第3話 一人の夜
村を旅立って早10日。
早速、非常事態に陥ってしまった。
「金がねえ…」
そう、金がない。
急に旅を始めたもんだから大して金を持ち出すことが出来なかった。
いや、そりゃ自分の所持金は全部持って来たし家からもちょっくら盗んだりもしたが、旅というのは思いの外金がかかる。
馬車に乗ったり、宿を取ったり、3食しっかり食べたりしてたらあっという間に消えてしまった。
「仕方ない…今日から野宿だな。」
初めの頃はウキウキしてた旅も、今は少し飽きて来た。
というより、街にいると一人の自分が少し寂しく感じてしまう。
………これがほーむしっくってやつか。
親父、お袋、村のみんな……俺のこと、心配してるかな……うん、してる訳ないな。
たぶん今頃怒り狂ってる。
俺は野営の準備を整えて、街を後にした。
◆◆◆
今更だが、俺はそこそこ戦える。
仮にも剣を守る役目を授かった人間だ。
18で役目を引き継ぐ話になったのも、俺の実力があの村で一番だと認められていたからに他ならない。
そんな俺からしてみれば、森で野営するなんてのは朝飯前である。
「あらよっと。」
森で見つけたイノシシを剣の一振りで息の根を止める。
獲り過ぎるには駄目だ。
狩りの掟は食べれる量だけ。
無駄に獲るのは命を無駄にする行為だ。
明るいうちに寝床を確保し、食事の準備に取り掛かる。
今日の寝床は、川の近くにした。
本当は洞窟がよかったけど、流石にそこまで都合よくはいかない。
野営に適した場所は水辺か雨風を凌げる洞窟の二箇所となる。
今日みたいに天気が良い日なら、別に水辺でも問題はないだろう。
鍋に大量の水を入れて、火をつける。
後はイノシシの肉を入れて沸騰を待つだけ。
味付けは塩のみの簡単な料理。
余ったイノシシ肉は塩漬けにして乾燥させて非常食用の干し肉にする。
せっかく獲れた食料だ。
少しも無駄にすることは出来ない。
「あんまり美味しくねえ…」
味付けが単調というのもあるが、やっぱり一人だとご飯も美味しく感じない。
はぁ……なんか新しい出会いが欲しい。
旅といえば、やっぱり出会いだ。
新たな仲間と出会い、共に冒険する。
これぞ旅の醍醐味と言えるだろう。
だけど、俺に仲間作りは難しい。
なんせ旅を共にするには、共通の目的ってやつが必要だ。
どこどこに行きたい、あの魔物を倒したい、大金が欲しい。
理由はなんでもいい。
目的さえ一緒であれば。
だけど俺の目的は伝説の剣を直すこと。
これは人にバレちゃいけない話だ。
世界に12しかない聖遺物で、俺と同じく壊してしまった奴なんて早々見つかる訳がない。
正直、仲間探しは半ば諦めている。
ああ…でもやっぱり——
「一人は寂しいなぁ…」
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