2話 幼馴染とはラブコメにならない、、、はずなのだが今朝の通学路では(ry

「おはよっ、ずいぶん早いじゃん」


玄関の前で待っていたのは、幼なじみの茉莉花まりかだった。

うん、高校初日からギリギリで登校するのはカッコ悪いからな。男子の制服似合ってるって?ありがとな、お前の女子の制服も似合ってるぞ。いててて、なんで腕をつねるのかな。


―中3の進路相談の時

茉莉花まりかは勉強できる方じゃなかったのに、突然、俺と同じ高校に行くって言い出して驚いたっけ。

一緒に受験勉強してお互い教えたりしたよな。え、ほとんど教えてもらってたって?勉強くらいしか取り柄がないからな、俺は。


てか、なんでいつも玄関で前で待ってんの?

あと、なんで家を出るタイミングが分かるの?

「幼馴染なんだから当然でしょ?」

いやいや意味が分からないのだが。

上目遣いで「もーいい加減分かってよね」みたいな表情はなんなのかな。言いたいことがあるなら、はっきり言わないと分からないぞ、って痛っっっ、なんで背中をはたくんだよ。


それに朝からスキンシップが激しくないか、そんなにぎゅっと腕にしがみつかれると歩きづらいし、その、なんだ、色々と当たってだな。


あー、愛瑠璃めるり美瑠璃みるり夢瑠璃むるり

可愛い三つ子の妹たちよ。

3人とも玄関ドアの隙間から覗いてる視線が怖いぞ。

「ただじゃ済まないわよ、この女狐め!」「生かしておけないわ、泥棒猫!!」みたいな。ちょっと殺気入ってるし。

夢瑠璃むるりはなんでバット握りしめているのかな、危ないぞ。愛瑠璃めるり美瑠璃みるりが必死で止めてるように見えるけど気のせいだよな。


茉莉花まりかは、中学3年の時に急に成長したよな、色々と。

あーうん、小学生の時に「やーい、ぺたんこー」とかいってからかったのは、ホント悪かった。若気の至りってやつだから許してくれよ。


だから牛乳飲んだり神頼みしたりでずいぶん努力したって、そういうところが頑張りやさんでエライよな、茉莉花まりかは。ははは、腕を千切れそうだから、少しゆるめようか。それにやっぱり当たってるしな、色々と。


…………………


えーと、


茉莉花まりかや妹達の動きが、一時停止したかのように「止まる」

そして世界全体がぼんやりとしたソフトフォーカスになる。


の登場


「解せぬ!」

あー、怒ってあんまり顔を近付けてこないように。

春風でなびいた艶麗な銀髪が俺を包み込み、ドキドキして落ち着かないからな。


うん、確かに言ったよ、言った言った。

昨晩観てた春アニメ「俺の幼馴染たちが金ツンツインテの転校生と修羅ってクラスは控えめに言ってラブ❤バトルフィールド」で、幼馴染良いなぁ、ってな。


ただな、こんなグイグイ来る感じの幼馴染じゃなくてね、隣に住んでるのにたまに登校時に会うくらいで、会っても「あ、おはよ」ぐらいでさっさと先に行くとかで良いのさ。


それにだな、その、あまり大きな声では言えないのだけど、な方が俺としては好みなわけで…


「そうか、では、これならどうじゃ」


世界が動き出す。


「おはようございます。高校初日から晴天に恵まれて良かったですわね」

茉莉花まりかが、栗毛色のショートカットから黒髪ストレートロングに変わっているな。佇まいもどこかのご令嬢のようだぞ。


あ、腕はやっぱり組むのね。そして、触るか触らないかの絶妙なソフトタッチで当ててくるのは「当ててんのよ」の上位互換テクニックなのかな。


…………………



いやね、「控えめ」っていうのは清楚系って意味合いではなくてだな。特定の部位における遠回しでぼかした物言いであってだな。

「ん?、なんじゃ、はっきり言わんか」


言えるかーーー、お前ぐらいのを嗜好してるとかーーーーーーー


ちなみに、


中学3年の時に一緒に受験勉強した記憶も、特定部位が急成長した記憶も、

さすがは女神さま。そういうところはね。


でも、ラブコメの女神さまなので、ただの幼馴染にはしてくれないんだよな。


あー、ぷんすか「怒ってます」ポーズも、可愛い以外の何物でもないぞ。



通学路でも、好きな女神にラブコメを強要されてツライ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

3日ごと 03:00 予定は変更される可能性があります

俺は普通の恋愛がしたいだけなのに、ポンコツ女神からベタなラブコメを強制されてツラい ろくごー @rokugou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ