応えられない
センシティブな内容だが、数年前に兄弟が自殺した。何も残されてないので完璧にはわからないが、いろいろな断片から察するに、積もりに積もったものがたった一言で爆発したのだろう、と思っている。
正直な話、私は兄弟に親のことは任せて早々に今世からログアウトするつもりでいた。というのも、兄弟の方が優秀で、親にもかまわれていたからだ。親の兄弟を見る目は楽しげで、私を見る目は本当にどうでもよさそうだった。当人たちはその意識は全くないだろう。なぜなら葬儀のとき「あんたたちには精一杯愛情を注いでいたつもりだった」と泣いていたから。その愛を私は感じ取れていなかったわけだから、私が異常者であることがこの一言で確定した。
親は別に私を邪険にしていたわけではない。ただ放置していただけだ。進〇ゼミやらなにやらもやりたいといえばやらせてくれた。私が飽き性で続かないことも、当然ながら結果にならないこともきっとわかっていたと思う。なにより私が何も持っていない、いわゆる“子ガチャ失敗”であることも理解していただろう(親ガチャという表現もあるが、私は子ガチャももちろんあると思っている。親もまた生まれてくる子がどんな子かを選べないので)。そんな私でもしっかりと大人になるまで養ってくれたのだから、感謝すべきと思っている。
一つだけ、「自分で考えろ」というのは応えられていると思っていた。兄弟やいとこや親の学生時代と比較され続けてきたし、何か教わろうとすればそのように言われてきたから、「自分で解決できないことは諦める」を意識してきた。先のとおり学生時代は木偶の坊だったのだが、一人暮らしを始めてない頭を絞るようになり、その考えをかなり強固なものにできた。おかげで可能な限り他人を巻き込まないように生きれるようになったと思う。しかし兄弟が逝ってからは真逆で「困ったら頼れ」と言われていて、わからなくなっている。というか頼り方、頼り加減がわからない。いたらない子供で本当に申し訳ない。
ここからはかなり愚痴寄りになってしまうので、読み飛ばしてほしい。
中学生のとき、剣道(部活)の大会で個人の部3位になったことがある。完全にまぐれだが個人トーナメントで2,3回ほど勝ち上がり、その後同校の部長に負け。両親は同日に地域の体育大会があり、兄弟と共に参加していたので、こちらの方は第一試合しか見ていないと聞いている。
父に賞状を見せたところ、「すごいじゃん」「名前間違ってない?」と言われ、冗談と受け取り笑って返した。車の中で母に連絡し、全く同じ反応をされ、同じように笑って返したが、一発で信じてもらえないのはやはり、無能だと思われてるからなんだろうなと少しだけ思った。
車中では父からどう考えても無理な攻め方を提案され(父は剣道は体育でしか経験はない)、笑って「いや無理だよ」と返したら「やる前から無理とか言うな!」と不機嫌にしてしまい、その後家に着くまで無言だった。
家では手巻き寿司の用意がされていた。聞けば兄弟は敢闘賞をとったらしく、そのお祝いだと。私の賞状を母に見せると「じゃあ、ついでに・・・」。低能な私の人生でおそらくもうないであろう「3位」は、「ついで」に祝われた。
食事中も父は「体育で剣道部員を負かしたことがある」と自慢し、母からは「兄弟を誉めてあげて」と言われるだけだった。当時未熟だった私は耐えきれず泣き出してしまい、父は「泣くなら食うな」と言って不機嫌になり、私は食事をやめて自室へ。私が下げられるのはいつものことだったし、兄弟と同じ大会に参加していた分そちらが優先になるのは仕方がない。後にも先にも耐えられなかったのはこの一回だけだ。
また直接的な言葉ではないにしろ「1位ではない」ことを残念がられていて、期待に応えられなかった側面もある。この時の私はまだ受け皿として完成していなかった。本当に申し訳ない。
結局この後両親から謝られることはなかった(母は様子を見に来て慰めてくれたが私が悪い風で、「謝りに行こうね」と言われた)。もともと何か理不尽を受けても謝られたことはない。反論しようものならめちゃくちゃな屁理屈で逆ギレされるから反抗も面倒、というか叱られる恐怖の方が勝ってしまっていた。これに反抗できるようになっていたらもう少し強い人間になれていたのかも。ちなみにこのあとからどんどんやる気が失せてしばらく部活に行かなくなった時期はある。笑
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