41.武器屋に行こう
「魔力感知のクエストを受諾した冒険者がいました」
冒険者ギルドに顔を出すと受付のお姉さんにクエストの結果を聞くことができた。
「町からの依頼を受けてゴミの焼却に携わっている魔法使いです。魔力に関しては十分に保有する方で、魔石に魔力を補充する仕事も請け負っております。なので魔力を放出することに関しては問題のない方です」
まさかゴミの焼却をしている魔法使いさんに教えて貰えるとは思ってもみなかった。魔力を注ぐ仕事もやっているらしいから、魔力を放出して感知させることなら任せられそう。
魔法や魔力に関して詳しいことは分からないけど、魔法使いっていうんだから任せても大丈夫だよね。うん、この人にお願いしたい。
「この方はいかがでしょうか?」
「その人でお願いします」
「かしこまりました。その方のお話ですと二日後のお昼すぎにお時間ありますか、とのことですが」
「その日時でお願いします」
「承りました。必ずお伝えいたします」
受付のお姉さんにお願いしてその人に受けてもらうことにした。
その話が終わると、教官に教えて貰った武器屋へと向かう。入り辛くない武器屋とかだったら嬉しいな。
◇
大通りを進み、途中で脇の通りを進むと目的の武器屋があった。紙に書かれた店名と看板に書かれた店名を確認したら、そこで合っていた。
ゆっくりと重い扉を押して中へと入って行く。
「すいません」
「へい、らっしゃい」
声をかけるとすぐに返事が返ってきた。中を見てみると壁にかけられた無数の武器が見えて、その奥にあるカウンターには一人のお兄さんがいるのが見える。
お兄さんは人の良さそうな笑顔を向けて、人懐っこい感じで話しかけてきた。
「お嬢さんは武器を買いにきたのかな?」
「はい、あの片手剣を見せてもらってもいいですか?」
「いいよ、ちょっと待っててね」
お兄さんはこちら側に移動すると立てかけられた武器を見立てていく。1本ずつカウンターの上に置いていき、合計で3本の片手剣がのる。
「まずは初心者向けのショートソード。低級魔物を相手にする事ができる程度の片手剣だよ」
見たことのある片手剣が紹介された。刃渡りが50cmくらいあって、そこそこ太く真っすぐな形をしている。
「次はレイピア。これも低級魔物を相手にするには丁度いいものだ」
細長い刀身の剣だ。ショートソードよりも長くてかなり細い刀身で、確か突きの攻撃がしやすいんだったっけ。
「最後にサーベル。ちょっと重たいけど、その分一撃が重い武器だよ」
刀身が湾曲した片刃の剣。刃の先に行くほど太くなっていて、私が振り回すのは大変そうな印象だ。
「とりあえず、試しに持ってみたら?」
「はい」
お兄さんの言われた通りに剣を持ってみる。まずはショートソードだ。訓練の時にも使っていた馴染みの武器でちょっと重い。大きな魔物には不向きだけど、低ランクで低級魔物を討伐するには適していそうだ。
次にレイピア。ショートソードよりも軽いが、やっぱりちょっと重たい。刃が長いから重心の取り方が難しそうな印象だ。あと一点集中の突きの攻撃が果たして自分に合っているのかが分からない。
最後にサーベル。持った瞬間ずっしりと重くて膝が曲がった。お兄さんの言った通り一撃は重そうだ。だけど、想像した通りに振り回すのは大変そう。
「どれも10万ルタから18万ルタのお買い得商品だよ。そういえば、予算はいくらくらいを予定しているの?」
「えっと、40万ルタくらいを」
「えっ、そうなの!? ちょ、ちょっと待ってて!」
しまった、とっさに総予算の金額を言ってしまった。すると、お兄さんは驚いた顔をして店の奥に引っ込んでしまう。
まさか高額商品を売りつけるつもりで品物を取りに行ったのかな、戻ってくるのがちょっと怖い。んー、でもしっくりきた武器はなかったし、いい武器だったら購入するの考えようかな。
「お待たせ。ちょっとこの剣を見て」
お兄さんは布に包まれた一本の剣をカウンターに置き、布を取った。中には一本の片手剣があったのだが、その刀身は鉄とは違う素材でできているためか青白い輝きをしている。
「これはオファルト鋼っていう鉱物でできている剣なんだ。特徴は鉄と比べて青白く、軽く、丈夫っていう良い点がある。他にも魔鉱成分も含まれているから、魔法伝達の力もあって、魔法との相性がとてもいい素材だ」
「……持ってみてもいいですか?」
「もちろん」
おそるおそる柄を握って持ち上げると、なんとレイピアよりも軽かった。刀身の長さは60cm以上あり、刃は少し湾曲している。性能もそうだが、刀身がすごく綺麗でツルツルしていて切れ味も良さそうだ。
「オファルト鋼を使えるのは冒険者ランクCくらいが一般的なんだ。でも、そのランクに上がると他にも選択肢がある。良い鉱石で作られた武器が他にもあるし、このくらいの長さの武器は中々売れないんだよね。あ、品質には全然問題ないよ」
この武器は上位の冒険者が使うランクのものらしい。多分だけどそこまでランクが上がると武器の幅が広がっていくんだろうな、と思う。討伐する魔物も大きくなれば、武器だって自然と大きくなるはず。だから、小さな武器は売れ残る。
手に持って構えると、剣の軽さで手が馴染んでいるのが分かる。ちょっと重いけど、問題のない重さだ。しかも魔法にも適応しているという話だから、今後魔法を使う戦闘をする私にとって最適な武器だろう。
問題は……値段。
「この武器が気に入ったんですけど、そんなに高いと買えないので……その安くなりませんか?」
「もちろん、そのつもりさ! こいつ、何年も売れなかったから、どうしようかと悩んでいたところなんだよ。本当は50万ルタするんだけど、45万ルタで売ろう。それだけじゃなくて初期の調整代、鞘代、鞘ベルト代は無料! 45万ポッキリだ」
45万ポッキリにサービス品か、魅力的だ。それに武器も良いもので、力と体力がない私にとっては救いの付加価値になりそう、よし、ちょっと高いけどこれに決めよう。
「これを買います」
「ありがとう、毎度あり!」
「お金は商品の引き渡しの時でいいですか?」
「いいとも。じゃ、鞘ベルトの調節のためにサイズ計るから」
高かったけど、私に丁度いい武器が見つかって良かったな。あとはマジックバッグがどれだけの値段になるのか心配だ。そんなに高くないといいなぁ。
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