チラシのウラ


「なにかこうかなー」

「昨日はイヌさんだったね。ネコさんはどう?」

「んー、きょうはいいや」

 チッ、ガキになっちまった。ふんふんリズムをとって、楽しそうで羨ましい。それに比べてオレは、ついてねーぜまったく。

 オレはウラ。チラシのウラ。つるっとしたツラが自慢だが、それが原因で厄介なことになることもある。

 ママさんは……あー洗濯物たたんでんな。ガキがオレに夢中な間に家事をすます気らしい。それは名誉なことだが、少しくらいオレを顧みてくれねぇかね。

 オモテのやつはいいよなー、ママさんをじっと見つめてもばれねぇし、直接ボールペンでマーキングされんだから。ウラだと感触しかわからねぇ。ちょうど、こってたところに当たって気持ちがよかったなあ。直接かいてもらえたらどれだけいいだろう。

 感触を思いだしながら聞いていると、ガキがようやく何を描くか決めたらしい。

「よーしおはなにしよ! いっぱいかくよー」

 やる気いっぱいの声だ。ついで、遠慮なんてなしにピンク色をした芯先が押し付けられる。

 おっ、おいこら、こらこら! そんなにぐりぐりかくんじゃねぇ! オレのつるつるすべすべな美白が台無しじゃないか! いたいっ! ママさんの超絶マッサージテクとは全然ちげー! 地獄かよここは!

 あーあ、今度生まれ変わるなら絶対、ぜーったいチラシのオモテがいいぜ!

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チラシのぼやき 一途彩士 @beniaya

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