218.商家の護衛(11)

 Bランクの魔法使いが野盗集団の味方をしているみたいだ。その事実に私たちは戸惑った。


「どうする、Bランクの魔法使いなんて俺たちが敵うのか?」

「おい、アルマはどう思う?」

「私はCランクの魔法使いよ、敵う訳ないじゃない」


 アルマさんが戸惑ったようにそう答えた。一ランク違うだけでも、かなりの実力差があるみたいだ。これはいけない、こっちが劣勢になってしまった。


「ほらほら、どうした! さっきの威勢はどこに言ったんだよ!」

「先生、こいつらのことは懲らしめてやってください」

「分かった。お前たち、俺の魔法の餌食になるがいい」


 Bランクの魔法使いが前に出てくると、杖を掲げて魔法の発動をし始めた。


「私じゃ無理なんだからね!」


 堪らずにアルマさんが前に出て、同じように杖を掲げて魔法の発動を始める。二人の魔力が高まると、同時に魔法を放出した。すると、大きな爆発が起こる。


 その爆発は明らかにアルマさんの近くで起こった。魔法の威力が向こうの方が高かったからだ。


「くっ……強い」


 爆風で飛ばされたアルマさんが弱弱しく起き上がる。


「ほら、どうした。早く次の魔法の準備をしないと負けるぞ」


 Bランクの魔法使いは次の魔法の発動の準備を始めた。アルマさんは痛む体を我慢して起き上がり、杖を掲げる。


「私の全力、行くわよ!」

「たかがCランクの魔法使いが、Bランクの俺に敵うと思うなよ!」


 二人は魔力を高め、再び魔法をぶつけあった。大きな爆発がアルマさんの近くで起こり、再びアルマさんが吹き飛ばされる。


「アルマ!」

「大丈夫か!」


 ニックさんとルイードさんがアルマさんに駆け寄った。アルマさんはなんとか意識を保っているみたいだが、とても辛そうだ。


「はっはっはっ! どうだ、俺の魔法は強いだろう! 観念して全ての荷物を明け渡すんだな!」

「流石先生!」

「先生、頼りになります!」


 Bランクの魔法使いが敵にいるだけで、状況は悪い。しかも、アルマさんは次の魔法を放てるかどうかも危うい状況だ。このままではダメだ、ここは私が前に出よう。


 みんなの前に私が出ていく。


「私が相手です」

「リル!」

「危ないわよ!」


 ウルマさんとロザリーさんが心配して声を上げてくれる。だけど、魔法が使えない二人にこの場は任せられない。だから、ここは魔法が使える自分が出ていったほうがいい。


「何、子供が俺の相手だと? 俺の舐められたものだな!」

「あいつ、生意気なガキです! どうか、懲らしめてやって下さい!」

「ふん、力の差というものを思い知らせてくれる!」


 Bランクの魔法使いが杖を構えて、魔力を高める。そして、すぐに魔法を発動させた。鋭い風の刃が無数に飛んでくる。


「こんなもの!」


 私はすぐに魔法の壁を展開させて、風の刃を受けた。風の刃は魔法の壁にぶつかると、雲散する。


「何……俺の風魔法を魔法の壁で受け止めた、だと」


 Bランクの魔法使いは自分の魔法が受け止められた事に驚いている様子だった。私もBランクの魔法使いの魔法が受け止められて、ビックリしている。魔法の壁が壊れるかと思ったんだけど、壊れなかったらしい。


「ふん、少しは力があるということか。でも、一度俺の魔法を受けただけでいい気になるのは止めた方がいい。俺はまだ実力の半分も出していない」

「そんな……実力の半分も出していないだなんて」

「ふっふっふっ、次の魔法は受け止められるかな? 行くぞ!」


 Bランクの魔法使いが杖を構えて、魔力を高めていく。先ほどよりもずっと多い魔力の気配を感じる。私は魔法の壁の強度をあげて、その魔法を待った。


「食らえ!」


 Bランクの魔法使いが魔法を放った。先ほどと同じ風の刃が襲い掛かってくる。だけど、量と威力が上がった風の刃だ、雪崩のようにこちらに向かってきた。


 それを魔法の壁が受け止める。どうか魔法の壁が壊れませんように、魔力を魔法の壁に注入して強化を図った。すると、風の刃は魔法の壁に当たるとどんどん雲散していく。


 しばらく風の刃を受け止めたが、風の刃が魔法の壁を壊すことはなかった。


「何……俺のこの魔法を受け止め切った、だと」


 Bランクの魔法使いは驚いた顔をしてこちらを見てくる。見ている今がチャンスだ。私は魔法の壁を消すと、すぐに魔力を高めて火魔法の発動の準備をする。


「ふん、今度はそっちか! 俺の魔法の壁が打ち壊せるかな?」


 すると、Bランクの魔法使いが魔法の壁を作った。これでこの魔法の壁を打ち壊さないと、Bランクの魔法使いを倒せなくなった。私は、魔力を高めた大きな火球を放つ。


 火球は真っすぐに魔法の壁に向かった。それにぶつかった火球は雲散して、魔法の壁だけが残る。


「ふはは! お前の魔法はその程度か!」

「まだまだ、です!」


 手を構えると、大きな火球を作りだし放つ。またすぐに新たな火球を作り出して放った。そして、火球を連射していった。


 どんどん魔法の壁に着弾する火球たち。その度に雲散していく……まだ力が足りないのかな? 休まずに火球をぶつけていった。


「くっ、このっ、いつまで、魔法を、放つ、気だっ」


 私は苦しくないのに、Bランクの魔法使いは苦しそうに声を出していた。もしかして、押せるかも。私は大きな火球を連射していった。


「くそっ!」


 耐えかねたかのようにBランクの魔法使いは、その場から退いた。すると、魔法の壁が壊れて火球は地面へと着弾し、大きな火柱となる。


「くらえ!」


 すぐにBランクの魔法使いが風の刃を放ってきた。私も負けじと風の刃を放つ。風の刃が重なると、その場で雲散した。


「まだまだー!」


 風の刃を次々に繰り出してきたので、私も同じく風の刃を繰り出していく。風の刃はどちらともなく重なると雲散していき、風の刃がどちらかを傷つけることはない。


「なん、だとっ……俺の風の刃が互角、だと!?」

「こちらはまだまだです!」


 私はまだ力が出せる。風の刃を出す速度を上げると、今まで中間地点で雲散していた風の刃の位置がBランクの魔法使いよりになっていった。


「何っ!? 俺の魔法が押されている、だと!? くそー!!」

「負けません!」


 お互いに力を出す。私も魔法が押されるかと思ったけど、その逆にさらに私の魔法が押し返していた。このまま力押しすれば勝てる、そう思った時だ。突如、爆発が起きた。どうやらBランクの魔法使いが違う魔法を使ったみたい。


「俺を舐めやがって! 最大級の爆裂魔法をお見舞いしてやる!」


 杖を高く掲げで、魔力を高めていく。やばい、とても強そうな魔法がきそうだ。私も自分の魔力を高める。


 相手は爆裂魔法って言っていた、ならこっちは爆発魔法にしよう。それに雷魔法も付与して、爆発と同時に雷が飛び出すように細工をする。


 魔力を目一杯高めた。そして、タイミングを合わせて魔法を発動させる。


「くらえ!」

「いっけぇっ!」


 同時に魔法を放つ。


 ドーンッ!!


 大きな爆発が二人の間に起こった。そして、私の魔法は爆発すると同時に雷を放出した。


「あばばばばばばっ!!」


 その雷はBランクの魔法使いに当たり、悲鳴が木霊した。爆煙が消え去った後、向こう側をよく見てみると、地面にBランクの魔法使いが倒れている。


 私の魔法が勝ったんだ!

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