第3話


 アラームが鳴っている。


 オレンジスターのシュガー。


 つい最近までは違う曲だった。


 曲っていうか、スマホに元々付いてたやつ?


 全然起きる気配がないから変えてみたんだ。


 どうせなら、ハイテンションの音楽がいいなって思って。



 本当は、もう少し昔の曲にしたかったんだよね。


 彼は覚えていないだろうけど、昔、彼の家に遊びに行った時、机の引き出しにあるCDをよく漁ってた。


 ボロボロのCDプレーヤーのスイッチを入れて、時刻はAM10時。


 カーテンを引っ張り、網戸で窓を全開にしたまま、宇宙兄弟の漫画を読み漁ってた。


 漫画になんて興味はなかったのに、すっかりハマっちゃってさ?



 あの当時、私たちはまだ子供だった。


 夏休みの蝉時雨に、河川敷の川のせせらぎ。


 幼稚園の頃から一緒だった彼とは、毎日のように過ごしてた。


 まるで兄弟みたいだった。


 家も近いし、住んでる町は田舎だったし。



 時々思うんだ。


 もしもお互い生まれる場所が違ったら、今頃どうしているだろう?って。


 ただ違う時間を過ごして、お互い違う学校に通って。


 そんな当たり前のことを考えるたび、なぜか、胸が締め付けられる自分がいる。


 昔はそんなことなかったのにね?


 彼のことに興味はなかったし、名前だって、ずっと呼び捨てだった。

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