99.丁度いい数は?
昼食を取り、昼休憩が終わった。怪我をしたところ以外は万全だ。早速、エイプを探しにいく。
聴力強化をして周囲の音を探る。声が聞こえるのは、あっちかな。よし、あっちに行ってみよう。
方角を決めて歩き出す。聴力強化で索敵の漏れがあるかもしれないので、周囲を警戒しながら進んでいった。
途中で出会う魔物はおらず、エイプの声が聞こえるところまで近づけた。すぐに木の裏に身を隠しながら、注意しながら進んでいく。
木の裏に隠れて見渡してから、次の木の裏に急いで移動して身を隠す。その繰り返しをして、どんどんエイプに近づいていった。
木の裏から覗き見ると、エイプの姿を見ることができる。えーっと、枝に2体と地面に1体。今いる場所からはそれしか見えない。
見えない所にもいる可能性があるので、また木の裏を移動しながら視点を変えていく。木を4本移動した後にもう一度覗き見る。
すると、今まで見えなかった場所にいたエイプが見えた。追加で枝に2体と地面に1体、合計で6体だ。
うーん、この数を相手にするのは無理かもしれない。やればできそうだけど、怪我は絶対にしそうだ。
まず、1体目を火魔法で撃ち落として、混乱したところに身体強化で加速して距離を詰める。それで地面にいるエイプを1体仕留める。
すると4体を相手にしないといけないから、どうやって戦えばいいんだろう。いきなり4体と乱戦になるのは避けたいな。
まだ今日はエイプ戦の初戦だし、無茶は良くないよね。今日は4体までのエイプを相手にすることにしよう。午前中に戦ったやり方をもう一度試してみたいしね。
ここは音を立てないように離れよう。木の裏から確認しつつ、小走りで離れていく。姿を隠して、エイプの様子を確認して、それから離れる。
エイプの姿が見えなくなるまで、そのやり方でどんどん離れていった。そして、完全に見えなくなると、走ってもっと離れていく。
しばらく走って距離を取ると、足を止めて聴力強化をする。周りの音を拾うと、声が聞こえてきた。よくよく聞いてみると、先ほどよりも数が少ないように思える。
実際見てみないと分からないが、期待は持てる。聴力強化を切り、その場所へと小走りで向かってみる。
しばらく走っていると、エイプの声が微かに聞こえてきた。ここで走るのを止めて、周囲を警戒しながらゆっくりと進んでいく。
だんだんエイプの声が大きく聞こえてくると、今度は木の裏に隠れながら進んでいった。周囲の警戒も怠らずに、真っすぐと近づいていく。
エイプの姿が見えた、まずは地面に1体目。今度は視点を変えて見てみると、枝に2体のエイプを発見した。合計3体だ。
始めの時よりも少ないが、これだったら相手にすることができる。木の裏に身を隠し、魔力を高めて手に集中させた。
手の前で火球が作られていき、火をもっと込めていく。もっと早く作ることができれば、戦闘中でも活躍してくれるんだけどな。
今は少しずつ経験を積んでいって、いずれ戦闘中でもすぐに作れるようになれたらいいな。よし、完成した。
木の裏から覗き見て、エイプのいる場所を確認する。うん、まだ後ろを向いている、これならいけるね。
もう一度木の裏に戻り、深呼吸をする。心の準備をすると、勢い良く木の裏から飛び出す。そして、エイプに手を向けて発射角度を調節すると、力一杯に火球を放つ。
ドンッと飛んで行った火球はずれることなく真っすぐにエイプに向かっていった。後ろ向きのエイプはこちらに気づくことなく、背中から火球を受ける。
「ギギィィッ」
突然全身が火に包まれたエイプは枝の上で暴れて、地面に落ちた。それを確認すると剣を抜いて身体強化をして、地面に座っているエイプに向かって駆け出す。
残りのエイプが燃えているエイプに釘付けになっている間に距離を詰める。地面に降りているエイプは燃えている仲間を見て騒いでいる。
肝心のエイプは背中を向けていて、まだこちらに気づいていない、チャンスだ。気づいていない隙に距離を詰めて、間合いに入った。この時、エイプはこちらの存在に気づくがもう遅い。
振り上げていた剣を力の限り振り下ろす。
「ギャアッ」
背中を深く切りつけられたエイプは地面に倒れた。まだ死んでいないかもしれない、トドメに体を突き刺しておく。
すると、ビクンと体が震えた後にエイプの体から力が抜けた。これでトドメを刺せたらしい。
「ギィギィッ」
枝にいたエイプが騒ぎたてる。まだ仲間を呼んでいないので、倒すなら早いほうがいい。
エイプに向かって手をかざし、魔力を高める。手の前で風弾を作っていき、完成させた。枝で騒いでいるエイプに照準を定めて、放つ!
透明な風弾はエイプに察知されることなく飛んでいき、無防備なエイプに着弾した。途端に枝から落とされるエイプ、すぐに駆け寄って行く。
ちょっと距離があって間に合わないかもしれない。このままいくと、エイプが地面に着地する前後に間合いに入る。
一撃でもいいから与えたい、懸命に足を動かして間に合わせようとする。あともうちょっと、ダメだ間に合わない。
剣を構えて一振りする準備をする。落ちてくるエイプに向けて剣を振るった、ダメだ早かった。剣先を掠るくらいしか攻撃を与えられない。
着地したエイプはすぐにその場を飛んで距離を取っていく。剣先で掠ったぐらいじゃ、エイプの動きは制限されないらしい。
「ギギィィッ」
距離を取ったエイプがこちらを威嚇をしてくる。仲間を呼ぶ様子はなく、1対1で戦うことになりそうだ。
だったら訓練になりそうだ、身体強化の魔法を切ってみる。これでどれくらい戦えるか確認していこう。
剣を構えて対峙する。お互いに警戒し合っていて、中々動かない。なら、今度はこっちから動こう。
ダッと駆け出していき、剣の間合いにエイプを入れる。それから剣を縦に振ると、エイプは後ろに飛んで避ける。
それからまた距離を取るように背中を向けて走り出す。また最初の距離に戻ってしまった。きっとこれがロイの言っていた追いかければ逃げる、ということなのだろう。
一々距離を取られるのは面倒だ。今は1対1だからいいが、これが複数ならば相当やりにくい魔物だろう。
もう一度攻撃しても同じように距離を取られるだけだ、なにか妙案はないだろうか? 何かエイプが嫌がることをできればいいんだけど。
そうだなぁ、うーん……あ! 風弾で遠くから攻撃していたら、エイプは嫌がるんじゃないんだろうか。
風弾には魔物を倒す力はないけど、殴られるような衝撃を与えられる。目に見えない強打をエイプに与え続けたら、距離を取ることもなくなるんじゃないかな。
そうと決まればやってみよう。エイプに手をかざして風弾を作っていく。目の前で風が集まっていくのが感覚で分かる。
だけど、これはエイプには見えない。エイプは変わらずに威嚇をするだけで、何をしているのか分かっていない様子だ。
風弾ができあがった。照準をエイプに合わせて、風弾を放つ! ドンッと風弾が放たれると、それはエイプに直撃した。
「ギッ」
風弾の衝撃を無防備で受けたエイプは後ろに倒れた。だが、すぐに体を起こして何が起きたのか確認していた。
でも、分かっていないようで怪訝に顔をしかめている。これを繰り返して、エイプの行動が変わるのを待ってみよう。
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