第三章 冒険者ランクE
37.新たな一歩
翌日の朝、配給を食べると他の難民たちと一緒に町へと行った。冒険者ギルドの中に入ると、久しぶりに朝の列に並んで待つ。
しばらく待ってみると、自分の番が回ってきた。冒険者証を差し出して話し始める。
「今日はどういったお仕事を希望されますか?」
「外のクエストを受けたいと思っているのですが、どういったクエストがあるか聞いてもいいですか?」
受付のお姉さんは冒険者証を確認してから、一つずつ話してくれる。
「リル様はEランクに上がったばかりで、外のクエストは薬草採取のみ達成している、ということでよろしいですか?」
「はい」
「Eランク冒険者の外へのクエストは主に常設クエストとなっています。内容としては低級魔物の討伐と薬草採取ですね。時々、指定の討伐や採取の依頼がある程度になります」
やっぱりきたか、討伐クエスト。この町の外には魔物がいて、冒険者がそれを討伐している。町の外にある集落は魔物の脅威はあるが、あそこは元々魔物が少なくその分動物が多くいる場所だ。
あと定期的に冒険者がやってきて魔物を討伐してくれていた。多分、領主さまが依頼をして魔物を討伐してくれているんだと思う。だから集落に住む私たちは安全に暮らすことができる。
本当に領主さまのお陰で私たちが暮らしていけるんだなぁ。何か恩返しができればいいけど、力のない私ができることは少ない。力をつけたら領主さまのために何かできるといいな。
おっと、お話を聞かなくちゃ。
「なのでEランクの皆さんはボードに貼ってある依頼をこなすのが一般的です。窓口から出す依頼は時々確認するだけで大丈夫ですよ」
「分かりました。討伐した証明とかはどうすればいいでしょうか?」
「討伐の証明に関してもボードに貼ってある用紙を確認して頂ければ大丈夫です。あと、リル様の身なりを見る限り討伐のクエストは全くの初めてでよろしいですよね」
「はい」
普通のシャツにズボンじゃそうだよね。武器も持ってないし、討伐クエストは受けられませんって言われないよね。
「初心者冒険者限定で討伐のための講習がありますので、ぜひそちらを受けて下さい。それと合わせて一万ルタをお支払いして頂ければ、武器を使った訓練も受けることができますよ」
討伐のための講習と武器の訓練か。何も知らない私にピッタリなイベントだよね。
「二つとも受けます」
「了解しました。お金はお預かりした金額から差し引きますね」
これで私も低級魔物を倒せるようになるのかな。ちょっと怖いけど、ここまで来たんだもん頑張らないとね。
「この後お時間がありましたら講習を受けられますが、どうでしょうか?」
「はい、受けます」
「武器の訓練は明日の朝からはいかがでしょうか?」
「明日の朝からでお願いします」
「では、待合席のところでお待ちください」
やり取りを終えて、久しぶりの待合席で座って待つ。最近はパン屋で働いていたから、手持ち無沙汰になってちょっとだけ居心地が悪い。何もせずにボーッとカウンターを見ている。
冒険者が増え始めて、活気が出始めた頃だ。こちらに近づいてくるおじさんがいた。
「あー、リルっていうのはお前か?」
「はい」
「これから講習を始めるから、二階の講堂まで行くぞ」
それだけをいうとホールの奥の方に歩き始めた。そのおじさんの後ろには同じ年くらいの少年がいて、その後をついていった。あの子も講習を受ける子なのかな?
席から立ち、私もその後を追う。奥に行き、階段を昇り、廊下を進んだ途中でおじさんはとある部屋に入って行った。
少年が先に入り、次に私が入る。その部屋には長机とイスが並べられていて、部屋の一番前には教壇があった。
「好きな席に座れー」
おじさん教官が教壇に立ち、私は一番前から二番目、少年は一番前に座った。
「早速始めるぞ。えー、まず冒険者についてだ」
話が始まった。始めは冒険者についての初歩的な説明からだ。冒険者とはどんな存在でどんな立場であるか、簡単に説明してくれた。この辺りは私も知っている内容だったので復習のつもりで聞く。
次にクエストについての話になった。常設クエストと依頼クエストの二種類があり、冒険者ランクによって受けられるクエストが違うことの説明だ。また常設クエストなら窓口を通さなくてもいいらしい。
町の中のクエストと町の外のクエストについても話があった。どちらかというと町の中のクエストの方がランクアップしやすいらしい。外ばかりじゃなくて定期的に中の仕事も請け負ったほうがいいのかな?
でも中と外じゃ必要とされる技術が違うから、結局はどっちかに偏っちゃうよね。私はどちらの仕事も興味があるから両方とも頑張りたいところだ。
後の話は外のクエストについてだった。討伐の時に必要な道具やキャンプをする時の話。魔物のことを知りたかったら図書室に行くことなど。
最後の冒険者同士についての注意点の話になった。基本的なことで喧嘩はできるだけ避けて、物を申したい時はギルド員がいるところでしてもらうこと。獲物の横取り、報酬の盗みは禁止。あとは細々とした説明を受けた。
「よし、だいたいこんなものだ。他に何か聞きたいことがないか?」
聞きたいこと……そうだ!
「すいません、他の冒険者と一緒にクエストを受けたい場合はどうすればいいですか?」
「あぁ、それか。冒険者同行募集の専用ボードがあるんだ。そこに自分の名前とランクと希望するクエストの名前を書いて張り出しておけばいい。希望者がいればギルド員が仲介をして教えてくれるはずだ」
なるほど、紙に書いて張り出しておくんだね。応募する時は紙を外して受付のお姉さんとかに渡せばいいのかな?
「あとはないかー?」
「あの、冒険に役立つ便利な道具とかありますか?」
「そうだなー、まだお前たちには早いから話さなかったが、マジックバッグというものがある」
マジックバッグ?
「マジックバッグは容量、重量、時間経過を軽減してくれる魔法の鞄だ。大きさは手に乗る小さいものから、背中に背負う大きなものまである。数十万する高級なマジックアイテムだからな、始めの頃は手にするのは難しいだろう」
すごい、そんな鞄があるんだ。それ一つあればどんな道具でもコンパクトに軽く持ち運べるってことだよね。んー、出来ることなら先に買っておきたい品物だなぁ。
「クエストを受け続けていくとその内買う機会もあるだろう。そうそう、中古品もあるっていうからな、始めはそっちを買うのがいいだろう」
中古品があるんだ。それなら装備を整えてから買う余裕があるかな。
「じゃ、これで終わるぞ」
こうして初心者冒険者の講習は終わった。外の冒険に行く前に色々と知れて良かったな。
さて、次は図書室に行って魔法のことを調べよう。
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