ナハト編:悪・中
「目が覚めたか?」
薬品の匂いがする部屋のベッドでミディは目覚めた。ベッドの横には白衣を着た男が立っている。医者だろうか。
「ナハトは!?」
開口一番にナハトを探すミディ。医者のような男はミディにデコピンをする。
「いたっ!!なにするんだよ!」
「落ち着け。ナハトはここにはいない」
「じゃあどこに」
「さあな。少なくともここ周辺にはいないだろうな」
「そんな...ナハト...俺...」
「全く...貴様を世話する俺の身にもなって欲しいものだな」
「世話?というかあなたは?」
少し冷静になったミディは尋ねる。
「俺はフィロ。まあ研究好きの医者とでも言っておこうか。そんでナハトからお前の面倒を見るように言われてる」
「ナハトから?」
「もう自分はそばにいてやれないから代わりに守って欲しいってな。普通なら即断るんだがあいつは魅力的な提案をしてきた」
一呼吸置いて話すフィロ。
「自分を好きに研究していいってな」
「は...?」
「魔族の研究など同意の元やってくれる奴なんて今までいなかったからな!更にあいつは魔族の中でも長命で別格だ。それに何をしても死なない!!研究しがいがある!」
興奮しながら語るフィロ。さながらマッドサイエンティストのようだ。
「研究って...ナハトに何したんだ」
ミディが責めるような目でフィロを見つめる。
「まあ解剖とか耐久テストのために毒とか暴力とか片っ端からやったな。もちろん合意の上だぞ?」
それを聞いてミディの背筋が凍る。どうして。どうしてそこまでするのかと。自分を解剖されるなんて嫌に決まっている。それなのに自分のためにナハトは喜んで身を捧げた。無力感でどうにかなってしまいそうだった。衝動のまま部屋のドアから出ようと駆け出す。
「どこへ行く気だ?」
「ナハトを探す」
「お前が行って何になる?あいつの足を引っ張ることしかできないのだろう?」
「そうだ...そうだけど!!それでもだ!!あのバカを1回説教しないと気が済まないんだ!!」
「ナハトの覚悟を無駄にするのか?あいつは自分がどうなってもいいという覚悟でお前を守ったんだ。お前はそれを台無しにするのか?」
「それは...」
正論だ。自分は今ナハトの努力を無駄にしようとしている。このまま大人しく従っている方がナハトのためにも自分ためにもいいことは間違いない。ただそんなことはナハトに会えるのなら瑣末事だ。
「あいつは...あいつは俺と出会う前からずっと一人ぼっちだった。このままでいたらまたあいつは孤独になってしまう。そんなことはさせない!」
力強く言い張るミディ。それを面白そうに眺めるフィロ。
「俺はナハトからもう1つ指示を受けていてな。ナハトを探そうとしたら何をしてでも止めて遠ざけてほしいと言われた」
「な...」
「だがそれを実行するか判断するのは俺だ。良く吠えたな。俺としても貴重なサンプルを失うのは心苦しい。ここは少し手を貸してやろう」
「サンプルって...まあいいや。頼む!」
「ところでこれからどうする気なんだ?」
「...考えてなかった。とりあえず行動しなきゃって無我夢中で...」
「二人揃って馬鹿だな。これを見ろ」
レーダーのようなものが浮かび上がる。そこには点が印されていた。
「発信機だ。解剖の際体に取り付けておいた。幸いまだ遠くには行っていないようだな」
「ファインプレーすぎる...行こう!!」
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