悪愛憎様

月瀬澪

1.放課後のアプトーシス


「愛を詠もうか」なんて

 紛らわしい言葉で紡がないで


 紅蓮の闇に混ざる熱い声

 にがい風と散りゆく波の花

 くすぐる甘い唇


 明日はすぐそこ

 間違って進んだって

 たぶん 今日に老いて枯れる

 勝手に息しないでよ


 夜もすがらに抱かれ眠っても

 答えなんて見つからない

 深い海に落ちて沈んでも

 永遠はすでに絶望の淵


 愛の細胞なんてね

 はじめから二つに別れていて

 また別れていくだけ




「愛を呑もうか」なんて

 生まれたての細胞溶かさないで


 逢魔時おうまがときに灯る隠し味

 冷えた風と瞬く星空

 飲み干す胸の奥底


 未来をとなりに

 持ってきて抱いたって

 きっと 今日は置いて捨てる

 重くて運べないよ


 摩天楼に迷い込んでも

 疲れた足は止まらない

 鈍い光が消えて囚われて

 お互いはやがて呼吸をやめる


 愛を語ろうとしたって

 生まれたての愛に溺れていて

 ただ言葉も出ないだけ




 愛が加速度上げたって

 やがて勝手につながるから

 出会う星はわかってる


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