第4話



 「タカ君」



 彼と再会したのは、一年前。


 ちょうど、——今日、7月7日のこの日だ。


 彼は驚いていた。


 再会した私の顔を見て、「誰?」って、聞いてきたっけ?


 無理もなかった。


 声をかけようか迷ったんだ。


 バス停のベンチに座り、駅のホームから彼が歩いてくるのを待っていた。


 本当に来るかどうかはわからなかった。


 彼の通っていた学校の友達から「校門前で待ったらいい」と言われたけど、勇気が出なくてさ。


 会えればいいと思ってた。


 会えなければ会えないで、それが運命なんだろうって思うようにしてた。


 そしたら——



 「…ちゃんと起きるから」


 「ほんと?」


 「あと5分」


 「…はいはい」



 ヨネックスのテニスラケットと、ダボダボのジャージ。


 履き潰したスニーカーに、耳からぶら下がったイヤホン。



 一目で彼とわかった。


 髪型も、背の高さも、ポケットに手を入れる仕草一つも。


 何もかもが、子供の頃と違っていた。


 子供の頃からは想像もできないほど大人びていた。


 嘘みたいだなって、思った。


 それはほんとなんだ。


 きっと、彼がバス停に来ると知らなければ、彼だと気づくことはなかったかもしれない。


 “赤の他人だ”って、思ってたかもしれない。


 だけど、分かったんだ。


 ベンチの前に立つ彼の後ろ姿を見て、何気なく後ろ髪を掻くその姿が、いつの日かの「彼」に、ダブって見えて。

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