第7話 エルフ現る

「おい!聞こえているのだろう返事をしろ!」


言葉が分かるなら話は早い。これは意地と意地のぶつかり合いだ。僕は決して諦めない!


最後通牒さいごつうちょうだ。こちらに顔を向けるだけでいい。」


悩んだ。悩んで振り向かなかった。姿を見るのが怖い。キュイーンなんて鳴く動物を見たことがないし、さらにそいつが言葉を発するなんて。僕は化け物に狙われてしまったんだ。


「はぁ。ここまで言っても無視するとは。申し訳ないが尋問させてもらう。」


ジンモン?

聞き馴染みのない言葉だ。後ろから何か嫌な気配を感じる。ブィンッという音と共に後ろで光が灯った。


これは、少しまずいかもしれない。僕は怖くなって思わず振り返ってしまった。目を開けることができない。正座をして下を向く。


「いい子だ。ひとつお前に聞く。この惨状はお前の仕業か?」


女性の声だ。軍人のような声の出し方をしている。

惨状?なんのことだろう。


「とぼけるな!ケムソウを壊しやがって!修復にどれだけの時間がかかると思っている!」


なんだ?心が読まれているのか?いや、それはないか。というか、ケムソウって僕がちぎったこの草のことか?壊れるって、この世界ではそう表現するのか?


「やっぱりお前が犯人じゃないか!まぁ、状況的にお前以外考えられないんだが。(こんな量を壊して、一体何をしたいんだよ...)まぁ、てことで、お前を連行する。」


え?

「連行!?どう言うことですか!」


「ん?そのまんまの意味だ。お前には鉱山の労働力となってもらう。まったく、法律も知らないのか?度胸もないのに知識もないってか?まったく、お気楽なやつだぜ。

あぁ、あと私はお前の思考を読んでいる。変なこと考えるなよ?」


僕はうつむいたまま動けずにいた。


キュイーーン


鳴き声がする。昨日から聞こえていた声だ。目の前の人とは違う方から聞こえる。


「おい、推理しているところ悪いが立て。あと今鳴いているのは私の相棒だ。」


そうか、思考が読まれているんだったな。

これはなすすべがなさそうだ。しかも鳴き声の正体がこの人の相棒だと知れて安心した。相棒って、ペットのことだろうか。


僕は初めて顔を上げた。目の前にはやはり人が立っていた。


見上げた。


かわいい。


これは...これがこの世に存在していいものか?今まで会ってきた美人が不細工に見えてしまうほどの美貌の持ち主だ。

これは、かわいいのか?いや、それを超えている...。


「何をじっと見ている!まったく、これだから人間は。」


人間は?この方人間じゃないのか?

よく観察してみる。

耳が、長い。

もしかして、これはエルフという存在か?

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