53.パーティーの参加

 その募集の張り紙にはこう書かれてあった。


【指定ランクパーティーの募集】


 代表者:ロイ


 他のパーティー員:なし


 ランク:E


 討伐目標:Eランクの魔物(ゴブリン、ドルウルフ、ポポ)


 代表者より


 良い狩場がみつかったので、一緒に討伐してくれる人を募集!

 自分は力に特化しているので、素早い人だったら助かる。

 Dランクに上がるまで付き合ってくれたら嬉しい!


 なるほど、私向けのパーティー募集の知らせだ。最近は討伐ばかりクエスト受けていたから、お姉さんに覚えられちゃったんだね。


 簡素に書いてある張り紙を見て考える。内容は今討伐している魔物を対象にしているので問題ない。相手は力に特化しているので、自分の不足分を補ってくれそうでもある。


 問題はDランクまでどれくらい一緒に戦わないといけないのか、だ。いや、それほど問題はないのかもしれない。だって、自分はBランクを目指している訳だから早くランクが上がることはありがたい。


 相手がDランクに上がったらパーティーは解散だろう。その時まで自分もランクが上がっていればいいが、上がっていなかったらどうしよう。


 討伐クエストが続いたから、この共闘が終わったら久しぶりに町の中の仕事を請け負うのはどうだろうか。どっちかっていうと、町の中の仕事を請け負ったほうがランクが上がりやすいって言っていた。


 この募集をした人はどんな人だろうか。コメントを見る限り悪い人ではなさそうだ。だって良い狩場を独り占めしないで教えてくれるってことだよね。


 いや、狩場が本当にすごい数の魔物が現れるから一人で対処できないのかもしれない。そしたら他の狩場にいけばいいんだけど、誰かと共闘したいほどその狩場が魅力的なのかもしれないな。


 うん、ごちゃごちゃ考えていると余計なことまで考えちゃうかも。とにかく、この話は美味しい話だ。受けることにしよう。


 張り紙を外して、再びあのお姉さんの所へ並んで待つ。しばらく並んで待っていると、自分の順番が回ってきた。


 冒険者証と一緒に先ほど剥がした張り紙を手渡す。


「このパーティーに参加したいと思います」

「そうですか、リル様にオススメして良かったです」

「はい、今は討伐メインにやっていたのでタイミングが良かったです」

「また町の中のクエストも受けて下さいね。代表者の方は毎日こちらに来られるので、明日の今頃には顔合わせの日時をお伝えすることができます」

「では明日の夕方頃に詳しい話を聞きにきますね」

「お待ちしております」


 やり取りを終えて、カウンターから離れた。一体どんな人なんだろう。同じランクだから近い年齢の子が来たりするのかな。


 少しの不安と少しの期待が混じって複雑な心境になる。もう参加申請したんだし、後は会うだけだ。余計なことを考えるのは止めて、今日の晩御飯のことを考えよう。


 いつものところに行くか、違うところに行くか、どっちがいいだろう? 町をブラブラして決めようかな。


 夕日で染まる大通りを歩いていく。今日の晩御飯は何にしよう?


 ◇


 次の日、朝の配給を食べてから町を通り過ぎて東の森へ向かう。西の森から東の森に行くには距離があるから大変だ。


 東の森についたら、周囲を警戒しながら魔物を探して討伐する。中々見つからないと身体強化の魔法で聴力を強化して周囲を探って魔物を見つけたりもする。


 そうして見つけた魔物を討伐して、討伐証明を刈り取っていく。それを何度か繰り返していくと、あっという間に一日が終わってしまう。


 戦利品を持って町に戻り、冒険者ギルドに寄ると相変わらず冒険者でごった返していた。慣れたように列に並び自分の順番を待つ。


「次の方どうぞ」


 ボーっとしていると自分の順番が来たみたいだ。少し慌ててカウンターに行くと冒険者証を差し出す。


「Eランクのリル様ですね。リル様に面会者が来ております」

「面会者ですか?」

「はい、先日のパーティーの件で代表者様があちらの待合席でお待ちです」

「あ、そうなんですか。あ、あの先に討伐証明と素材の買い取りをお願いします」

「分かりました、こちらにお出しください」


 昨日の今日で、と驚いてしまった。急いで終わらせないと。


 慌ててマジックバッグから討伐証明が入った袋とポポを取り出していく。カウンターに並べるとお姉さんがテキパキと確認を済ませて処理を終わらせていく。


「お待たせしました。全部で18200ルタになります」

「じゃあ、16000ルタを貯金でお願いします」

「はい、承りました。残りの2200ルタをお渡しします」

「ありがとうございました」


 やり取りを終わらせるとカウンターから離れた。その足で真っすぐに待合席に向かっていく。


 えっと、どの人かな……あ、あの人張り紙持っている。声かけるの緊張するな、よ~し。


「あ、あの」

「ん?」

「Eランクパーティー募集の代表の方、ですか?」


 声をかけたのは少年だった。紺色の短い髪をしていて、体格は大きい。革装備に身を包んでいて、背中には棘のついたメイスを担いでいる。


「もしかして、リルさん?」

「はい、リルです。ロイさん、ですか?」

「そうそう、俺がロイだ。とりあえず席に座ってくれないか?」

「はい」


 席をすすめられて大人しく席に座る。その最中、ロイさんの視線がジロジロとこちらを見ていてちょっと居心地が悪い。


「早速自己紹介をしよう。名前はロイ、Eランク冒険者だ。武器はメイスで力業が得意。年は14才になって、えーっと大工の息子だ」

「あ、名前はリルです。Eランク冒険者で、武器は片手剣と魔法を少々。力業というよりどちらかというと速度重視の戦い方です。あと一か月で12才かな。えっと……西の森に住んでいる難民です」

「えっ、難民?」


 しまった、もしかしてダメだった? ロイは目を丸くしてジロジロを見続けていてちょっと怖い。


「い、いや……全然難民に見えねぇ」

「え?」

「だって、明らかに上位冒険者が持っている装備品を装備しているから。Eランクにしたらやたらと装備が良くてビックリした所に難民だろ? そりゃ、驚くわ」


 はー、と感心したように息を吐くロイ。どうやら難民として差別していたわけじゃなくて、私の装備品に驚いたみたい。


「驚いてごめんな、気分悪くしたか?」

「ううん、大丈夫です」

「上位冒険者の装備はいつも見ていたんだよ。だから、分かったんだけど……はー、どうやったらそんなに稼げるんだ?」


 ロイの羨ましそうな視線がもどかしい。剣と革装備を交互に見て「いいなー」っと何度も呟いている。


「っと、悪いな。俺は力が強い分、素早い動きとかは苦手なんだよな。だから、それを補ってくれる人を探していたんだけど、リルは動きを重視するスタイルってことか?」

「はい。できるだけ魔物の不意を突くように攻撃して、攻撃されたら避けたり、攻撃される前に魔法で牽制したりしてます」


 お互いに戦闘スタイルは違う。でもお互いに足りない部分を補い合えるような感じだ。あとは実際に戦闘してみて動きを合わせていくことが必要だろう。


「今日は時間がないし、詳しい話は明日移動しながら話すってことでどうだ?」

「はい、それでお願いします。あ、私でいいんですか?」

「もちろん、上位冒険者が持っている装備も持っているし、俺が求めていた速度のある冒険者だしいうことなしだ!」


 そう言ってロイは笑った。良かった、受け入れられたみたい。


 すると、ロイは右手を差し出してくる。


「明日、東の門に集合な。これからよろしく」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 お互いに握手した。明日からパーティーを組んで討伐することになる、どうなるか不安だけど楽しみだな。

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