85.討伐の準備

 Dランクになって3カ月が過ぎた。ほとんどを町の中で過ごしていたせいで、体がなまってきたように感じる。


 一応体を使う仕事もしていたんだけど、毎日戦闘をしていた時に比べれば運動量は減っている。護衛の仕事なんかもしているけど、やっぱり討伐だけに専念していた時に比べると体がなまってしまう。


 というわけで、そろそろDランクの魔物を倒しに行こうと思う。と、その前にこの三か月間の決算をしよう。町の中と外ではどれくらい差が出るのか知っておきたいしね。


 この三か月、色んな仕事をしてきた。一回きりだったり、その後も何度も仕事をしたり、時には指名で呼ばれることもあった。ありがたかったなー。


 一日あたり1万ルタから1万5000ルタくらい貰えている。この金額を見ると、前にやった討伐の金額は破格だったんだなって思った。


 この三か月で稼いだお金は75万ルタだ、あの特別報酬も入れて。うーん、やっぱり討伐と比べると見劣りしているような……これが普通だよね。


 そして、今の私の所持金の合計金額は285万になりました。うん、すごい稼いだと思う。だけど、町の中に住むにはまだまだ稼がないとね。必要なものも買わないといけないだろうし。


 一方、討伐の頃に比べて支出が増えたような気がする。討伐の時はホーンラビットを狩って、それを食事にしていた。けど、町の中で働くと必然と町の中で食事をすることが多くなってしまった。


 これは仕方のないことだとは思うんだけど、食費の支出は痛いよね。だからといって、ホーンラビットだけを狩りに行くのは時間の無駄だし。この辺りは仕方のないことかなって思っている。


 うーん、町に住むことって難しい。家に必要なものを買い、毎日の食費も出して。他にも色々な支出はあるし、病気や怪我で働けなくなることもあるからそれなりに蓄えも必要だ。


 もしかして、私ってとっても難しいことに挑戦しているんじゃないかって思っちゃう。一人で町に住むってどれだけ大変なことなのか、良く分かっていなかったような気がする。


 はぁ、どれくらいお金を貯めればいいんだろう。どれくらいお金がかかるものなんだろう。うぅ、考えてたら頭が痛くなっちゃった。


 ダメダメ、こんなことばかり考えてちゃ。確実にお金は貯まっているし、強くなっているし、色んな仕事もできるようになったし。少しずつ進んでいけば、いつか町に住めるんだよ。


 冒険者のランクを上げて、上げている最中にお金を貯める。私がBランクになる頃にはお金が貯まっていて、念願の家だって手に入れて、町に住める。うん、きっとそうだ。


 少しずつ目標に近づいていっているんだ、このままいけば絶対に叶うよ。そのためにもこんなところで立ち止まってなんていられない。


 まずはDランクの討伐を成功させよう!


 ◇


 集落のお手伝いの日、お手伝いを終わらせると冒険者ギルドへと向かった。明日、Dランクの魔物を倒しにいくのでその調査のためだ。


 まずは恒例の常設クエストでもある張り紙を見ていく。この中には以前倒したDランクのゴブリンの張り紙もある。えっと、ホブゴブリンだけが討伐料1800ルタで他のゴブリンたちは1500ルタだって。


 他にも新しい討伐対象の魔物がいる。


 メルクボア、討伐料2000ルタ、肉買い取り・毛皮の買い取り3000~4000ルタ、討伐証明・しっぽ、北側の森や平原


 ハイアント、討伐料1500ルタ、討伐証明・右触角、北側の平原


 エイプ、討伐料1800ルタ、討伐証明・しっぽ、北側の森


 Dランクの魔物は町の北側に生息しているらしい。私がまだ行ったことない場所ばかりだ。当然だけど討伐料が上がっているが、その分魔物も強くなっているだろう。


 メルクボアとハイアントはなんとなく想像がつく。猪と蟻だとして、エイプってなんだろう。しっぽのある魔物なのは確かだけど、ここだけの情報じゃ良く分からない。


 やっぱり図書室に行って、詳しく調べてみよう。張り紙の場所を離れて、ホールの奥にある階段を登っていく。


 三階まで登り、いつもの扉を開けるといつものおじいさんが見えた。こちらに気づき、軽く手を振ってくれる。


「お久しぶりです」

「久しぶりじゃの、今日も調べものか。何について知りたい?」

「町の北側のことを知りたいんです。あと北側に生息している魔物のことも」

「ん、分かった。ちょっと席について待っとれ」


 おじいさんに本をお願いして私は席に着いた。しばらく待っていると、おじいさんが大きな紙と本をもって現れた。


「この大きな紙がこの辺の地図じゃ。北側の事も詳しく書いてあるじゃろう。この本は魔物のことが書かれておる」

「いつもありがとうございます」

「これがわしの仕事じゃから気にするな。利用者がいるのは喜ばしいことだからな。じゃあ、勉強頑張るんじゃぞ」

「はい」


 そう言ったおじいさんは自分の定位置であるカウンターの前に戻っていった。さて、始めますか。


 まず、地図を広げてみる。広げた地図はこの町が中心になって描かれているものだった。東西に森があり、南北に大きな道が伸びている。


 その北側を見てみると、大部分に平原が広がっている。真ん中に道が通っていて、左側に森、右側には丘があった。


 北側のこの平原、丘、森にDランクの魔物が生息している。地図をみた感じでは森や丘に行くのに1時間近くはかかりそうだ。


 討伐するなら森か丘の周りに広がっている平原だろう。うん、場所は大体わかった、次は魔物だ。地図を閉じて、次は本を開く。


【メルクボア】


 体長1m40cm、猪型の魔物、鋭い牙を持つ、敵を見つけると直線に走ってくる、討伐証明:しっぽ


【ハイアント】


 体長1m30cm、蟻型の魔物、鋭い口を持っており獲物を噛みちぎる、鋭い脚で突き刺してくる、討伐証明:右触角


【エイプ】


 体長1m20cm、猿型の魔物、鋭い爪を持ち敵が現れるとひっかく、牙もあり噛みつく攻撃も仕掛けてくる、動きが俊敏、複数で行動する、討伐証明:しっぽ


 猪と蟻と猿か。新しい形態の魔物の登場に不安は尽きない。


 まずは猪。何と言っても体長の大きさが脅威になる。巨体から突進を食らったらひとたまりもないだろう。


 体も堅そうだ。今までは一撃や二撃くらいで倒せていたが、メルクボアは何撃くらいで倒れるのかやってみないと分からない。が、今までとは違い簡単には倒せない魔物だろう。


 次にハイアント。昆虫の魔物は初めてになるから、どう行動してくるか分からない。脚が長いから動きは早そうだし、小回りだってききそうだ。


 あと体の硬さはどれくらいなのかが分からない。剣の一太刀で切れる硬さなのか、それとも切れない硬さなのか。それによって戦い方だって変わってくる。


 最後にエイプ。今一番脅威に感じている魔物だ。動きが俊敏で複数で行動するっていうところが怖い。もちろん攻撃も怖いけど、私は違うところが一番怖かった。


 複数で動かれて連携を取られたら本当にやっかい。それに加えて動きで翻弄されたら、いつの間にか詰んでいたっていう事態にもなりかねない。


 エイプと戦うのは最後にして、それまではメルクボアとハイアントと一戦交えてみよう。戦いに慣れるまでは稼ぎは少なくなるのは仕方ないね、慣れたらきっと稼げるだろうし。


 でも、いくらくらい稼げるようになるんだろう。前の時は一日で3万稼いで驚かれたから、それ以下ってことだよね。


 はっ、いけないついお金のことを考えちゃう。まずは戦いのことを考えないと。

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