第5話黒い龍との対峙

感謝のお祭りの次の日、太郎とリリーは長老の家を再び訪れた。


長老は深刻な表情で彼らを迎え入れた。


「おはようございます、長老様。昨日は素晴らしいお祭りをありがとうございました。」


長老は静かに頷き、二人を座らせた。


「おはようございます、太郎殿、リリー殿。今日はあなた方にお伝えしなければならない重要なことがあります。」


太郎とリリーは緊張しながら耳を傾けた。


「実は、聖獣様を攻撃した生き物の正体が判明しました。それは、黒い龍です。」


「黒い龍…」リリーが驚きの声を上げた。「そんな恐ろしい生き物がこの森にいるなんて…」


長老は深刻な表情で続けた。


「黒い龍は繁殖期が近づくと、もふもふ動物の毛と肉を集めようとします。我々の里もその危険に晒されているのです。」


太郎は拳を握りしめながら言った。


「長老様、僕たちに何かできることはありますか?この里を守るために力になりたい。」


長老は頷いた。


「太郎殿、リリー殿、あなた方の勇気と善意に感謝します。しかし、黒い龍が潜んでいる洞窟は森の奥深くにあります。そこへ向かうには危険が伴いますが、あなた方ならば成し遂げられると信じております。」


太郎とリリーは決意を新たにし、立ち上がった。


「ありがとうございます、長老様。僕たちが黒い龍を何とかしてみましょう」


リリーも強く頷いた。


「はい、私たちに任せてください!」



太郎とリリーは旅の準備を整え、もふもふ動物たちの見送りを受けながら森の奥深くへと出発した。


長老からの地図を頼りに、黒い龍がいるという洞窟を目指す。


「太郎さん、黒い龍なんて本当に恐ろしいですね。私たちなら何とかなりますよね?」


「そうだね、リリー。僕たちが力を合わせれば、どんな困難も乗り越えられるはずだ。」


森の中は薄暗く、独特の静けさが漂っていた。


太郎とリリーは慎重に進みながら、周囲を警戒した。


「気をつけて、リリー。この森には他にも危険な生き物がいるかもしれない。」


「はい、太郎さん。何か異変を感じたらすぐに知らせます。」


二人は互いに励まし合いながら、森の奥へと進んでいった。やがて、洞窟の入り口が見えてきた。そこは岩に覆われた暗い穴で、不気味な雰囲気が漂っていた。


「ここが黒い龍の住処か…」


「太郎さん、気を引き締めて行きましょう。」


「あぁ、そうだね。」


太郎は深呼吸をし、リリーと共に洞窟の中へと足を踏み入れた。


洞窟内はひんやりと冷たく、湿った空気が漂っていた。奥へ進むほど、闇が深くなっていく。


寒さはもふもふ動物達の毛で作られたコートで耐えた。


「太郎さん、慎重に…」


「大丈夫だ、リリー。一緒に進もう。」


二人は持ってきた松明を灯しながら、慎重に洞窟の奥へと進んでいった。


突然、洞窟の奥から低い唸り声が聞こえてきた。


「太郎さん、あれは…」


「間違いない、黒い龍だ。」


二人は息を殺しながら、音のする方向へと進んだ。


やがて、巨大な影が見えてきた。


それは漆黒の鱗を持つ、恐ろしい黒い龍だった。


しかし、そのそばにはもう一匹の黒い龍が横たわっていた。


つがいのメスで、明らかに弱っている様子だった。


「黒い龍!」


太郎が叫ぶと、黒い龍は鋭い目を光らせてこちらを睨んだ。


「人間がここに何の用だ…」


太郎は一歩も引かず、黒い龍に立ち向かった。


「この森のもふもふ動物たちを守るために来たんだ!もう、もふもふ動物を襲うのはやめて欲しい!」


黒い龍は低く唸り、口から炎を吹き出そうとした。しかし、その動きはどこか鈍く、疲れ切っているように見えた。


「人間ごときが指図しおって...」


「待て、太郎さん…」


リリーが冷静に言った。


「この黒い龍、疲れているみたい。何か事情があるかもしれない。」


太郎は一瞬考え、決意を新たにした。


「黒い龍、君のつがいはどうして弱っているんだ?」


黒い龍は一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに再び警戒の目を向けた。


「お前たちに何の関係がある…」


「僕たちは敵じゃない!お願いしに来たんだ。やめてくれるのならば、どんな手助けでもしたいんだ!」


太郎の真摯な言葉に、黒い龍の警戒心が少しずつ解け始めた。


「…つがいのメスが重い病にかかっている。治せるものなら治してくれ。」


太郎は頷き、持ってきた薬草や道具を取り出した。


「リリー、手伝ってくれる?」


「もちろん、太郎さん。」


二人は慎重にメスの黒い龍に近づき、治療を始めた。薬草を調合し、傷に塗り、包帯を巻く。リリーは持ってきた水を使って龍の口元を潤わせた。


龍の巨体に薬を効かせるとなると、大量の薬草が必要になる。何度も洞窟と森を行き来し薬草を運んだ。


「少しでも楽になればいいんだけど…」


日が落ちる頃、メスの黒い龍は少し動けるようになっていた。オスの黒い龍も、その変化に気づいていた。


「本当に…ありがとう。どうやらお前たちは敵ではないようだ。」


その時、周りには犬のようなもふもふ動物たちが現れ、口に武器を咥えて威嚇していた。


しかし、オスの黒い龍が頭を下げた。犬達は戸惑いながらも、警戒を解いた。


犬のようなもふもふ動物が近づいてきて、太郎とリリーに頭を下げた。


「太郎様、これは一体...」


太郎はほっと息をつき、微笑んだ。


「大丈夫何とかなったよ。村に戻って長老に伝えて下さい。龍はもう大丈夫だと。」


「かしこまりました。太郎様達はこれから如何程に?」


雌の龍の治療に数日ほど時間がかかることを説明し犬達には、村へ先に戻ってもらった。


その後、献身的に治療に取り組んだ。


こうして、太郎とリリーは黒い龍と和解することが出来た。

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