96.エイプ戦(2)
「ギャアッギャアッギャアッ!」
エイプが枝の上で大声を上げながら騒いでいる。このまま放置をすると、沢山の魔物が寄ってきて危なくなる。
エイプに手を向けて魔力を高めていく。手の前で魔力を風魔法に変換して風弾を作っていった。攻撃がバレずにあの場所から落とすには風弾が適している。
集中して風弾を作り上げると、騒いでいるエイプに向かって放った。真っすぐ飛んで行った風弾は気づかれることなくエイプに着弾した。
「ギャアッ!?」
目に見えない衝撃にエイプは驚き、枝から落ちていった。落ちる場所を予測して駆け出す、着地をする前に仕留める。
無防備で落ちてくる今がチャンスだ、エイプが落ちてくる下で待機してタイミングを計った。目の前に来た瞬間に横一閃に剣を振るう。
剣先が捉えたのはエイプの背中だった、これではダメだ。すぐに次の攻撃を仕掛けようとしたが、着地したエイプの行動が速かった。
地面に手と足を付き、すぐにその場を離れるために飛び上がった。だけど、思ったより動きが鈍い。追撃のためにエイプが逃げた先を追う。
まだ私の間合いに入っている、ここは攻撃の一手しかない!
「やぁっ!」
剣を振り下ろし、また横一閃に振り切る。深い一撃ではないが、剣先は確実にエイプに届いている。剣を振るたびにエイプの体の傷が多くなっていく。
「ギィッ!」
地面から飛び跳ねて逃げるエイプ、だけど背中の一撃が効いたのか動きは鈍っている。この追撃を止めないで追い詰めていこう。
体をフラつかせながら逃げるエイプを追う。早く仕留めるために魔力を高めて身体強化の魔法を使う。一気に速度が増した。
ジグザクに逃げはじめたエイプの先を読み、タイミングを合わせて一気に加速する。間合いを詰めた瞬間、剣を振り下ろす。
「ギャアッ!」
深い一撃が入り、エイプは地面の上に転がった。そこへトドメの一撃だ、剣先をエイプに向けて体の中心を突き刺す。
もう逃げられなかったエイプは胸を突かれ、体を震わせた後に力なく地面に横たわった。これで4体のエイプを仕留めることができた。
すぐに周囲の様子を知るため、聴力強化をする。耳をすませば辺りからエイプの声が聞こえてきた。それはだんだんこちらに近づいている。
このまま待つのもいいだろうが、少しでも優位に立っておきたい。声が聞こえなかった方向の木の裏に隠れて、エイプが集まるのを待つ。
息を潜めて待っていると、聴力強化なしの耳でもエイプの声が聞こえてきた。どうやら複数いるようだ。
念のため自分の身を隠せてない方向を確認するが、こちらからはエイプは来ていないようだ。このまま身を隠してエイプが集まるのを待つ。
しばらく待っていると、木々の隙間から動く影を見つけた。木の裏からこっそりと覗くとそれはエイプだった。
次々と来るエイプを数えてみると、合計で4体。先ほどと同じ数になった。今度は警戒している中での不意打ちだが、どうやって仕留めていこうか。
そわそわと辺りを見渡すエイプ、目的の敵が見つからなくて落ち着かないみたいだ。地面を叩いたり、踏んだりして苛立ちを隠せないでいる。
隙を見つけて先制攻撃を成功させたい。ウロウロと歩き回るエイプが少しでも立ち止まってくれたりしたらいいのに。
黙って見ていると、エイプの動きが次第に静かになってきた。落ち着いてくると地面に座ったり、木に登って枝に移動したりする。
まだ警戒はしているようで、周囲を見渡すくらいはしている。こちらの姿を見られないように、木の裏で魔力を高めていく。
先制攻撃は先ほどと同じ火の魔法、一撃で仕留められるように沢山の火を込める。限界まで火球に火を込め終わると、木の裏から覗いてみる。
警戒しながらだが、枝に腰を下ろしている。よし、あのエイプを仕留めよう。
一度木の裏まで戻り、深呼吸をする。力は溜め込んだ、いける。
バッと木の裏から飛び出して、手をエイプに向けてかざす。狙いを定めて、放つ!
ドンッと放たれた火球は真っすぐエイプに向かっていき、後ろ向きのまま火球を体に受けた。
「ギィィィッ!?」
一瞬で全身を炎に包まれたエイプは枝の上で暴れた後に地面に落ちていった。
「ギギギィッ」
「ギィィ」
「ギャアッ」
周りにいたエイプたちが驚いて騒ぎ出した。全員が燃えているエイプに注目している今がチャンスだ。
剣を抜いて駆け出した。狙うのは地面に降りているエイプだ。こちらに気づく前に一撃を与えたい、身体強化をして一気に距離を詰める。
あともう少しというところで、そのエイプはこちらに気づいてしまった。驚いたような顔をして腰を浮かせる。このまま押し切る!
「はぁっ!」
「ギギッ」
強引に近づくと剣を振るった。その瞬間横に飛び避けたエイプ、剣先は腕を切りつけるだけで終わる。
だが、このままでは終われない。飛び避けたエイプを追いかけるように足を前に出す。剣を構えて、もう一度チャンスを狙う。
逃げるエイプを追いかける、身体強化中だから距離は詰められる。あとは剣を振るうタイミングだけだ。
片腕を使えないエイプの動きがどんどん鈍ってくる、ここだ!
「やぁっ!」
逃げる背中を切りつける、深い一撃だ。エイプは姿勢を保てず地面に転がった。そこを追って行く、トドメを刺すまで諦めない。
転がるエイプの体がうつ伏せになって止まると、すかさず頭に剣を刺す。
「ギッギッ」
ビクンと震えるエイプから力がなくなり、ぐったりとして動かなくなった。これで2体目。
「ギィギィッ!」
「ギャアッ!」
残り2体のエイプが騒ぎ出す。突然現れた敵を見て威嚇をしているみたいだ。枝の上で飛び跳ねたり、枝を叩いたりして感情を爆発させている。
2体なら真向から戦えるかもしれない、あとはあそこからどうやって降りてきてもらうかだ。身体強化を切り、思案する。
多分警戒しているから、枝から降りてこないんだと思う。警戒を解くにはどんな行動をすればいいだろう。思わず追いかけてきそうになることは……あ!
そうだ、逃げているようにみせかければいいんじゃないかな。そうすれば、追いかけてくるんだと思う。
この場所には後で戻ってくるとして、今はあのエイプたちが枝から降りてきてもらうのを一番に考えよう。
エイプたちを見てから、背中を向けて駆け足で離れていく。
「ギギギッ」
「ギィィィッ」
エイプから聞こえる声が明らかに変わった。違う意味で興味を持ってくれたみたいだ。そのまま、早くもなく遅くもない速度でエイプたちから離れていく。
「ギィギィッ!」
「ギャアッ!」
声が大きくなったので振り返ってみてみると、枝からエイプたちが降りてきてこちらに向かってきている。作戦は成功だ。
追い付いてこられるように速度を落とすと、エイプたちとの距離が縮んでくる。そして、エイプが先回りをして前に立ち塞がった。
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