第3話 第二の日の出
あれから結構歩いてきた。
僕はあることに気が付いていた。この辺りの地面は昨日まで泥だったはずだ。だが今はコンクリートのように硬くなっている。
濡れていたはずの靴はいつのまにか乾いている。一晩で乾くなんてことあり得るのか?
それに靴下も脱がずに寝てしまったが、その靴下も乾いている様子だ。
まったく、どうなっているんだ。この世界は。
一つ目の朝日は地平線のだいぶ上にある。
後ろを振り向くと夜が遠ざかってはいるが、まだ近いように感じる
さっきまで聞こえていた声は聞こえなくなっま。やはり夜行性の動物だったのだろうか。
そんな中で僕は寝ていたのか...。鳥肌が立ってしまう。夜までに寝床を確保しなくては。
今後のプランを考えながら進む。太陽の光はだんだんと輝きだし、ほのかに空気が暖かくなっている。
突然、正面の地平線がマッチをつけたように明るくなる。
どうやら2回目の日の出の時間らしい。
2つ目の太陽は頭のぞかせて朝が来ることを伝えている。
その光は次第に大きく、暖かくなり、世界を照らし出す。テレビで見たサバンナの日の出を思い出す。番組では"恵の光"とか、"命の光"と表現していたが、まさにその通りだ。
この世界にたった1人歩いている。そんな寂しい気持ちだった。自分が人間かも忘れてしまいそうだった。
しかしこの黄金の光は僕が人間だということを思い出させてくれる。
朝日はギラギラと照りつけ、大地を奮い立たせようとしている。
この世界で初めての朝を迎える。
おはよう。世界。
昼少し前くらい。
しばらく歩くと何かがつま先に当たる感覚があった。
石?
土と草以外のものはこの世界で初めてみる。
草をかき分けて石を探す。
これは...意外と大きい。これは石というより岩だな。
2本の腕で掻き分けたくらいでは到底全体が見えない。
しかし特徴的な岩だ。20センチくらいの高さの岩で表面は平らだ。
もしかして、人工的に作られたものか?
胸がぎゅっと縮むを感じる。涙が出そうだ。
初めてこの世界に人の形跡を見つけた。
1人じゃない。よかった。
安堵からか、ここまで歩いてきた疲れがどっと出てくる。
この辺りで一旦休憩しよう。
平らな岩の上に腰をかけると足と背中の骨がコキコキ音を出した。
太陽は頭上に来ている。もう正午のようだ。
昨日この世界にきた時もこのくらいの時間だったな。一応、この世界で生きることができている。
カバンからユリが用意してくれていたサンドウィッチをひとつ出す。キャベツ、ハム、卵が挟まっている。
いつものサンドウィッチだ。
彼女の笑顔は今も瞼の裏に焼きついている。
よく笑う人だった。
僕、元いた世界に戻ることって、できるのかな
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます