50.討伐RTA一か月の成果と次のステップ

 魔物の餌を三か所に展開して魔物を討伐するやり方にして一か月が経った。


 スライム、スネーク、ホーンラビットのFランクの魔物をひたすら倒す日々だったが、様々な成果を得られた。それは私の予想を超えていて本当に驚いた。


 まず一番の変化はステータスだ。一か月の討伐RTAで体と魔力が鍛えられて、中々上がらないとされているステータスがいくつか上がった。


 まぁ、とても低いステータスからだったから、上がるのは楽な方なんだけどね。それでも、訓練の成果が目に見えて得られたことがとても嬉しかった。


 私のステータスはこう変わった。


【 力 】 Ⅾ → D+


【体 力】 Ⅾ+ → C


【魔 力】 C → C+


【素早さ】 Ⅾ+ → C


【知 力】 C+ → B


【幸 運】 B


 幸運以外は全部一段階アップした。Dが一般的な平均値らしくて、Cが一般的よりも優れているっていう認識らしい。だから、私の体は一般的よりも優れているくらいにまで鍛えられたみたい。


 でも訓練で知力も上がったのは驚いたな。色々と考えながら討伐していたから、その分が加算されて上がった感じなのだろう。以前よりは頭の回転が早くなった気がする。


 ステータスで心もとないのは力かな。できればCになってほしかったけど、今回の訓練では無理だったみたい。あんまり力のいる討伐じゃなかったから仕方ないのかな。


 まぁ、それを補うための身体強化なんだけど。身体強化と魔法を使ったおかげで魔力も上がったし、使える魔法の威力も少し上がったのかな。ステータスで詳しく分からないのが残念だ。


 訓練は成功して、ステータスが見違えた。体が鍛えられた感じはするし、魔力も上がったような気がするしね。ともかく、次の段階に進む準備ができて本当に良かったな。


 身体強化の魔法にも体が慣れてくれたと思う。始めは辛かった体への負担も和らいでくれたしね。速度にも体が慣れてくれたお陰で、同時に動体視力も鍛えられたみたいだ。


 雷と火の魔法は発動速度が上がったし、魔力が上がったお陰なのか威力も上がった。今度は違う形で魔法を発動させたいな。どんな風に発動させようかな。まず、次のランクの魔物を見てから考えよう。


 剣の方は順調に使いこなせていると思う。最初は剣を振るのさえちょっと重くて振り辛かった。けど、今ではスムーズに剣を振ることができている。


 さて、次はお金だ。普通に倒していた時は一日の収入は7000ルタぐらいで頑張っても8000ルタぐらいだった。


 だけど、魔物の餌作戦で一日の収入が12000ルタぐらいまで上がってくれた。それを一か月続けると貯金も増えてくれた。


 今の貯金は40万ルタだ。戦う前は12万ルタまで減ってしまった私の貯金が少し復活していてとても嬉しい。よーし、まだまだ頑張ってランクを上げたり、お金を貯めたりするぞ。


 あと、少し変わったことがあった。毎日すごい量のFランクの魔物の討伐証明を行っているからか、周りの人から注目を集めてしまう。


 金額は周りに比べるとそんなに多くないと思うのに、注目されちゃってなんか変な感じだ。中には直接話しかけてくる人もいたからビックリしたほど。


 そんな訳でまだまだ低級の冒険者なのに変な注目を集めてしまいドキドキしてしまった。できればひっそりと冒険者稼業をしていたいんだけど、どうしてこうなったんだろう。


 まぁ、訓練も完了してとうとう次のステップに上がることにした。今度はEランクの魔物だね、しっかりと事前に情報を手に入れなければ。


 まずは常設討伐のクエストの確認だ。張り紙の所にきて、対象となる魔物を調べる。


 ゴブリン、討伐料800ルタ、討伐証明・右耳、森に生息


 ドルウルフ、討伐料1000ルタ、討伐証明・右耳、森に生息


 ポポ、討伐料400ルタ、討伐証明・頭、肉買い取り600ルタ、森に生息


 ゴブリンは分かる、子供のように背の低い人型の魔物だ。ドルウルフは狼として、ポポってなんだろう。なんだか可愛い名前だけど魔物なんだよね。うーん、これは調べる必要があるね。


 というわけで、私はまた図書室にやってきた。おじいさんにEランクの魔物の図鑑をお願いすると、すぐに出してくれた。司書みたいな人がいると本当に助かるなぁ。


 まずはゴブリン。説明には1mくらいの背丈で体の色は緑、長い耳と突き出した鼻が特徴になっている。また手には粗末な武器を持っていることが多いらしい。


 力が子供並みで一対一なら苦戦することのない魔物。だが、集団だと厄介な魔物だと書いてある。あと、森の奥のほうに生息しているみたいだ。


 次にドルウルフ。茶色の毛並みをした小さな狼らしい。牙と爪があり、噛みつきと切り裂きが攻撃方法だ。でも、体が小さいからか力と素早さはそんなに高くないみたい。


 こちらもゴブリンと同じで一対一なら苦戦することはない。だが、集団でも行動するので注意が必要だ。


 最後にポポ。どうやらポポは飛べない鳥の魔物だそうだ。黄色いくちばし、丸く太った灰色の体と細長い首、強靭な足とかぎづめが特徴。主にくちばしでつっつく攻撃と、かぎづめでひっかいてくるらしい。


 こちらは集団で行動することがない魔物。あと肉は食用になるらしいから、持ち込み前提で討伐したい魔物だね。


 一通り魔物のことを調べられた。魔物の特徴は分かったし、あとは実戦あるのみだよね。


 おじいさんに挨拶をして、図書室を後にした。


 ◇


 町を出ていつもの森へと向かう。今日は森の入口付近ではなくて、奥の方へと進んでいく。今まで踏み入ったことのない森の奥だからドキドキしてきちゃった。


 森の入り口付近は太陽の光が結構当たるからとても明るい。だけど奥の方に行くと木が密集しているせいかちょっと薄暗かった。


 きっと薄暗くなったところからが森の奥なんだろう。剣を鞘から抜いて戦闘態勢を取り、辺りを見渡していく。耳を傾けながら進んでいくと、草を踏む音が聞こえた。


 その場に立ち止まって音が聞こえた方向を見る。木々の隙間の向こうに灰色の何かが動いているのが見えた。目を凝らしてよく見てみると、それは図書室で読んだポポだった。


 ポポはこちらにまだ気づいていないのか、辺りを警戒しながら歩いている。これはチャンスだ。ポポの背後に回るように移動して、ゆっくりと近づいていく。


 確か討伐証明は頭だったから、最初の一撃は首にしよう。それで倒せなかった場合は対峙することにした。


 そろり、そろりと近づく。ポポはまだ気づいていない。ポポまであと5歩、というところで私は一気に駆け出した。


「ポッ!?」


 剣を振り上げると、ポポがこちらを振り向く。だけどもう遅い。振り下ろした剣がポポの首をさっくりと切り飛ばした。ポポは何もできずにその場にゴロリと転がる。


「ふぅ、不意をつけば簡単だったな」


 初めてのEランクの魔物との戦闘は難なく終わった。この調子でゴブリンとドルウルフも討伐できたらいいな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る