第2章 カルマメイト 第2話 変わらない愛情

 そして数週間後、杉林の退職の日が来た。会社に出勤して身の回りの物を段ボールに入れながら同僚達に惜しみなく別れを告げていると、


 「杉林。ちょっといいか?」


 比留間部長が杉林に声をかけた。杉林が部長の席の前まで来ると、


 「本当に行ってしまうんだな。これからも頑張ってくれ。」 


 「それだけですか?私が何故起業するのかわかりますか?」


 杉林の手にはあの巾着袋を握りしめていた。


 「ホントは部長と仕事がしたかった。でも部長・・・貴方は私の気持ちなんて気づきもしない。」


 杉林は目を赤らめ訴えた。


 「貴方がずっと好きでした。今でも愛しています。」


 そう杉林が言った途端同僚達がどよめいた。しかし杉林は言葉を止めなかった。


 「だから貴方に私を愛して欲しかった・・・それが叶わないから私は此処を去るのです。」


 杉林のその言葉を待っていたかのように、


 「杉林。俺も同じ気持ちだ。冷たくあたったのは俺にとって大切な右腕だし、俺が栄転する時はお前を一緒に連れて行こうと考えていた。その時まで俺がお前に好意を抱いている事は伏せていようと思っていた。」


 その言葉を聞くと杉林の手から巾着袋が落ちた。


 「部長・・・」


 杉林の涙が嬉し涙に変わった。


 「お前の会社が軌道に乗ったら俺を引き抜いてくれ。まぁ〜出来たら俺を副社長にして欲しいがな。」


 杉林は初めて見る比留間部長の笑顔に喜びを感じた。


 会社の帰り道、杉林は後悔しそうなった事を思い出していた。


 (良かった。薬なんて飲まなくて。私の気持ちが比留間部長にちゃんと届いてたわ。それにしてもあの巾着袋、何処かに忘れちゃった。まっいいか!!)

 

 媚薬を使わなくても杉林と比留間部長は相思相愛・・・だからこそ犬と猿の間柄だったのだ。


 やがてふたりは新たな会社を経営して行った。 

 

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