第2章 カルマメイト 第1話 スレ違い

 「何だこれは!!」


 社内で短気で有名な部長の声が今日もいつも通り、部屋中響き渡っていた。


 「比留間部長。私は私のやり方でやります。私のやり方で必ず結果を出しますから!!」


 一方部長の短気に対抗するかのように自分のやり方をけして曲げない部下がいた。


 「杉林。お前はどうして俺の指示を聞かない。お前のやり方はでは組織の中ではやっていけないぞ!!」


 このふたり。まわりからは犬と猿の間柄で、ふたりの論争は今に始まったわけでは無い。

 そのふたりの論争も今年度いっぱいで終わりを迎えようとしていた。


 仕事が終わり、杉林は自宅のパソコンでブログを書いていた。


 (どうして私は比留間部長と衝突してしまうんだろう?!どうして自分の気持ち素直に・・・)


 今夜も杉林の1日の後悔が始まる。

 杉林は29歳の独身女性で密かに比留間部長に好意を寄せていた。しかし杉林は我が強く比留間部長と対立ばかりして素直に告白出来ないでいた。

 ちなみに比留間部長は35歳のやり手の上司でエリートである。


 (比留間部長の元で働けるのもあと1か月弱・・・このままじゃ告白するどころか笑って別れを告げる事さえ出来ない。)


 杉林は今の会社を辞めベンチャー企業を立ち上げる予定だ。


 (よし!明日のお昼休み比留間部長に掛け合おう!!)


 そう決意を固めると玄関のドアの方から何か音が聞こえた。玄関まで行くと小さな巾着袋が落ちていた。


 (何かしら?)

 

 杉林は巾着袋を開けると説明書らしい紙とカプセルらしきモノがいくつか入っていた。


 『この薬は愛されたいと思った時に飲むと願い通り愛する人に愛される薬です。』


 説明書にはそう書かれていた。


 「私は私のやり方でやる。こんなモノに頼るか?!」


 杉林はゴミ箱に巾着袋をを投げた。


 翌日のお昼休み、杉林は比留間部長とお昼を共にした。比留間部長は嫌そうで一応部下だから仕方なくお昼を一緒にしたと言わんばかりだ。


 「比留間部長。何故貴方は私のやり方を認めない。私は貴方の仕事ぶりを評価している。最後くらいわかり合いたい。そして・・・」


 杉林はそのあとの言葉を言おうとすると、


 「そういう君の上から目線が俺は気に入らないのだ。君が会社を立ち上げようが知ったこっちゃない。俺の部下でいるのが嫌ならさっさと辞めていけばいい。あ〜飯が不味くなる。もう向こうへ行ってくれ。」


 比留間部長の一方的ないい方に杉林は、


 「貴方のそういうワンマンなやり方が嫌だから起業したんです。私は貴方のようにはけしてなるつもりはありません。貴方を追い越してみせますから!今日はこれで退社します。」


 杉林の目尻は赤かった。


 自宅の玄関のドアの中へ入るやいなや杉林はメガネを外しハンカチで目を覆った。


 (どうしてわかってくれないの?・・・愛しているのに・・・)


 そんな時、ふとゴミ箱が目に留まり、巾着袋を手にした。杉林と比留間部長の新たな関係を手にした巾着袋は予告しているように思えた。


 

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