第4章 未来の僕 第2話 会いたい
未知留と和都は家に戻って来た。
子供部屋には家族の写真が溢れかえっていた。
未知留はいつも疑問に思う事があった。写真に見知らぬ女の子が全ての写真に写っているのである。父親である和都に聞いても教えて貰えず、写真を見るたびにもどかしい限りであった。
「パパ。チャイムの音がしたよ。ママかも!!」
そう未知留が言うので玄関を開けると、和都の仕事仲間の健だった。
「久しぶり、元気か?」
「ようやくアメリカから帰って来たな。これで仕事のコンビ再開だな。」
和都と健は仕事のパートナーでベンチャー企業を立ち上げていた。そして健はマーケティングの為、アメリカに2週間出張してたのである。
「未知留ちゃん。お兄ちゃんからのお土産だよー。」
健は小さな巾着袋を未知留に渡した。
「おいおい。お兄ちゃんじゃなくおじちゃんだろう。もういい歳なんだから。」
和都は健と未知留を微笑ましく笑いながら見ていた。
「ところで明日香ちゃんの3回忌は済ませたのか?」
健の言葉で和都は一気に気分が沈んだ。
「ああ。済ませたよ。生きていたら未知留のお姉ちゃんとして、今頃未知留をかわいがっていただろうに・・・」
「明日香ちゃん。未知留ちゃんが物心がつく前に亡くなったからな・・・よりによって小児がんとは。」
健は未知留を見つめながら声を詰まらせながら和都に呟いた。
未知留には3歳年上の姉がいたのだが、1年前に小児がんでなくなっていた。未知留よりも姉の明日香を溺愛していた母親である智恵は、明日香の死に絶えられなく、未知留をおいて、離婚届を和都に渡し、見知らぬ男と家を出ていってしまったのだ。
一方、未知留は興味深く健から貰った巾着袋の中を開けた。するとカプセルが何個かと1枚の紙にひらがなで、
『このくすりをのむとだいすきなひとにすきになってもらえます。』
と、書かれていた
未知留は考えた。母親である智恵が帰らないのは自分の事が嫌いだと・・・
(このお薬を飲めばママは帰ってくるのかな?)
幼い未知留の願いは巾着袋に入った媚薬で叶うのか・・・誰も知るよしもなかった。
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