第6話 利用価値
◆???視点◆
失敗した…
やっと見つけたと思ったのに、まさかこんな厄ネタを抱えていたなんて…
私の目の前にいる、それなりに顔立ちの整った青年。
最初に協会で見た時は、荒くれ者が多い冒険者の中で彼は少し浮いていて、こんな人でも冒険者になるんだなと思ったものだ。
だけど、その理由はすぐに分かった。
彼に近いた途端、アロンダイトが反応したのだ。
あの男、まさか聖遺物を盗んだの!?
驚嘆した。
どの国でも厳重管理されている筈の聖遺物をあの若さで盗み出す者がいるなんて…人は見た目によらないものだ。
まあ、私も人の事は言えないが…
私の持つ聖遺物、アロンダイトは今は亡き父親の形見だ。
分かっている。
これは私が持っていていい剣ではないということなんて。
だけど私には目的がある。
その為にこの剣が必要だ。
そして、それと同時に目的を達成するための協力者も探していた。
あの男はいい。
犯罪者の中でも話が通じそうな部類に見えるし、弱みも握れている。
それに聖遺物を持っているという事は、それなりに実力も証明されているし、一時的な協力関係を築くには、持ってこいの人材だ。
だから、声をかけた。
こんな好条件の人材なんて、もう二度と見つかることはないと思ったから。
何日間も追い続けて、その結果がこれだ。
正直なところ、かなり落胆している。
「ところでこの剣の直し方知らない?見た目だけでもいいからさ。それなりに元の姿に戻せて口が堅い職人紹介してくれよ。」
バレた途端にこの態度だ。
さっきまで逃げ回っていた人物とは思えない太々しさ。
まさかこんな人物だとは…
まあいい。
こうも利用する気満々の態度を見せつけてくるのなら、こっちも相応の対処をするまで。
利用するだけ利用して切り捨てよう。
「教えてもいいけど依頼を手伝ってくれたらね。」
「うーん……まあ、いいか。でも手伝うのは今回限りだぞ。」
男は考える様な仕草をしたが、自分の中で結論付けたのか私の提案を了承した。
今回限り、それでいい。
元から協力を頼みたかった依頼は一つしかないのだから。
「構わないわ。」
「よし。それで依頼の内容は?」
「竜退治よ。ターゲットはアズライグと呼ばれている赤い鱗のドラゴン。今更怖気付いただなんて言わないわよね。」
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