の端から血を零すが、見られないようすぐに拭った。
「おおだいぶ楽になったよ。でも動けないかも」
「仕方ないですね」
ナハトを肩に担ぐモルテ。モルテも満身創痍であったが、ナハトの身長だとまともに運べるのはモルテしかいない。こうして4人はフィロの診療所に帰還した。
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