レーベン編:過去③

「ついたぞ。ようこそフォーゲルへ」

「大きい...」

 思ったよりも施設が大きくたじろいでしまう2人。緊張しつつ中に入ると白く清潔感のある内装をしていた。

「とりあえず2人にはこの部屋で生活してもらう。同じ部屋の方が安心するだろう?仕切りがあるから問題ないだろう。今日はもう休むといい。明日から働いてもらうぞ」

 そう言い残すと所長は部屋を出ていってしまった。それから2人は泥のように眠った。久々にまともな寝床にありつけた。この生活を手放さないためにも明日から頑張ろうと意気込むレーベンだった。




 次の日。手続きを完了させた2人は部屋で休んでいた。するとドアが開く。

「レーベンさん。実験の準備が整いました。こちらへ」

 呼ばれたレーベンは部屋を出ようとするがオネットに袖を引っ張られる。

「お兄ちゃん...」

「心配そうな顔をするな。行ってきます」

 そう言ってオネットの頭を撫でる。


 実験室に着くと係の者が淡々と実験を進める。

「まず初日ですのでレーベンさんのデータを取らせていただきます。シミュレーター起動」

 すると大量の魔物が出現する。

「!?」

 即座に臨戦態勢に入るレーベン。

「落ち着いてください。これは...そうですね。実体のあるホログラムとでも言いましょうか。こちらの魔物達と戦ってレーベンさんの能力がいかほどか計測します」

「数が多くないか...?」

「限界まで追い詰めた時人は真価を発揮するものです。そのデータも取りたいので。死ぬ寸前で止めますので死ぬことはないですよ。では」

 そう言い残して行ってしまう。残された大量の魔物と対面するレーベン。

 (魔物と戦うのはいい。だが怪我をするとオネットが心配してしまう...怪我するわけにはいかない...!!)

 剣を数本展開し戦いに挑む。


「はっ...はっ...はっ...」

 荒い呼吸をするレーベン。大量の魔物に半ばリンチに近い暴行を受け深刻なダメージを受けていた。剣を召喚するのももう限界だ。そんな中魔物が鋭い爪を眼前に振り下ろそうとした。

 (やられる...!!)

 思わず目を瞑るがいつまで経っても攻撃が訪れない。恐る恐る目を開けると魔物たちが跡形もなく消え去っていた。

「はいそこまで。計測終了です。お疲れ様でした。医務室へ行った後部屋にお帰りください」

 無機質な声で告げられる。

「終わっ...た、のか...」

 その場に倒れ込むレーベン。

(これが毎日続くのだろうか...つらいな...でも頑張らなくては...)

 震える体を無理矢理動かし医務室へと向かった。


「ただいま...」

「お兄ちゃん!お帰りなさい...って酷い怪我...っ!!」

 涙を溢すオネット。レーベンの姿は見るに堪えないものだった。全身にガーゼと包帯を身に着けている。

「大丈夫だ。俺は大丈夫だから。」

 そう言っていつものようにオネットの頭を撫でる。

「オネットは変わりなかったか?」

「うん」

 他愛もない会話をする。この日常がレーベンが守りたかったものだ。それを噛み締めるレーベン。

 就寝の時間。

 (ぐっ...傷が痛む...つらい...痛い...でも声を上げるわけにはいかない...)

 オネットを心配させまいと歯を食いしばって痛みに耐えるレーベン。結局ほとんど寝れないまま朝を迎えることになる。

 

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