【短歌】二十首連作「二心隠し」/一途彩士

一途彩士

二心隠し

元カノと行った神社のおみくじを神も気づかぬ速さで拾う


コーヒーをブラックでなんて見栄を張る君を見抜けない女の隣


チケットをください今日はカップル割いいえ僕は一人ですけど


制服に合わない銀のネックレスを見せびらかすようボタンをはずす


二人ってお似合いじゃんって軽口を抱きしめていた わたしひとりで


キャラメルと塩味のポップコーンを迷わず選んだ理由はなあに


ポイントがつこうがどうでもいいじゃない ここには帰ってこないんだから


マフラーと手袋かたほう握りしめ帰ってきた君 傘はどうした


洗濯も掃除も料理もしないけどぜんぶ土下座で許してくれよ


恐竜に踏みつぶされればよかったな それで君に掘り起こされたい


例外は彼女だけって言うけれど毎回書類を出してください


氷がとけかけたグラスをそれとなく彼女のものと入れ替えた午後


モーニングコールに慣れた体ではアラームのセットをしてるわけなく


しおれたキャベツが残った野菜室 どこでセールをしていたのかな


大好きな君のポニーテールよりポテチにはしゃぐ僕をゆるして


見慣れない化粧の顔にキスをして二度寝に戻る 扉は閉まる


本棚のすみから見つけた一枚の写真を生ごみと火曜に捨てた


牛乳にはちみつまではいいとしてショウガを入れる人だったっけ


目が合って目をそらしてまた合って これはクロです調書とります


みかんから白いスジをとるのよね わたしの白髪もとるのよね

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【短歌】二十首連作「二心隠し」/一途彩士 一途彩士 @beniaya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ