レーベン編:過去②

 レーベンとオネットは二人で行く宛もなく森を歩いていた。足取りが重くなっているオネットを横目で見たレーベンは。

「少し疲れたな...休憩にしよう」

「そうだね...私達これからどうなっちゃうのかな...」

 二人の逃亡劇は限界が迫っていた。冒険者になって日銭を稼ごうとしたが二人共まだ幼い。保護者がいないと話にならないようだった。

「...待て 何かいる」

 息を潜める二人。すると魔物が付近にいることに気づく。

「オネットは下がっていろ」

 魔物に近づくレーベン。すると魔物がレーベンに気づき、襲いかかる。刹那、魔物の背後から剣が高速で飛来し脳天を直撃する。レーベンを囮にして剣を遠隔操作し不意打ちする。これがレーベンの戦法だった。オネットには大反対されたがこれもオネットを守るためだと押し切った。すると突然、茂みから白衣を着た人物が飛び出してくる。咄嗟にオネットを庇おうとするレーベンだったが相手に手を握られてしまう。

 「素晴らしい能力だ!その力をもっと活かしてはみたくはないか?」

「は...?」

 予想外の言葉にレーベンは動揺する。

「ああいきなりすまない。私は研究施設の所長をやっていてね」

 名刺を渡す男。レーベンはそれを恐る恐る受け取る。

「フォーゲル...?」

「そう!君のような優秀な能力者を集めて研究したり、更にその力を伸ばしたりする施設なんだ。来る気はないか?衣食住ももちろん保障するぞ」

 胡散臭い。レーベンの所長に対する印象はその一言に尽きる。だがそれを断ったらどうなる。妹共々露頭に迷うことになる。だったら。

「2つ条件がある」

「言ってみろ」

「妹も一緒に施設に連れて行くこと。妹は研究対象から外して普通の生活を送らせること。それさえ守ってくれるのならどんな条件でも飲む」

 レーベンは迷いなく告げる。自分はどうなろうと構わないが妹に何かあってはいけない。だからこの条件を提示した。

「いいだろう。その代わりに君は実験に協力的でなくてはいけないが」

「分かった」

 即答。

「お兄ちゃん...大丈夫なの...?」

「安心しろ。お兄ちゃんがかならず守ってやるから」

「そうじゃないよ!!お兄ちゃんは大丈夫なの!?」

 実験と言われた。自分はこれから何をされてしまうのだろう。怖い。大丈夫じゃないに決まっている。だが。

「ああ。これでちゃんとした場所で寝泊まりできるようになるぞ」

 微笑みながらオネットの頭を撫でる。妹のためなら何でもできる。改めてそう思った。

「では案内しよう。フォーゲルへ」

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