60.パーティーの討伐(6)
ロイと一緒に三階の図書室までやってきた。夕方の図書室は夕日に照らされていて、ちょっとだけ眩しい。早く調べないと暗くなって調べられなくなっちゃうね。
「おや、こんな時間に珍しい」
「こんにちは、おじいさん」
部屋に入るとすぐにいつものおじいさんが話しかけてくれる。こちらを見た後、少し驚いたように目を見開いた。
「本当に珍しい、連れと一緒か」
「はい、一緒にパーティーを組んでいる人です。それで、Dランクのゴブリンについて書かれているものがあったら閲覧したいのですが」
「ほうほう、よし分かった。イスに座っとれ」
「はい」
おじいさんはイスから立ち上がり本棚に近寄る。私たちは言われた通りにイスで座って待つ。しばらく待っているとおじいさんが一冊の本を持ってきた。紙束を紐で結んだ簡単な本だ。
「これを読むといいだろう。ゴブリンのことについて詳しく書かれておる」
「ありがとうございます」
「んむ、時間も遅いしあんまりゆっくりさせられないが、じっくり見ておくれ」
そう言っておじいさんは定位置のカウンターへと戻っていった。
「早く見てみよーぜ」
「うん」
私は本をめくり、Dランクのゴブリンについてのページを開いた。
【ホブゴブリン】
体長150cm、武器:こん棒、体形はゴブリンよりも高く太い、力業が得意、普通のゴブリン並みの速度、討伐証明:右耳
【ゴブリンソード】
体長120cm、武器:なまくら剣、体形はゴブリンよりも高い、剣で切りつけてくる、ゴブリンよりも素早い、討伐証明:右耳
【ゴブリンアーチャー】
体長120cm、武器:ボロ弓、体形はゴブリンよりも高い、弓矢で攻撃してくる、矢がなくなったらボロナイフで攻撃してくる、ゴブリンよりも素早い、討伐証明:右耳
【ゴブリンメイジ】
体長120cm、武器:ボロ杖、魔法(火、風のどちらか)、体形はゴブリンよりも高い、魔法で攻撃してくる、魔法が使えなくなったら杖で攻撃してくる、ゴブリン並みの速度、討伐証明:右耳
「これが、Dランクのゴブリンですね」
「色んな種類がいるんだな」
どうやらDランクのゴブリンはそれぞれに特徴を持ったものばかりだった。絵も描かれていて、普通のゴブリンよりは脅威に感じる。
「リルはどれが脅威に感じる?」
「私はゴブリンメイジですね。どれほどの魔法を使ってくるかは分かりませんが」
「俺はホブゴブリンだな。なんか強そうだ」
1体ずつだったら相手ができそうではあるが、これが複数であれば話は違ってくるだろう。
「複数で襲ってこられたら、どうします?」
「一番強いヤツから倒す」
「私は遠距離攻撃をする魔物から倒した方がいいと思います」
「んー、近いヤツから倒した方が良くないか?」
「でも、近い距離の魔物を相手にしている時に遠距離の攻撃をしてきたらどうします?」
「それを言ったら遠距離を仕掛けてくるヤツを倒しに行っている時に、近距離攻撃のヤツが攻撃してきたらどうする?」
二人で話し合うけど平行線だ。戦闘スタイルが違うから何を大事にするのかも違う、意見が合わない。だけど、意見が合わなくてもどんどん意見を言い合って考えを伝えていく。
真剣な会話が続いている時、どんどん部屋の中が暗くなっているのを感じた。そろそろここを出ないといけない。
「今日の話し合いはこれくらいにして、帰りませんか?」
「お、そうだな。いやー、中々まとまらないなー」
「でも、考えが分かったのは良かったです。ロイさんがどんな風に動くか知れただけで、こちらもどうやって動いたらいいのか分かってきました」
お互いがお互いの動きを知るのって大事だね。そうしたら、相手がこう動くから自分はこう動こうって考えられるから。
席を立ってカウンターに寄って行く。
「本ありがとうございました」
「あぁ、利用してくれてありがとね。またおいで」
「はい」
おじいさんに別れを告げて図書室を後にした。
◇
あれから二週間が経ったがDランクのゴブリンとは遭遇しなかった。森に行く時や帰る時には他の冒険者たちに出会うことがあったので、受付のお姉さんが話していたことを伝えてあげた。
すると、みんなも聞いていたらしく不安そうな顔をしていた。それでも冒険を止められないらしく、不安そうにしながらも冒険へと出かけていった。
中には腕に自信があった少年が出会っても戦って勝ってやるって言ってた。Dランクの魔物といってもゴブリンだから勝てそうだと思ったんだと思う。
だから、そういう子には図書室で知った内容を教えて上げた。できるなら逃げることを優先することもお節介だけど伝えておく。
ロイがいうには、みんな覚悟して冒険者をやっているからそこまで気にかけなくてもいいと言ってくれた。でも、知らないと知るとじゃ全然違うから、できることはしてあげたい。
そんな感じで出会った少年少女の冒険者にはDランクのゴブリンについて話をした。ロイはちょっと呆れながらも一緒に注意をしてくれる、ありがたいなぁ。
今日も出会った冒険者に話をして、いつもの狩場についた時だ。音を鳴らして周囲の魔物を呼び寄せて、戦い始める。
「やぁっ」
飛び掛かってきたドルウルフを切りつける。ドルウルフは悲鳴を上げた後に地面に転がった。
「次、ゴブリン2体だ!」
「任せて下さい!」
茂みの奥からゴブリン2体が現れた。こん棒をチラつかせて、下卑た笑みを浮かべながらゆっくりと近づいてくる。
私は1体のゴブリンに向けて手をかざして、魔力を高めていく。すぐに高まり、火の魔法へと変換する。手の前で火の玉を作るようにイメージをして、ゴブリンに向けて放つ!
火の玉はまっすぐゴブリンに向かっていき、意表を突かれたゴブリンは間抜けな顔をして火の玉を受けた。
「ギャーッ」
「ギャッ!?」
1体のゴブリンは燃えて、もう1体のゴブリンは驚いた顔をして隣を見ていた。そこへ剣を下に構えて走り寄る。展開の速さについてこれないゴブリンはこっちを向くが何もできずに切りつけられた。
「ギャギャーッ」
剣を受けたゴブリンは地面へと倒れ、火の玉を受けたゴブリンも地面へと倒れて火の熱さで転がった。隙だらけのゴブリンを見下ろしながら、剣で切りつける。
「ギャーッ」
その一撃と火のダメージでそのゴブリンは息絶える。パタリと動かなくなり、火も消え去った。
しかし、まだ魔物が来ているのか木々の向こう側が騒がしい。何かが走ってくるような草を踏む音が聞こえてくる。すぐに体勢を整えてその方向を向く。
「何か来ます!」
「おう!」
音が段々大きくなり、すぐ目の前の茂みが大きく揺れる。そして、茂みの向こう側から何かが姿を現した。
「あっ!」
「人だ!」
そこにいたのは少年少女だった。一人の冒険者の腕を肩に回して二人で担いでいる。その二人は私たちを見た後、安堵の表情を浮かべてこちらへと近寄ってきた。
「助けてくれ、Dランクのゴブリンが現れた!」
「なっ!」
「本当ですか!?」
その三人の後ろからは聞いたことのないゴブリンの声が聞こえてきた。茂みが大きく揺れて、そのゴブリンたちは姿を現す。
現れたのはホブゴブリン、ゴブリンソード、ゴブリンアーチャー、ゴブリンメイジだった。
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