レーベン編:過去④
そんな生活が続いて数年。
「っ!!!げほっ!!」
辺り一面を鮮血が埋め尽くす。
(ぐっ......体が.......もう限界なのか.......)
(いや)
(まだやれることはあるはずだ。オネットが幸せに過ごしてもらうまで....まだ死ぬわけにはいかない......!)
施設では使い物にならない者は容赦なく捨てられる。だからこそ彼が取れる方法は1つ。
「なんだ話というのは」
「過去に凍結された回復薬の実験を私に受けさせていただけませんか」
「あれか.......確かに成功すればほぼ不死身の兵隊が出来上がる素晴らしい研究だった。だが副作用が大きくこの実験に耐えられるものは一人もいなかった。普段受けている実験とは比べ物にならないんだぞ」
「俺はもうじき死にます」
「.......知っている。実験体のメディカルチェックも研究の中では重要だからな。」
「俺はこの施設に来てからその力を発揮し数々の功績を残してきました。その貴重な実験体が使い物にならなくなる前にやれるだけのことはやった方が良いのでは?」
「自分で言うとは相当な自信家だな.......だがそうだな。お前の言っていることは正しい。お前の能力はここで一番優秀で強い。施設の損失はかなり大きいだろうな」
「.......いいだろう。ただし失敗は許されないぞ。途中でやめることもできない。それでもお前はやるというのか?」
「必ず耐えてみせます」
そこからはいつにも増して地獄の日々だった。気が狂いそうになる程の激痛。レーベンはどんどん追い詰められていく。だが妹の存在だけが彼を彼たらしめていた。
レーベンの体には変化が起こっていた。まず普通の人間とは比べ物にならないくらい丈夫かつ回復力が早い。だがそれだけではない。施設特製の薬を投与することによって傷を即座に回復することができた。
これによりレーベンは更に功績を残していった。
だが代償なき力など存在しない。レーベンの寿命はもはやほとんどなく施設の薬と設備で辛うじて生きているような状況だった。本当は妹をこんな危険な施設ではなく普通の家で普通の生活を送ってほしかった。そのために尽力するつもりだった。だが。
(俺はもうこの施設から出ることができない...)
施設によって延命しているような状況。彼はここから逃げられない。妹のためだけを想ってここまで来た。それなのにどうしてこんなことになってしまったのだろうか。
(あの日...手を汚したあの日から俺は真っ当に生きる権利を失った...はは...自業自得だな...でも...)
「オネットと一緒に暮らしたかったなあ...」
静かに涙を流すレーベン。その涙を拭うものは誰も存在しなかった。
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