第5話 ニホンゴ現る
あつい。
僕はついに諦めかけていた。昼に探し始めたがのがもうすでに夕方だ。石版にもう手がかりはないと思って周りの草を掻き分けて他の石版がないか探した。しかし結果はこの通り。茎から折られた草が大量発生しただけだ。一体どれだけの範囲を探しただろう。同郷の先人がいると期待した僕がバカだったのか?
重い足取りで石版に戻る。周りの様子は秋、刈り取られた後の田んぼのようになっている。全て茎から折ったので見晴らしが良い。地面が露出している。大地は茶色の土が覆っているようだ。
はぁぁぁ。
大きなため息をついて石版の側にあるカバンに手を伸ばす。目線が地面に近くなったからだろうか、石版の奥の方の側面。地面に埋もれている文字を見つけた。
あっ!と声が出る。灯台下暗しとはこのことだろうか。まさか埋まっていたなんて。急いで文字の部分を掘り起こす。この石版は元々立っていたのだろう。文字が地面の方を向いていない。
10センチくらいか、手を土だらけにしながら掘り起こすと3行の文が現れた。土を落とすと、それは日本語だった。
"キノシタミミ"
脳裏にその人の名前が浮かぶ。
一体何が書かれているんだ。
「セノボルアルイテカミ...」
なんだこれは...日本語なのに意味がわからない。全てカタカナで書かれている。途中からは崩れていて読むことができない。
もう1つ目の太陽は沈んでいる。2つ目の太陽が沈むのも時間の問題だ。
無念...。ここは目の前の答えに背を向けて寝るしかないだろう。
夜まで時間がない。朝に聞こえていた謎の鳴き声も気になる。今日は寝床を確保しようと言う目標であったが...。
ふと視界に草の山が見えた。僕が茎からちぎった草だ。これだ。
僕は草の山に穴を掘り、かまくらのようにして身を守る空間を作った。
よし、かなりよくできたぞ。こんなことをしたのはいつ以来だろうか。子供の頃いとこと雪山で遊んだ以来だろうか。
あ、今日の記録書かなくちゃ...けど、明日いいか。
5分も経たないうちに2つ目の太陽が沈んだようで暗くなった。僕は即席の寝床の中で眠りについた。
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