第6話 募る感情 side潤葉
姉が男の子を拾ってきた。
そんな思いも寄らぬ状況に対して、潤葉は正直悶々としている。
「――ちょっ、潤葉、なんか精細欠いてない?」
「あ、ごめん。大丈夫……」
道乃丈と顔を合わせたその日の午後、潤葉は大学の練習用グラウンドにやってきて野球部の友人にノックを打ってもらっている。
合宿直後の自主練なので、グラウンドには他の部員がまばらに居る程度。
練習の虫はそれほど多くない。
(しゅ、集中集中……)
道乃丈という突如現れた年下男子に意識を掻き乱されるわけにはいかない。
少なくとも練習中は。
そんな決意を胸に、潤葉は夕暮れまで練習を続けた。
やがて自宅マンションまで帰り着くと、その1階部分で1人の黒髪男子と金髪ウルフカットの女性が話している姿を見かけた。
道乃丈と紗綾だ。
どこかに出掛けてきたのだろうか、道乃丈の手にはショップの袋などが握られている。
(――あ……)
そして2人は最後にキスをしてお別れしていた。親しげな雰囲気だった。
男性や恋愛への免疫がなさ過ぎる処女ゆえに、今の光景は潤葉にとってそこそこ刺激的なモノとして映ってしまう。
(……おねえが道乃丈くんとえっちしてるらしいけど……今の感じだと紗綾さんも……)
恐らく、しているのだろう。
身近な2人が、突如現れた男子とねんごろになった。
そんな事実が妙な高揚感を抱かせ、潤葉の悶々とした気持ちをより加速させてしまう。
「あ、もしかして見てた?w」
潤葉がゆっくりと歩みを進めると、紗綾がこちらに気付いたようだった。
「す、すみません……ちょっとだけ見てしまって……」
「別に良いけどねw」
「……買い物に行ってきたんですか?」
「そう。ミチオってばろくに服持ってない状態だったから買ってあげたんよ。あとはまぁ、そのお代がてらホテルでイイコトをね♡」
やっぱりそういうことであるらしい。
「潤葉ちゃんも興味あるでしょ? えっちなことにさw」
「えっ。わ、わたしは別に……」
「ムッツリのくせに?」
「む、ムッツリなんかじゃ……」
「でも想像しちゃってるんじゃない? アタシや夜見ちゃんがミチオとヤる様子とか、ミチオのアレとかw」
「そ、そんなことは……」
「おっきいよ~? ミチオのアレはw」
紗綾はニヤニヤしながら自らの下腹部を撫で回す。
「自分の指じゃ届かないおへその下くらいまで平然と入ってきちゃってさ、そんで奥の良いところをズンズンと突いてくんのよw それが本当に最高でさ、もうね……自分より弱い年下男子にメスだって分からせられちゃう感じがたまらんというか……♡」
「…………」
ごくり、と喉が鳴りそうになる。
「で、潤葉ちゃん、ホントに興味ないの?w」
「な、ないですし……」
「ぴゅっぴゅされるのきもちーよ♡」
「えっ。ひ、避妊してないんですか?」
「まぁほら、生理の関係でピル飲んどるし」
「あ、あぁ……」
「でもお金あるし、年齢的にアタシは適齢期だろうし、ミチオの子供なら別に孕んじゃってもいいかも、とは思うけどね。なんかミチオってこの世の男子っぽくなくて、若干儚い雰囲気がたまらんくない?」
と言われてみれば、確かにそんな雰囲気があるかもしれない。
間違いなく普通の男子ではありつつ、どこか異質な感じがある。
さながら、どこか別の世界から来たかのような。
「ま、潤葉ちゃんは将来を思えば変なことは出来んしね。ホントに興味ないならないでいーんじゃない?」
じゃあね~、と紗綾が部屋に入り込んでいく。
(興味なくはない、けど……)
ハマってしまいそうなのが怖い。
今は野球に打ち込むべき時期。
けど、息抜きだって必要。
そんな風にあれやこれやと思い悩みつつ、ひとまず姉の部屋に帰宅した。
ほどなくして姉も帰ってきて、道乃丈お手製の夕飯を3人でいただく。
「――道乃丈くんしゅき~♡」
酔った姉が夕飯後、ソファーで道乃丈を可愛がり始めていた。
潤葉も居る中でそういうことをされるのを道乃丈は恥ずかしそうにしているが、まんざらでもないのかキスに応じたりしている。
そんな光景に悶々が加速してしまう潤葉は、邪念を振り払うかのようにお風呂へ。
(おねえったら……)
節操なく密着するなんてはしたない。
潤葉はとにかく努めて冷静に過ごそうとする。
やがて潤葉がお風呂から上がると、リビングには2人の姿がなかった。
もしや、と思い個室のドアに耳を押し当ててみると――
「(――ぁんっ♡ あっ、あんっ、あっ、あぁんっ……♡)」
姉の嬌声が木霊してきて潤葉はごくりと喉が鳴った。
案の定、始めてしまっているようだ。
「(んっ、んんぅ……♡ しゅごいわぁ……♡ ズンズンってぇ……♡)」
「(……い、痛くないですか?)」
「(へ、平気よ……♡ だから道乃丈くん専用にする勢いでもっと……♡)」
「(はい……っ)」
「(最後はぜーんぶ奥に撒き散らさないとダメだからね……?♡)」
「(わ、分かりました……っ)」
ぱんぱんぱん、と手拍子でもするような音が加速されていく。
姉はきっと今、道乃丈に組み敷かれて穿たれているのだろう。
(……す、すごい……)
音しか聞こえないのでもしかしたら自分の想像とは違うことをしている可能性もある。
しかし、その気配を感じ取っているだけでお腹の奥がカッと熱くなる感覚があった。
やっぱり潤葉の胸中には尽きない興味があるのだ。
自分もされてみたい、という邪念がみるみるうちに醸成されていく。
男に良いようにされるなんて情けない、という価値観もある中で、しかしそんな経験が出来るのは現代において一握りの女性であることもこれまた事実だ。
(せ、せっかく近くに男の子が居るんだったら……)
そんな風に思いが膨れ上がっていくのは、無理からぬことであった。
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