【3】思い出は雪が溶けるように

 朝、小学校にゆく準備をしている時のこと。テレビに映るニュースを見て母が言う。


 「今日は雪が振るってさ」


 少し面倒くさかった学校も

 むしろ「友達と雪で遊びたい!」と

 楽しみになり、靴を履いて玄関を飛び出す。


 「いってきます!」

 「いってらしゃーい!」


 僕はそのまま駆け出した。


 。 。 。


 「なーな、今日雪が降るんだって」


 学校に着いてからのこと。

 僕はすぐさまその話題を友達にふった。


 手袋をしていても手は悴むし

 何も覆いがない耳は痛い。


 けれど、教室のドアをくぐった先にいる友達を見て、その痛みは「雪」についての話題にふんわり消された。


。 。 。


 「なかなか雪が降らない」


 三時間目の授業中のこと。


 僕はベランダから二番目の列にいて

 そこからジッと曇った空を見つめながら

 考えていた。


 曇った空は気分を暗くするけど

 今日はワクワクする。


 今降るなら昼休みまで止まないで。

 それか降るなら昼休みに!


  。  。 。


 「まだ降らない」


 給食時間のこと。


 これが終われば昼休み。

 不安と期待の混ぜ合わさったドキドキは

 次第に不安が大きくなっている。


 温かいポトフを啜る。

 コッペパンを齧る

 それを牛乳で流し込む。


 お願いします、神様!


 。  。 。


 雪が降る。


 校庭は友達でいっぱい。


 シンと静かに降る雪と

 はしゃぎ回る子供たち。


 いつの日かの思い出。


 でもそれはボンヤリとしていて

 鮮明ではない。


 ──溶けてしまった冬のこと。


 ❅思い出は雪が溶けるように❅

      終わり

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