52.パーティーのすすめ
茂みから勢い良く飛び出して、ドルウルフの集団に向かっていく。
「ガウッ」
ドルウルフが驚いた顔をしてこちらに振り向くが、もう遅い。すでに振り上げられた剣を首めがけて振り下ろす。切られたドルウルフは悲鳴を上げてその場に倒れ込む。
「ガウッ!?」
他のドルウルフは驚きのあまり身動きが取れないでいる。そこへ手をかざして魔力を高め、火の魔法を噴射した。
ゴォォォッ
噴射しながら手を移動させると、3体のドルウルフに火が燃え移る。
「ギャンッ」
「ギャオオンッ」
「ギャァッ」
毛に引火した。1体は驚きのあまりに駆け回り、残りの2体は地面に寝転がりゴロゴロと転がる。その隙をついて転がったドルウルフに素早く近寄り、剣を振り下ろす。
「ギャンッ」
「ギャッ」
2体のドルウルフを素早く倒すことができた。あとは駆け回っているドルウルフだけだ。逃げ回る動きを見極めて、逃げる先に立ち塞がるように立ち剣を構える。そして、剣を下に構えて近づいてきたところで剣を振り上げた。
「やぁっ」
「ギャインッ」
振り上げた剣は体を切り裂き、ドルウルフは一瞬で絶命して地面に転がった。見えている範囲には魔物はいないが、まだ注意は怠らない。
すぐに耳に手を当てて魔力を耳に集中させる。意識を高めて音を聞くと、右側からゴブリンの声とこちらに近づいてくる足音が聞こえた。
どうやらドルウルフとの戦闘音を聞きつけてしまったらしい。すぐに身体強化の魔法を切ると、木の裏に姿を隠す。
しばらく身を隠していると慌ただしいゴブリンの声が聞こえてくる。木々の合間を抜けてゴブリンが先ほど戦闘があった場所に現れた。
「ギャギャーッ」
「……ギャッ?」
現れたのは2体のゴブリンだ。勢い良く現れたはいいが、その場に倒れたドルウルフしかいなくて不思議そうに首を傾げた。
注意深く周囲を見回るゴブリン。そのゴブリンが後ろを向いた瞬間、私は木の裏から飛び出してゴブリンに襲い掛かった。
駆け出す足音に気づいたゴブリンがこちらを向くが、すでにその時には剣を振り下ろしていた。
「ギャーッ」
剣先がゴブリンの体を捉えた。胸を切り裂かれたゴブリンは悲鳴を上げて倒れ、もう1体のゴブリンは驚いた表情でこん棒を構えた。
すかさずこん棒を持つ手に向かって剣を振る。しかし、ゴブリンが後ろに下がってしまいその一撃は躱されてしまった。
このまま自分も下がるか、それとも踏み込むか。一瞬の内にそれを考えて、踏み込むことに決める。
剣が振り切った時、足に力を込めて前に出る。ゴブリンは驚いた顔をしてこん棒を構えるが気にしない。もう一歩前に出て、剣を振り上げる。
「やぁっ」
「ギャーッ」
下から襲い掛かった剣先はゴブリンの体を捉えた。下から切り上げられたゴブリンはなすすべなく切り捨てられる。
切られたゴブリンはガクガクと震えると、力なくその場に崩れ落ちた。だが、まだ気を抜かない。耳に手を当てて、身体強化で聴力を向上させて周囲の様子を音で探る。
意識を集中させて周囲の音を聞くと、それなりに離れた場所で「ポッポッ」とポポの声が聞こえるだけ。脅威となるゴブリンとドルウルフはいない。
「ふぅ、一息つけそう」
身体強化の魔法を切って肩の力を抜く。今回の戦闘も無事に怪我なく切り抜けられたようだ。
あれから一週間が経ち、Eランクの魔物との戦闘も難なくこなせるようになってきた。始めはぎこちなかった討伐方法も回を重ねるごとに無駄なく動けるようになってきている。
もしかしたら良い装備のお陰かもしれないが、身軽に動けているお陰で怪我もなく順調そのもの。今のところ装備品に不備などはなく、お金がかかっただけのことはある性能だ。
これがもし初心者セットの装備だったら上手くいかずに怪我をしていたのかな。身体能力が低いから少しでも良い装備を買っといて正解だったよね、うん。
一息つき終わり、早速討伐証明の採取をする。腰にぶら下げたナイフを手に取ると、右耳だけを切り取っていく。ゴブリンとドルウルフは両方とも右耳が討伐証明だから間違えなくていい。
討伐証明を切り取り、素材入れ袋に入れていく。それ以外はそのまま置いておけば、次の日には大体なくなっている。森には掃除屋さんがいるのかな。
そんな訳で、残りを放置しておき荷物をまとめてマジックバッグに入れる。さて、次の魔物を探さないとね。
耳に手を当てて、身体強化の魔法で聴力を強化する。耳を澄ませてみれば先ほど聞こえていたポポの声が聞こえてきた。「ポポーッ」「ポーッ」と2羽のポポが喧嘩をしているみたい。
ポポがいる方向を確かめて、身体強化の魔法を切る。今日はこのポポを討伐したら冒険者ギルドに帰ろう。
剣を抜き、ポポの声が聞こえた方向に駆けていく。
◇
東の森から冒険者ギルドに戻ってきた。夕方頃の冒険者ギルドは様々な冒険者でごった返している。受付への列も長く伸びていて、今日の報酬を受け取るのに時間がかかりそうだ。
まぁ、毎日のことだからもう慣れっこだけどね。私は大人しく一番空いている列に並び自分の順番を待った。
目の前にいる冒険者は様々な袋を持っており、討伐証明や素材なんか入っているのだろう。中にはマジックバッグを持っている人も居て、袋を持たない人もいる。
列の冒険者は段々と人が減っていき、ようやく自分の番がやって来た。お姉さんに言われる前に冒険者証を差し出す。
「Eランク冒険者のリル様ですね」
「はい。討伐証明と素材の買い取りをお願いします」
「かしこまりました。テーブルの上にお願いします」
お姉さんに言われてからマジックバッグを外して、中から討伐証明が入った袋と頭を飛ばしたポポの体を出していく。テーブルの上に並べると、お姉さんが早速査定に入った。
討伐証明の確認をして種類を特定して個数を数える。ポポの体の状態を確認して個数を数えていく。今度は後ろを向いて何やら操作をしている。そうしてようやく査定が終わった。
「リル様おまたせしました。ゴブリンが8体、ドルウルフは7体、ポポが討伐証明と肉の買い取りが4羽ですね。合計で17400ルタになります」
「16000ルタを貯金でお願いします」
「かしこまりました。残りの1400ルタをお渡ししますね」
いつものやり取りをしてお金を受け取る。それで終わる予定だったけど、お姉さんがまだ何か言いたそうにこちらを見て来ていた。
「リル様に良いお話があるのですが、聞かれていきませんか?」
「良い話、ですか? どんな話でしょう」
「はい、パーティーのお話です」
パーティー? パーティーってあれだよね、複数の人が組んで一緒に行動するやつ。
「ちょうどEランクでパーティーの募集が出されました。内容的にもリル様にはピッタリなものだと思いましたので」
「どんな内容ですか?」
「魔物を討伐する内容です。詳しい内容はあちらに張り出されていますので、ご興味がありましたらぜひ受けてみてはいかがでしょう」
「分かりました。ちょっと確認してきます」
「ぜひよろしくお願いします。もし、受けたい場合はこちらまでお越しください」
興味があったのでお姉さんと別れて、張り紙が張り出された場所に移動した。そこには色んな募集の張り紙が出されていた。
ランク別だったり、性別だったり、特技だったり。様々な募集が張り出されている中、Eランクパーティーの募集の張り紙を見つけた。
「えーっと、これかな。良い狩場が見つかったので、協力して討伐してくれる人募集?」
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