第4話村の鍛冶屋マックス

朝日が牧場を温かく照らし、太郎は今日も一日の作業に取りかかっていた。


今日は牧場の修理をしていた。修理道具が不足していることに気づき、クラウスのおすすめ、村の鍛冶屋であるマックスの元へ向かうことにした。


「行ってきます、クラウス。何か必要なものがあったら言ってくれ。」


「気をつけて行ってらっしゃい、太郎さん。マックスは口数は少ない方ですが、腕は確かですから。」


太郎はクラウスの言葉に頷き、村の鍛冶屋へと向かった。




鍛冶屋に到着すると、重厚な金属音が響いていた。鍛冶場の中には力強い姿勢で作業に打ち込むマックスの姿があった。彼は筋肉質で背が高く、短く刈り込んだ髪と厳つい表情が印象的だった。


「こんにちは、マックスさん。牧場の修理道具を探しに来ました。」


マックスは手を止め、太郎に視線を向けると、無言で頷いた。彼の無骨な態度に少し驚きながらも、太郎は続けた。


「このリストにある道具が必要なんですが、見てもらえますか?」


マックスはリストを受け取り、黙々と道具を探し始めた。彼の手際の良さに感心しつつ、太郎はふと鍛冶場の周りを見渡した。古びた工具や完成品の武器、農具が整然と並んでいる。


「マックスさん、この鍛冶屋はずいぶん歴史があるんですね。」


「……ああ。祖父の代から続いている。俺で三代目だ。」


短い返答ながらも、太郎はマックスの言葉に村の歴史を感じ取った。




マックスが道具を整えている間、太郎は彼にもう少し話しかけてみることにした。


「マックスさん、あなたはずっとこの村で鍛冶屋をされているんですか?」


「……そうだ。村の皆を支えるのが俺の役目だからな。」


「そうなんですね。村の皆さんから信頼されているんですね。」


マックスはわずかに微笑んだように見えたが、すぐに真剣な表情に戻った。


「必要な道具はこれで全部だ。何か他に要るものがあれば言ってくれ。」


「ありがとうございます。実はもうひとつ、医療道具の作成もお願いしたいんです。僕は獣医師で、動物たちの治療に使いたくて。できますか?」


マックスは少し考えた後、頷いた。


「わかった。具体的な仕様を教えてくれれば、作ってやる。」


「ありがとうございます!マックスさん!後ほど詳細を書いてお渡ししますね。」


道具を受け取り、話を終えた後、太郎はふと鍛冶場の隅にある古びた像に目を留めた。


「これは…?」


「あれは村の守り神、アルファリアの伝説に出てくる神獣だ。」


マックスは重々しい声で語り始めた。


「この村には古くから守り神の伝説がある。神獣は村を災いから守り、人々に豊穣をもたらすと言われている。」


「すごい話ですね。守り神はこの像の同じ姿をしているんですか?」


「……そうだ、大きな翼と鋭い爪を持つ、白銀の獣だ。村の祭りの時には、その姿を模した仮装をするんだ。」


太郎はその話に興味を持ち、さらに村の歴史や文化について学びたいと思った。


「その祭り、ぜひ参加してみたいです。もっとこの村のことを知りたいので。」


マックスは静かに頷き、太郎に鋭い眼差しを向けた。


「お前はこの村の一員だ。いつでも歓迎する。」


太郎は感謝の気持ちを込めて頭を下げた。


「ありがとうございます、マックスさん。これからもよろしくお願いします。」


太郎は必要な道具を揃え、鍛冶屋を後にした。彼はマックスとの交流を通じて、村の歴史や文化に触れ、さらにこの新しい生活に対する興味と愛着を深めていった。

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