水甕の祟り

前回にちょろっと書いた、祖母が祟られた話です。


わたしが中学生の頃の話です。

部活が終わって家に帰ると、祖母が寝込んでいるというのでびっくりしました。

なぜなら祖母は小柄ながらもとても丈夫な人で、記憶にあるかぎり風邪ひとつひいたことがなかったのです。


閉め切った襖を開いて「おばあちゃん、大丈夫?」と声をかけたのですが、祖母は布団をかぶったまま、声ひとつあげずにうなずいただけでした。

その時は、いつもめちゃくちゃ喋るおばあちゃんが返事すらしないなんて、よっぽど具合が悪いのかな、と思ったくらいだったのですが、その後も祖母の体調は良くならず、何日も寝込んだままでした。


それだけでなく、なぜか父がものすごく不機嫌になって。

わたしが「おばあちゃん大丈夫かな」と言っただけでもう激怒。こっちは理不尽に怒鳴られて、意味わからんですよね……。

父が常にイライラしているのもあり、家の雰囲気はともかく最悪でした。


ところがある日、祖母が突然ケロッと治りまして。


何も知らないわたしは「おばあちゃん、元気になってよかったね!」と無邪気に喜んでました。

で、後日に母に聞かされたんです。祖母はお寺さんでお祓いをしてもらったからよくなったのだと。


事の起こりは、当時、実家のトイレを汲み取り式から水洗トイレにする工事をしていたんですね。そこで敷地内の土の下から大きな水甕が出てきたんだそうです。

その日から、祖母が寝ついてしまったという。


その時点で母は「水甕が原因なんじゃないか」とピンときたらしいのですが、でも父だけはかたくなに否定して、そのことを口に出すだけで烈火のごとく怒りだすしまつ。

古い家なので、家長に「必要ない」と言われたら、もう決定事項で。

檀那寺のお寺さんに相談にも行けず……。


まあ、結局は相談してお祓いをすることになったわけですが。


わたしが呑気に部活にいそしんでいる間、水面下ではそんな感じだったらしいです。


母に聞いた当時は、そんな父に腹を立てたりしたものでしたが、大人になって思うと、父は怖かったんだと思います。

そんな祟りだとか、人知の及ばない恐ろしいものが自分の家族の身に起きたなんて、信じたくなかったんでしょう。じゃないとブチ切れたりなんてしないですものね。


その頃わたしは部活で帰るのが遅く、土日も部活ざんまいだったのもあって、母に聞くまで水甕が出土したことも、祖母がお祓いをしたことも、まったく知りませんでした。

今になって……不謹慎だけど、その水甕もお祓いも、ちょっと見てみたかったなぁって思ってしまいます。

そうゆうものに子供を関わらせたくない大人の気持ちも、ものすごくわかるのですが。


ちなみに、その家でいちばん感受性が強かったり、弱っている人がさわりを受けやすいのだそう(と、お坊さんが言っていたと母から聞きました)。


以上が「水甕の祟り」でした。

次回はまた祖母から聞いた話でも書こうと思います。「某神様を祀らなくなったはなし」です。

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