76.木こりの護衛(1)
町の中で色んな仕事を受けていくと、自然と外にも出たくなる。でもランクアップに必要なポイントも稼ぎたい、受付のお姉さんに町の外へ出る依頼があるか聞いてみた。
すると、外へ行く一般人の護衛なんていうクエストがあることを知った。そうか、護衛だったら町の外に出られるし、お金も稼げるよね。
というわけで、依頼にあった木こりの護衛というクエストを受けることにした。東の森の端まで護衛をして、伐採している時に襲い掛かってくる魔物を倒す仕事だ。
お姉さんに紹介状を書いて貰い、早速町の中にある木工所というところにやってきた。そこには大きな庭があり、様々な材木が並べられていた。
外では数人の男性たちが材木を加工しているところで、地面には木くずが一杯落ちていた。忙しそうにしているところを話しかけてもいいのか悩んでいると、一人の男性と目が合う。
その男性は仲間に一言を告げるとこちらに近寄ってきた。
「ん、どうしたんだ?」
「お仕事中すいません。冒険者ギルドから護衛のクエストを受けにやってきた者です。これが紹介状です」
「護衛? お前みたいなちっさい奴が大丈夫か? まぁ、紹介状があるんなら親父に話を通してやる。ちょっと待ってろ」
紹介状を渡すとその男性は元の位置に戻っていった。その傍にいた年配の男性に紙を渡すと、その男性がこちらを向く。鋭い目で見られているような気がするんだけど、大丈夫だよね。
すると、その年配の男性がこちらに近づいてきた。顏が怖いから緊張するな。
「お前が東の森まで護衛してくれる冒険者か」
「はい、リルっていいます」
「一応確認するが、この紹介状に書かれてあることに偽りはないんだな」
「誓ってありません」
紹介状には今までの討伐に関係していることが書かれている。どんな魔物を討伐したか、一日でどれだけの魔物を討伐したか、ひと月でどれだけの魔物を討伐したか。
などなど、依頼先の人にどんな経験を持つ冒険者が来たのか知らせるための紹介状。それを読んでから依頼をお願いするかしないか決めることができるので、依頼者にとっても冒険者にとってもお互いのことを知れるいいシステムだ。
「そうか、意外とタフなんだな。よし、お前を信じて護衛をお願いすることにしよう」
「ありがとうございます!」
「今、用意するからちょっと待ってろ」
深くお辞儀をして感謝をした。年配の男性はその場を離れると、他の男性に話しかける。すると、他の男性は散り散りになってその場を離れていった。
私は敷地の中で立ちっぱなしで待っている。とにかく、クエスト承諾してくれて良かった。まだ子供の自分に護衛されるのも不安なのに、信頼してくれることが嬉しい。
あの棟梁の期待に応えないとね、絶対に魔物に木こりの邪魔はさせないよ。
やる気を漲らせていると、棟梁が数名の男性を引きつれて近づいてきた。その男性たちは大きな荷車を引いてきたけど、木を運ぶためだろうか?
「待たせたな。今回の依頼は木こりの護衛だ。木を切っている時、木を運んでいる時に襲い掛かってくる魔物の相手をしてもらいたい」
「分かりました。はじめまして、今回護衛を担当させて頂きますリルと言います。若輩者ですが、精一杯努めさせて頂きます。みなさんの安全は私が守ります」
棟梁の話に頷き、胸を張って男性たちに自己紹介をして深くお辞儀をした。始めはちょっと不安げな顔をしていた男性たちだったが、棟梁が紹介状を男性たちに見せる。
「これを見てみろ。東の森じゃ大暴れだったらしいぞ」
「うわっ、なんだこの数字」
「こんなちっさい子が? 信じられん」
「頼もしいやら、怖いやら」
紹介状を見て明らかに顔色を変えた男性たち。まぁ、あの時はすごい数を討伐していたから、数だけはすごいものになっているんだよね。これで少しは信用してくれたかな?
「護衛は初めてらしいが、魔物討伐に関しては頼れる。お前たちもぐずぐずして自分たちの作業を遅らせるんじゃねーぞ!」
棟梁の話に男性たちは「おうとも!」と掛け声を上げて一致団結する。それから私たちは東の森に向かうために町の門を目指した。
◇
町の大通りを進み、門を抜けた。それからまっすぐに東の森へと向かっていく。道を進んでいくと、東の森の前にある平原にやってきた。
私は棟梁に近寄って、早速仕事の話をする。
「ここにはFランクの魔物がいます。先行して安全を確保していきますね」
「あぁ、頼む。以前、無視していたら足に攻撃を食らったことがあってな。仕事に支障が出たことがあるんだ」
「魔物は魔物ですからね、どれだけ弱くても討伐したほうがいいですね」
魔物の横を知らずに通り過ぎて、攻撃を食らうことはあるだろう。どれだけ弱い魔物とは言えど、魔物には変わらない。仕事を万事進めていくためには怪我一つさせたくはない。
「ちなみに木を切る場所とか決まっているんですか?」
「東の森の北側に専用の場所があるんだ。そこまでの道を頼めるか?」
「分かりました。それまでの道の魔物は討伐していきますね」
私は団体から離れて先に草原に入る。その場にしゃがみ込むと、耳に手を当てて、耳にだけ身体強化をかける。聴力が上がり、周りの小さな音が鮮明に聞こえてきた。
スライムが2体、スネークが1体、ホーンラビットが1体いる。身体強化を切り、音の聞こえた方向へ駆け足で進んでいく。
するとスライムがいたので、剣を抜いて一突きで仕留める。スライムの体がドロリと溶けると、核を回収して素材入れ袋に入れておく。
また駆け足で移動して、今度は地面に這っているスネークを見つけた。剣先に雷の魔法を纏わせて、スネークを叩く。するとバチンッと雷が弾けた音がして、感電したスネークは動かなくなった。
スネークの体を回収した後に駆け足で移動して、今度はスライムを見つける。一突きをすれば、スライムの体は溶けた。残った核を回収して、あたりを見渡す。
草むらに白い物体を見つけた、ホーンラビットだ。駆け足で近寄るとホーンラビットはこちらに気が付き、真っすぐに向かってくる。
すぐに手をかざして、小さな火球を作る。火球をホーンラビットに向けて放つと、顔面が燃えた。
ホーンラビットは走るのを止めて、その場でジタバタと暴れ回る。そこを剣で一突きすれば、ホーンラビットは動かなくなった。
動かなくなったホーンラビットをマジックバッグに入れると、棟梁たちを確認する。安全に草原に入ってきているところだった。
あとは通り道付近の魔物を討伐していけばいい。草原を少し進んだところで、またしゃがみ込んで身体強化で聴力を強化する。また魔物の音が聞こえた。
駆け足でその場所へと進み、Fランクの魔物を討伐していく。狩り慣れた魔物の討伐だから、危なげなく討伐が進んでいった。
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