第15話 恩人のためなら

「――えっ、射精を4日間我慢することになったですって!?」


 この日の夕飯中、道乃丈は4日間の射禁について夜見に語っていた。

 リビングには潤葉と紗綾の姿もあり、一緒にご飯を食べている。


「白十字のお偉いさんが来て、万全な精子を採取したいって言われたので応じたんです」


 道乃丈がそう告げると、夜見たち3人は部屋の片隅に移動し――


「(なんてことなの……最近は道乃丈くんのナマぴゅっぴゅのおかげで頑張れているところがあったのに……)」

「(わたしも道乃丈くんとのえっちがキツい練習を乗り越える英気になっているんですが……)」

「(アタシなんてミチオとのえっちで監督としての閃きを得てるところがあんのに……)」


 3人の困り声が聞こえてくる。

 道乃丈はちょっと申し訳ない気分になった。

 しかし我慢の気持ちは揺るがない。


 そんなこんなで、いつもなら夕飯後にはえっちな酒池肉林状態になるのだが、今日は道乃丈が鋼の意志を持って退散。

 自室に戻ったあとはヌきたくならないように無心で過ごした。


 こうして今宵はひとまず何事もなく過ぎ去り、翌朝――。


「――うわ……」


 夜見の部屋に朝食を作りに向かった道乃丈は、


「おはよう……道乃丈くん……」


 夜見が生気のない表情をしていたことに驚いてしまった。


「だ、大丈夫ですか……?」

「大丈夫かどうかで言えば、大丈夫じゃないわ……」


 どうやら道乃丈以上に禁断症状が出始めているらしい。


「私はもう……道乃丈くんとの戯れなしには生きていけない女になってしまったみたい……」


 ひとまずリビングに上がらせてもらう。

 その場には潤葉の姿もある。

 潤葉はまだ大丈夫そうだが、ムッツリなことを思えば表面の見かけからは分からない部分がありそうだ。


「あの、道乃丈くん……もし迷惑でなければ、おねえとシャワーでも浴びてあげてくれませんか?」

「え」

「このままだとおねえ、仕事とかにも支障が出そうなんで……それくらいなら、出来たりしません?」

「そ、それは……」


 あまりにも危険なミッションだ。

 禁欲すべき現状、絶対にやるべきことではない。


(けど……僕のせいで夜見さんが苦しむのはな……)


 夜見は恩人である。

 夜見が拾ってくれたからこそ、今が在る。

 その夜見をないがしろには出来ない。

 そう考えた道乃丈は、


「わ、分かりました……夜見さんとなら、シャワーくらいは全然……」

「――いいの?」


 クワッと夜見が食い付いてきた。


「い、いいですけど……浴びるだけ、ですからね?」

「分かったわ……っ」


 そんなこんなで脱衣所へ。

 ハアハアハア、と息を荒げている夜見の部屋着を脱がすことになり、キャミソールとホットパンツを脱がせて下着姿にする。

 カップ付きキャミソールだった影響か、夜見はノーブラ。

 すでにたわわな双丘があらわになっている。


(し、刺激が……)


 もっちりむちむち。

 たわわにぷるるん。

 道乃丈はごくりと喉を鳴らしてしまうが、無欲を意識して夜見のショーツを下ろし、脱衣作業を終わらせた。


「ハアハアハア、道乃丈くんのことは私が脱がせてあげるからね……♡」


 野獣と化しそうな夜見が手を這わせてくる。

 部屋着を脱がされ、最後に伸縮性のあるボクサーパンツを下ろされた瞬間、


「あら……♡」


 と微笑まれた。

 無欲を意識していても、状況が状況だけに道乃丈の道乃丈はスーパー道乃丈になってしまっている。


「やっぱり道乃丈くんもつらいのよね……♡ でも、頑張らないとダメだもんね?」

「は、はい……でも夜見さんをシナシナにするのは本意じゃないんで、シャワーくらいは頑張ろうかと……」

「ふふ、ありがとうね? じゃあ私も刺激を与えないように努めてみるわ♡」


 と言ってくれるものの、このあとのシャワータイムで心底丁寧にちゅこちゅこ洗われてしまい、危うく我慢が終わりかけたのはここだけの話である……。

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