第2話


 「起ーきーろー」



 ガラ空きの脇腹を掴み、白いシャツの上から指を動かす。


 彼の温もりが残るシーツの下に手を伸ばすと、ゴツゴツした肌触りが指先に触れた。


 すべすべの肌と、捲れ上がったシャツ。


 起きないんなら無理やり起こしてあげる。


 私もそろそろ起きなくちゃいけないけど、まだ少しだけ余裕があった。


 彼にはそんな余裕はない。


 早朝のバイトの兼ね合いで、今すぐにでも支度をしなきゃいけないからだ。



 「やめぇ」



 夢半ばなのか、ゴニョゴニョと何か言っている。


 ごめんだけど、聞こえない。


 刺激が足りないってことでいいのかな?


 だったら、もう少しだけ力を入れてあげるけど。



 バサッ



 捲れたシャツの下に指を入れると、彼は私の腕を押さえて覆い被さってきた。


 癖っ毛の強い彼の前髪が、頬に触れる。


 腫れぼったい瞼と、薄い唇。


 起こしてごめん、なんて、言うつもりはなかった。


 むしろ、感謝してほしいくらいだったから。



 「やめぇって言うとるやろ」


 「なんで?」


 「あと少しだけ」


 「少しって、もう6時だけど?」


 「あと5分………………zzz」



 力尽きたのか、そのままのしかかるように乗っかってきた。


 重くて身動きが取れない。


 くすぐってあげようにも、腕はロックされたまま。



 …はあ。


 だから清掃スタッフなんてやめときなよって言ったのに。


 朝が弱いんだから夕方のバイトを探せば?って言ったけど、知り合いがいる場所で働きたいからって。


 知り合いって言ったってサークルの先輩でしょ?


 シフトが被るわけでもないし、大して絡みがあるわけでもないのに。

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