第8話 会話

エルフの向こうには馬のような生き物がいる。馬のようで馬でない。

あれは何か、今の僕に答えは出せない。唯一言えるとしたら、"化け物"。これだけだ。


しかし同時に、子供な頃に描いた騎士の馬の絵に命を吹き込んだような姿をしている。

馬の背丈は軽く3メートルを超え、筋肉が目に見えて大きい。全身は青白く光り、肩まで伸びるたてがみあわい赤色に光っている。胴には馬具をつけて人が乗れるようになっている。

僕は思わず見惚れてしまった。


「いい馬だろう。自慢の相棒だ。」


エルフが言う。心なしかこちらに向けていた殺気が薄れているように感じる。


このエルフ、自分が美しいと気がついていないのだろうか。全く自分をよく見せようとしていない。


色白の肌に背中まで伸びる金色の長髪。動きやすくするためか、その髪は後ろでゆわいている。全身青い制服のような服をまとっていて、地球でいう制服軍人の見た目をしている。

腰には1本の剣と短い棒。それに丸底フラスコのような瓶が3つベルトで固定されている。瓶には液体が入っているようで、赤、青、緑が1つずつある。


「おい、変な目つきを今すぐ止めろ。」


我に返って顔を見る。

小さな顔に小さな唇。明るい赤色だ。瞳の色と合わせて口紅を塗っているのだろうか。

長い耳はこれでもかと言うほど男の本能を刺激してくる。


この世界に来て初めて会ったのがこの人でよかった。

あ、でもエルフが長寿というのは本当なのだろうか。それが本当なら...

僕は目の前のエルフが広島のおばあちゃんの歳を優に超えているのではないかと思い、少し残念になる。


「まったく、これだから短命は。話は戻るが、お前この惨状をどうするつもりだ。」


「どうって、鉱山に送られるんじゃ。」


「まぁ、それはそうなんだがな。そもそもお前はなぜここにいる。そんな小さなカバンだけで生きていたのには脱帽するが。」


「そう言われても、気がついたらここにいたんですよ。」


「まったく、ミミ殿のようなことを言うな...

あぁ、今のは忘れてくれ。こちらのことだ。」


ミミ。もしかして、

「もしかして、ミミ殿ってキノシタミミのことですか?彼女のこと何か知っているんですか!」



あれ。


何が起きたのだろうか。一瞬で視界が切り替わる。正座してエルフを見上げていたはずなのに、なぜか仰向けで空を見上げている。

体が金縛りにあったように動かない。

左にいるだろうか、静かなエルフの声が聞こえる。、


「お前、キノシタミミの何を知っている。」



キノシタミミ。昼間見つけた石版に彫られていた名前だ。何を知っているって、彼女はは僕と同郷で、こちらの世界に飛ばされてきたんだ。

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