第1章 媚薬の少女 第3話 異変の終わり

 優子が麻美に成り代って1週間が経った。

 始めは面白半分だったが、しばらくするとある異変に気づき始めた。

 

 (最近、見たこと聞いたこともない場所を鮮明に思い出す。それに今まで使った事なんて一回もない言葉遣いを平気でしている。一体これは何かしら?)


 今日は雅之と学校が終わった後、ドライブに出掛ける予定だ。


 (ちょっと雅之さんにそれとなく聞いてみよう。私が優子だと、どうせ気がつくはずないし。)


 高校の授業の終わりのチャイムと共に雅之の占いの館へ急いだ。


 占いの館に着くと雅之が既に車を停めて待っていた。


 「麻美。待ってたぞ。」


 「うん。ごめんね。雅之。」


 (えっ!!今、私。雅之さんじゃなくて『雅之』って呼び捨てにした。私はいつも『雅之さん』って呼ぶのに・・・やっぱり何かがおかしい。)


 ふたりは横浜のみなとみらいに向かい走り始めた。


 優子にとって雅之とのドライブは、実は初めの事であった。何時もは身体ばかり求められる関係で・・・言うなればセフレと言ってもおかしくなかった。


 (雅之さん。・・・ホントはこんなに紳士的な人だったんだ。私には一度も見せてくれなかった仕草や態度・・・麻美って人には見せるのね。)


 隣で運転する雅之の立ち振舞を見て、優子は自分との交際は遊びだったと思い知り、かなりのダメージを受けた。その途端、


 「えっ!」


 優子は思わず声をあげた。自分の記憶がものすごい勢いで書き換えられているのである。


 (何が起きてるの?知らない記憶が次々と増えていく。・・・アレ?私の記憶が・・・私は誰?・・・私は・・・)


 優子は優子自身の記憶が消され麻美の記憶に置き換えられたのである。

 

 そうこの薬を飲むと自分の愛する者の最愛のひとに身も心も変化してしまう媚薬であった。


 その雅之と優子・・・いや麻美は願いが叶い雅之を愛され続けるのであった。優子ではなく麻美として・・・


 そして優子の持っていた媚薬は次に誰の手にするのか?今、何処にあるのかは知る由もなかった。



 

 

 

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