63.パーティーの討伐(9)
「お前ら大丈夫か?」
「怪我は大丈夫ですか?」
DランクとEランクの魔物との戦闘が終わり、私たちは逃げてきたパーティーに話しかける。二人は怪我もなく戦闘に参加してくれたけど、もう一人の子は足を切りつけられていて出血をしていた。
「傷薬とかありますか?」
「はい、荷物の中に傷薬と包帯が入ってます」
「なら、先に手当してしまいましょう」
「……ありがとう」
まずは傷の処置からだ。荷物から傷薬と包帯を取り出して貰い、足の処置をする。私のマジックバッグから水筒を取り出して、水筒の水で傷口を洗って血を流す。それから傷薬を塗って包帯を巻けば処置は完了した。
怪我をした子は始めは顔色が悪かったけど、今では落ち着いたのか大分色が戻って来ている。それを見ていたパーティーの子たちはようやく安心したのか、少しずつ笑顔が見られ始める。
「今日はこのまま町に帰ったほうがいいでしょう」
「はい、こいつも怪我をしているしそうする」
「リル、俺たちはどうする?」
「Dランクの魔物が現れたことは早めに知らせた方がいいと思うので、私たちも帰りましょう」
「分かった」
ということで、みんなで町に帰ることにした。怪我をした子を他の二人が支えながら歩き、私たちが守りながら一緒に森を抜ける。
「じゃ、帰る前に討伐証明を切り取って行こうぜ。Dランクの魔物はどこを切り取ればいいんだ?」
「右耳でしたよ」
「お前らも倒した魔物の討伐証明切り取ってこいよ」
今日はハプニングがあったから早めに帰り支度をする。いつものように討伐証明を切り、袋に入れていく。初めて倒したDランクの魔物も同様に切っていき、別の袋にまとめて入れておく。
これをしていると勝った実感が再び湧いてきて嬉しくなる。何もなかった私がとうとうDランクの魔物まで倒せるようになったんだから感慨深いな。
始めの頃は剣を振ることもままならなかったのに、今では難なく剣を振ることができる。しかも魔法も使えるようになっていて、自分が成長しているっていうことが分かって嬉しい。
これでBランク冒険者には少しは近づけたかな、そうだったらいいな。まだまだ先は長いけれど一つずつクリアしていければ、いずれ町に住めるようになるよね。
そんなことを考えながらやっていると、討伐証明の切り取りも終わった。
「よし、みんな完了したな。冒険者ギルドに戻るぞ」
◇
東の森を抜け、町に戻ってきて、冒険者ギルドにやってきた。足のケガした子を待合席に座らせて、残りの私たちで受付のカウンターまでやってくる。
昼過ぎの時間は閑散としていて、並ばずに受付のお姉さんと話すことができた。みんなを代表してロイが話してくれるみたい。
「今日はどうされましたか?」
「実は東の森でDランクのゴブリンが現れました」
「それは……逃げてこられましたか?」
「逃げられなかったので討伐しました」
「そうでしたか、討伐ありがとうございます。ご無事で何よりです」
話を聞いた時受付のお姉さんは驚いた顔をしていたが、話を聞くと段々落ち着いてきたのかいつもの調子に戻っていった。
それからパーティーの子たちが経緯を話して、次にロイが討伐の様子を話した。受付のお姉さんはそれを聞きながら、何かのメモを取っている。
「分かりました、報告ありがとうございます。まだDランクの魔物が潜んでいる可能性があるので、明日にでもDランクの冒険者に見回りにいくようにクエストを出そうと思います」
「お願いします。あ、それと討伐証明の引き渡しをお願いします」
「かしこまりました。お一人ずつ確認いたしますね。他の受付にもお並びください」
他の受付の人には誰も並んでいないので、それぞれ空いていたところへと並び直す。
「お願いします」
「はい、少々お待ちください」
冒険者証を渡し、討伐証明の入った袋をカウンターに置くとお姉さんがその中身を確認してくれる。まずはいつものゴブリンとドルウルフの討伐証明、次にポポ、最後にDランクのゴブリンたちだ。
「たしかに、この耳はDランクのゴブリンたちのもので間違いないですね。お話を聞いていたのですが、リル様がお一人で倒されたとのことですが」
「はい、3体同時に相手をしました」
「無傷のご帰還、心からお喜びいたします。Eランクの冒険者が上のランクの魔物を倒した時、大幅なランクアップのポイントを得られます」
「そうなんですか」
ということは、倒した3体分が元々のポイントよりも高く貰えるってことだよね。これは嬉しい、頑張って倒したかいがあったよ。
お姉さんが後ろを向いて何やら作業をすると、それが終わりこちらに振り向いてきた。なんだか、お姉さんの顏がとっても嬉しそうに見えるのはなぜだろう。
「まずは報酬です。今回倒されましたゴブリンソード、ゴブリンアーチャー、ゴブリンメイジはそれぞれ1500ルタになります」
ゴブリンのおよそ倍くらいだね。
「今回の合計金額は15300ルタになります」
「では、13000ルタを貯金でお願いします」
「かしこまりました。残りの2300ルタをお支払いします」
半日いたからいつもの半分の金額だ。いつものように一部は貯金、一部は手持ちの袋に入れておく。
「それと今回の討伐でリル様はランクアップされました。本日よりDランクになります」
「ランク、アップ?」
「はい、おめでとうございます。とても短い期間で達成されました」
冒険者証を返されて見てみると、そこにはDの記号が書かれてあった。私がDランク、本当に、本当だよね。
「どうしたんだ、リル?」
ロイがボーっとしていた私を心配してくれた。いや、そんなことより聞いて欲しい!
「ロイさん、私もDランクになりました!」
「おっ、マジか! やったじゃねぇーか!」
Dランクになったことを伝えるとロイは驚きながらも嬉しそうにしてくれた。それからロイが手を上げて私がその手を叩く、喜びのハイタッチ。
「そっか、リルもDランクかー。割と早いランクアップだったな、俺との差が3週間ぐらいか」
「始めた頃は差があったように思えましたけど、その差がほとんどなくなるくらいに早く討伐していたんですね」
「一日で30体以上だもんな。普通ならランクアップまで数か月は追加でかかりそうだったよな」
はーっと二人で感慨深いため息を吐く。こんなに早くランクアップできたのは、ほぼ毎日30体以上の討伐をしてきたおかげだ。やっぱり、あれは異常だったんだなって思った。
そのまま待合席にまで行くと、席に座る。
「で、これからのことなんだけど相談しないか?」
そうだ、二人でDランクになったんだから今回の討伐作戦は終わりだよね。これからどうなっていくんだろう。
真剣な顔つきでお互いを見る。だが、その時に二人のお腹が盛大になってしまった。
「……」
「……先に飯でも食べに行かないか?」
なんだか恥ずかしいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます