第5話 真シスターとオーナー
「――あっ……は、はじめまして。小宮山
翌日の午前中。
道乃丈が洗濯機を回している最中に本当の潤葉が帰ってきた。
黒髪ショートポニテの、姉に似た美人。
でも肉感的な姉と違い、その体型はスレンダー。
昨日マンションオーナーの
(でも、予想と違って体育会系感が薄い)
野球部と言えばThe体育会系。
良くも悪くもはっちゃけた人間が多い。
けれど、見るからに年下だと分かる道乃丈に敬語を使うくらい、本物の潤葉は目の前でぺこぺこしている。
そういう気質なのかもしれない。
「……姉からお話は伺ってます。姉が迷惑掛けてませんか?」
「全然ですよ。どっちかって言うと僕の方が掛けてる側でしょうし。あ、ところで、合宿帰りなら洗濯物ありますよね? 今ちょうど洗濯やってるんで、よければ出してください」
「あ、はい……汗臭いと思うんで、その辺気を付けてもらえたら……」
応じながら、ビニール袋を渡される。
その際、手が僅かに触れ合い――
「あひゃっ!?」
潤葉が妙な悲鳴を発していた。
「お、男の子に触っちゃった……」
そして、照れ臭そうに赤面している。
(もしかして……僕に低姿勢なのって男への免疫が無さ過ぎるから……?)
男女比が1:20ともなれば、男性と触れ合えずに生涯を過ごす女性もそれなりに居ることだろう。ほぼ1:1の元世界でも女性とまったく触れ合えない男性が居るのと同じように。
潤葉はプロ注選手なことから分かるように恐らく野球一筋人間。
男女比に偏りがあるこの世界で何かに打ち込む女子は、きっと男性との出会いが極端に少ないのだろう。
(僕が一緒に暮らして大丈夫かな……)
ちょっと心配だ。
リラックス出来なくさせるのでは、と。
「じゃ、じゃあわたし、個室の方で過ごすので……」
そう言ってこの部屋にひとつだけある個室に向かう潤葉。
個室の中には夜見と潤葉それぞれの机とベッドがある。
道乃丈がそこに入るのは夜見に誘われたときくらいなので、ひとまずのんびりしてもらえれば、と思う。
それから道乃丈は洗濯を済ませ、お昼を作った。
「わ……美味しいですね」
個室の潤葉に声を掛けて一緒に食べ始めている。
海鮮パスタを作ったのだが、お気に召してもらえたようだ。
午後からは自主的なトレーニングに向かうとのことで、潤葉は午後1時過ぎには部屋から不在となった。
性に積極的な夜見と紗綾を見ているので、潤葉のノーマルムーブが無駄に新鮮だ。
「――まぁ潤葉ちゃんはそもそも大人しい子だからね。ちっちゃい頃からそう」
道乃丈の午後は、マンションオーナー紗綾とのお出かけである。
道乃丈が夜見のスウェットとコンビニ下着で過ごしていることを気にしてくれたようで、衣服を買ってあげる、と誘ってくれたのだ。
現在はとあるショッピングモールのメンズファッションの店に居る。
「……僕の存在が迷惑になったりしないですかね?」
「それに関しては問題無いと思うけどね。潤葉ちゃんはムッツリなだけ」
夜見・潤葉姉妹と幼なじみだという紗綾。
そんな彼女がそう言うなら、そうなのだろう。
「それより、ミチオにはこの服も似合いそう。カゴに入れとくね~」
「あの……お金は大丈夫なんですか?」
「若きマンションオーナーの懐なんて気にせんでよろしい♪」
「……そういえば、若いのにマンション持ってるってすごいですよね。実家が太かったりするんですか?」
「まさにその通り。あのマンション、ママから譲り受けたヤツだから」
「オーナー業がメインなんですか?」
「ううん、メインはAV監督」
「……え?」
思わぬ返答を受けて道乃丈の目が点になった。
「……アニマルビデオ監督ってことですか?」
「ううん、アダルトビデオ監督」
「ですよね……」
恐らく女性向けの、ということだろう。
「……処女が監督やってたんですか?」
「そう。AVも家業でね、ちょっとだけ下積みのアシスタントしてから『お前もう監督やれって』ってママが」
「へえ……」
すごい家に生まれたらしい。
「男優少ないからさ、興味あるならミチオもやってみる? 裏界隈のスターになれるかもよ?」
AV女優がキャッキャされるようなモノだろうか。
興味がないとは言わないが……、
「……それはちょっと考えさせてください」
「考えてはくれるんだ? じゃあ色よい返事を待っとこうかな」
そんなやり取りのあと、衣類を試着して購入。
そのあとは――
「――あんっ♡ いっぱいぴゅっぴゅしてね……♡」
衣類代としてホテルでヤることをヤったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます