第3話

イベントが終了し、フィレンツェの夜が深まる中、香織と涼介はレストランに残り、初動調査を開始した。店内にはまだ客の笑い声が響いていたが、二人の探偵の心はすでに次のステージに進んでいた。


「まずはスタッフに話を聞いてみましょう。」香織は涼介に提案した。


「そうだな。エレナが何か隠しているように感じたけど、他のスタッフも重要な情報を持っているかもしれない。」涼介も同意した。


最初に話を聞いたのは、ルカの長年の友人であり、レストランのソムリエであるパオロだった。パオロはフレンドリーで、気さくな人物だった。


「こんばんは、パオロさん。今夜のイベントは素晴らしかったですね。」香織が話を切り出した。


「ありがとうございます。でも、何かお困りのことでも?」パオロは不思議そうに尋ねた。


「実は少し気になることがありまして……エレナさんの様子が少し変だったように感じたんです。何か心当たりはありませんか?」涼介が尋ねた。


パオロはしばらく考えた後、答えた。「エレナは最近、確かに少し神経質になっていました。特にダ・ヴィンチの絵画がレストランに運ばれてきた後からです。」


「その絵画には何か特別な秘密が隠されていると聞きましたが、何かご存知ですか?」香織がさらに尋ねた。


パオロは首を振った。「詳細は知りませんが、ルカはその絵画に非常に興味を持っていて、何かを探しているようでした。」


次に、香織と涼介はエレナに話を聞くため、彼女を探した。エレナは厨房で片付けをしていたが、二人の姿を見て少し緊張した表情を見せた。


「エレナさん、少しお時間をいただけますか?」香織が優しく声をかけた。


エレナは微笑んで答えた。「もちろんです。何かご質問ですか?」


「今日のイベント中、あなたが少し神経質になっているように見えたんです。何か心配事があるのではないかと感じました。」涼介が直球で尋ねた。


エレナは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに平静を取り戻した。「実は、ルカさんがダ・ヴィンチの絵画に非常に興味を持っていることが私にとっても気がかりだったんです。その絵画には暗号やメッセージが隠されていると噂されています。」


「具体的にどんな暗号やメッセージが隠されていると考えられているのですか?」香織がさらに突っ込んだ。


エレナは少しためらいながらも答えた。「絵画の中には、特定の星座やシンボルが描かれており、それがトスカーナ地方の特定の場所やレシピに関連していると言われています。」


次に、香織と涼介は、ルカのライバルシェフであるヴィットリオ・ベルティーニに話を聞くことにした。ヴィットリオはレストランの外で一服しているところだった。


「こんばんは、ヴィットリオさん。少しお話を伺ってもよろしいですか?」涼介が声をかけた。


ヴィットリオは煙草を消しながら、軽く頷いた。「何の用ですか?」


「実は、ルカさんのダ・ヴィンチの絵画に関して少し気になることがありまして……」香織が切り出した。


ヴィットリオは鋭い目で二人を見つめた。「あの絵画ですか?確かに、あれには何か秘密があるようですね。でも、私はそれに興味はありません。」


「本当に?それにしては、あなたがルカさんと頻繁にその絵画について話しているのを見かけたという証言があります。」涼介が追及した。


ヴィットリオは少し黙り込んだ後、答えた。「確かに、絵画には興味がありました。でも、それは純粋に芸術としての興味です。それ以上のことは何も知らない。」


香織と涼介は、これまでの情報を整理しながら、ダ・ヴィンチの絵画に隠された暗号やメッセージについて考えた。


「エレナが言っていた星座やシンボルが鍵になるのかもしれないわね。」香織は考え込んで言った。


「その通りだ。星座やシンボルがトスカーナ地方の特定の場所やレシピに関連している可能性が高い。」涼介も同意した。


二人はウフィツィ美術館に戻り、学芸員のアレッサンドロに会い、絵画に隠された暗号についてさらに詳しく聞くことにした。


「アレッサンドロさん、この絵画に隠された暗号について何かご存知ですか?」香織が尋ねた。


アレッサンドロは頷きながら答えた。「はい、この絵画には特定の星座やシンボルが描かれており、それがトスカーナ地方の特定の場所やレシピに関連していると言われています。例えば、星空の夜に隠された秘密があるとも言われています。」


「星空の夜……それが重要な手掛かりになるのですね。」涼介はメモを取りながら言った。


「そうです。特にフィレンツェの特定の歴史的建築物のステンドグラスに映し出される星座が関連していると言われています。」アレッサンドロが説明を続けた。


香織と涼介は、フィレンツェの夜景と星座が示す場所を調査する決意を固めた。絵画に隠された暗号とメッセージを解読し、事件の真相に迫るために。


「さあ、次はその建築物を探しに行きましょう。」香織は決意を新たにし、涼介と共にフィレンツェの街へと向かった。


夜空の星々がフィレンツェの美しい街並みを照らし出す中、香織と涼介は新たな手掛かりを追い求めて歩き出した。事件の真相が徐々に明らかになっていくのを感じながら、二人は次なる一手を考え始めていた。

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