Aちゃんの自殺騒動
今回は、怖い話でも奇妙な話でもないので、興味のないかたは飛ばしてくださいね。
前回に書きました、狐に憑かれたことのあるAちゃんのその後のはなしです。
小学校に入ると、二カ所の保育園の児童が一緒になり、クラスの人数も倍に増えました(それでも一学年一クラスなんですが)。
それにともない子供たちの人間関係も変わり、Aちゃんも私もそれぞれ別に仲のいい子ができました。
と言っても、同じ集落で毎朝の登校班も一緒だし、お互いがお互いの一番じゃなくなったってだけで、ふつうに仲の良い友達でした。
そしてだんだん女子は仲のいい子たちでグループができはじめるのですね。(男子はよくわかりません。)
もちろん、グループを作らずに個人同士で仲のいい子や、特定の仲よしを作らない子も普通にいました。
わたしも委員会つながりで、とても気の合う仲間が三人できました。
飼育栽培委員会っていう、学校で飼育している生き物の世話や学校花壇の植え替えなどをする係で。それまでそんなに話さなかった子たちなんですが、意気投合して一気に仲良しに。
学校が終わると誰かの家に集まって、毎日、日が暮れるまで四人で遊んだりお喋りしたりして過ごしました。学区が広すぎて、どの子の家に遊びに行くにも自転車で十五分~二十五分かかるんですけどね(小学校なのに……)。
一方で、クラスで台頭してきた女子グループがありました。
お姉ちゃん同士が同学年(二学年上)子が中心になっているグループで、クラスの中でもちょっと気が強くて、目立つかんじの子が集まっていました。
二個上の学年にお姉ちゃんがいるAちゃんも、そのグループに入っていました。
で、そのグループなんですが、だんだん他の女子に恐れられるようになってきまして……。
なぜなら、いつも誰かを標的にして、悪口を言ったり無視したりといったことをしているんですね。
何をきっかけにしてターゲットにしてるのかはグループ内部の人間じゃないのでわからないのですが、中心のBちゃん(仮)に嫌われたら終わりなんだろうな、とクラスの女子の誰もが知っている感じでした。
そしてある日、Aちゃんがターゲットになってしまったんです。
わたしは、正直なところ、ああやっぱりなぁと……。
Aちゃん、口調がちょっとキツくて、嫌味なかんじの話し方をするので。
「そんなのも知らないの?(できないの?)」「ほんっともう、◯◯ちゃんさぁー(呆)」「もっと考えなよ」「信じられない」などなど……。
保育園の頃は幼かったこともあり、ぼうっとした性格も手伝って何とも思わなかったんですが、小学校にあがるころになるとAちゃんの言い方のキツさもわかってきて。
でも、自分の宝物を惜しげもなく分けてくれたり、大事な本を貸してくれたり、行動で優しく誠実に接してくれる子だというのはわかっているので、気にしませんでした。
思ったことをズケズケ言う子ではありましたが、悪意をもって誰かの悪口を言う子ではありませんでしたし。
今思うと、たぶん親やお姉ちゃんとかがその子に向けた言葉が、当人の口癖になっていたんじゃないかな……。
わたしだけでなく、気の許せるような仲のいい子には、そうゆう口調になってしまうようでした。
ですがBちゃんたちが、自分にそんな口をきくのを、許すわけもなく……。
実際、Aちゃんは、Bちゃんたちグループ内で「口を開けば自慢話」「上から目線」「言い方がムカつく」って言われていたらしいです。
同じ集落のAちゃんがグループでうまく行っていないことを飼育栽培委員会メンバーにちょっと相談したことがあったのですが、「Aって恐くない? 言い方がキツイってかさぁー」
そして、「でもどうしようもないよ。ターゲットが変わるまで我慢するしかない」と。
わたしは一緒に登校するときに、いつものように接することしかできませんでした。
そんなある日。事件が起きました。
Aちゃんが突然「自殺してやる‼︎」と学校の屋上に駆け上がって行ったんです。
クラスの生徒全員がわっと後を追ったらしいのですが、わたし、教室にいたのに現場を見ておらず。
なぜなら読書に夢中で気付かなかったからです……。
本を読みだすと周りの音が聞こえなくなってしまう子供で。普段も、中休みにちょっと読もうと本を開いてしまって、予鈴も日直の起立の声も気づかず先生に注意されたり、注意もされずに気づけば給食だったってことが何回かありました。
自分でも本当に呆れてしまうのですが、その時も、教室の異変に気付いたのは全てが終わった後でした。
ざわざわと教室に戻ってくる皆を見ながら「あれ、教室移動の授業だったっけ?」などと呑気に思っていたのですが、事情を聞いてびっくり仰天。
友達は、かなりの大騒動だったのにもかかわらず一切気づいていないわたしのほうにびっくり仰天していました。
で、その事件に対する学校の対応がまた今じゃ考えられなくて。「クラスでいじめについて考えよう」みたいな授業を一回やったくらいだったように思います。
そうゆう時代だったのか、そもそもうちの学校がヤバかったのか……。
ともあれAちゃんの力技で、妹グループの子たちは表立っての悪口は言わなくなりました。
ですが、クラスメイトのAちゃんに対する反応が腫れものを触るかんじになり、それが中学まで続きました。
その後、Aちゃんは市内で一番偏差値の高い公立高校に行って、県外の大学に行きました。
Aちゃんは同窓会とかも出ないし、何年も会うこともなかったのですが、
わたしが大学の時、実家帰省しているさいにAちゃんから家に電話がかかってきたんです。
「親にうろこ道(仮)が帰ってきてるって聞いてさ」と(田舎のご近所ネットワーク……!)。
Aちゃんもちょうど帰省中だったらしく、驚きながらも「会おう会おう!」という話になりました。
夜の八時過ぎくらいにひょいっとうちに来たAちゃんは、きっちりメイクもして、なんだかおとなになってました(当たり前)。
「飲みに行こうよ」と誘われたんですが、わたしが「もうお風呂入っちゃった(高校ジャージだし)」というと、「じゃあここでいいや」と家の軒下で酒盛りすることに。
母お手製の梅酒と夕ご飯の残りをつまみに、大学生活の話とか、彼氏の話とか、近状報告を二時間ほど話し、Aちゃんは「じゃね」と去ってゆきました。
Aちゃん、とっても陽キャだった……!(知ってましたが)
キツイ口調はいっさい無くなってて。サバサバした、さりげなく気の使える素敵な女性になってました。
陰の生物であるわたしにもやっぱり優しくて、なんだか懐かしかったです。
でも、突然でびっくりしたなぁ。
ちなみにそれから会っていません。
なんだか、ただの思い出話に付き合わせてしまってすみません……(汗)
次回は、ママ友さんの娘ちゃんに起きた実話怪談をしますね。
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