第8話 つきまとう男

私はベトナム・ハナム省で生まれたティン(女性30才)です。


この恐怖の話は2021年9月10日、私が28才の時に起こった話です。


この日は私が教えている大学の入学式の日だったので特に日時ををはっきり覚えています。


私は普段は夜11時に電気を消して寝ます。

その日もいつも通りに就寝しました。


しかし、今日に限って電気を消すととても怖くて不安な感じがして、まるで誰かが私を見ているような気がしました。


不安で寝られないので私は寝室から飛び出して、同僚のギアさんに電話をかけました。


ギアは占いができるし、霊感があるので頼りたく思いました。


最初ギアは「余計なことを考えないで、何も感じないから心配しないで」と言いました。


しかし私が「怖くて怖くて不安に感じる」と言っても、ギアは「大丈夫、私は何も感じないから安心して早く寝なさい、そして明日の学校の開校式でまたゆっくり話しましょう」と言っていました。


私は彼女を信じて、そのままの気持ちで部屋に戻りましたが、やはり全く眠れませんでした。


翌日、眠い目をこすりながら私は学校に行きました。

ギアさんは私を見て「あなたには何も悪い物は見えません、変わりありません」と言いました。


正直ホッとしました。


入学式が終わった後、私とギアさんはイベントでよさこい(日本の踊り)を踊った学生を連れて、ベトナムのチェーを食べて家に帰りました。


その夜、電気を消して寝ると、前の晩と同じように怖くなりましたので私は外に出て再度ギアに電話をかけようとしました。


その時、兄がリビングでサッカーを見ていて、私に「ソワソワしてどうしたの?何か気になる事があるのか?」と聞きました。

私は「何かわからないけど怖くて、部屋に誰かがいるような感じがする」と言いました。

兄は「そうか、たぶん気のせいだろ?」と言ってサッカーに目を向けました。


あまり関心が無いようでした。


ギアさんが朝、私に言った「何も感じなかった」と言う言葉を信じて無駄な考えをしないで、努めて寝るようにしました。


しかし、私は断言します、誰かが部屋にいます。

いつもとは明らかに違う不安がまた私を襲います。


このとき再度ギアに電話しました。

「ギア、あなたの事信じてるから本当の事を言って。私の部屋に感じてる人がいるか、そしてどのように感じているか教えて」と聞きました。


するとギアさんは、「本当は電話を聞いた時、背筋に冷たい空気が走るのを感じたの。でもそんなに強い霊ではないから、すぐに出て行くと思って黙っていたの。ごめんね。もしかしたら思った以上に悪い誰かいるのかもしれない」と言いました。


続けて彼女は「とにかく今晩は落ち着いて寝なさい、明日実際に部屋を見に行くから」と言いました。


私は複雑な気持ちで電話を切って部屋に戻りました。


部屋に帰ると甥っ子のビーくん(11歳)がベッドに寝ていました。


しかし私がベッドに横になった瞬間、ビーくんが急に起き上がり、慌てて部屋から出て行って両親を呼んできました。


そして私のベッドを指差して「見て、あれ、あれ。人がいる!」と両親に言いました。


しかしこの時、甥っ子は私の横にある大きなぬいぐるみを人と間違えて見てしまったと思われ、逆に両親に叱られました。


翌朝仕事に行く前、兄がリビングで私にこう言いました。


「昨日ビーくんから話を聞いたよ。おそらく彼には両親には見えない何かが見えたのだろう。たぶん君の感覚は正しいと思う」と。


兄に言われて私はますます怖くなりましたが仕事に出かけました。


学校に到着しオフィスに入ると、ギアさんが先に座っていました。


ギアがハッキリ言いました、「今、あなたの後ろに男がついていますよ。よく見えます。かなり強いものを感じます」と。


それを聞いた私の顔は青ざめました。


ギアさんは続けます。

「私には男性の幽霊が見えます。彼の顔はとても悲しそうです。夜はあなたの部屋にいますが、昼間はリビングに座っています。でも、彼はあなたに何の損害も与えません」と。


私はさらに青ざめました。


ギアさんは続けます。

「彼は2日前にあなたの部屋に来ました。あと3日で去るつもりです。おそらく彼はあなたに何かを手伝ってもらいたいのかもしれません」と。


そのあとギアは「花や果物を買って供え物をし、彼にこう言ってください。もしあなたが助けが必要なら、私の夢の中で知らせてください」と言いました。


しかし私は彼と会話するのがとても怖かったので、祈る勇気がありませんでした。


翌朝、私は部屋から出て、リビングやキッチンにいる間でも、後ろから誰かに見られているような気がしてとても怖かったです。


昨夜のビーくんの行動と兄の言ったことを思い出したので、先日部屋で何を見たかビーくんに尋ねると

「部屋でお父さんよりも若い男を見た」と言いました。


やはり男性です。


その時、私は正直ギアさんの言っていることが正しいと思いました。


さらに首に重い感覚があり、誰かが私の後ろに立っているような気がします。


私の兄もその時期に家の中に誰かがいることをはっきり感じていました、特に夜です。


私はあらゆる方法を試しました。

迷信に従って、潰したにんにくをいつもそばに置いたり、ナイフをベッドの横に置いたり。


一晩中電気をつけて眠ったりしましたが、奇怪な感覚は何も変わりませんでした。


しかし金曜日の朝、目が覚めると急にいつもよりも軽く感じ、以前のような恐怖の感覚はなくなっていました。


そのとき、突然ギアからメッセージが届き、「その人、もう行ったんでしょう?安心して、彼はもう部屋から出ていったんだよ」と言いました。


私は驚いて「私が朝起きたら体が軽くなったのをどうして知ったの?」と尋ねると、ギアは「彼がいなくなったのが見えた、もう怖がる必要はないよ。よかったね」と言いました。


しかしそれ以来、怪異は無くなりましたが私は逆に衰弱し、寝ているときに死んだ人や悪夢を見ることが多くなりました。


数か月後、兄は痩せ細った私を気遣って有名な占い師のところに連れて行ってくれました。


占い師さんは「過去に私にずっと付きまとっている男がいた」と言っていました。

その男性は私を離れていったのですが、私は以前よりも霊に影響されやすくなったと思いました。


「離れたのにまだ私は彼の影響を受けるのですか?」

「はい、あなたの体質が霊を受け入れ易くなったのです」


私はその悪い縁を断ち切りに行くことにしました。


占い師は1週間後に戻ってきてその縁を切ると約束しました。


それは私にとって悪夢の時間でした。


彼は私に「縁を切られる予感」を感じたようで、その後の日々はいつも悪夢を見て、首を絞められる夢を見て、眠れず、肩が重く感じられ、両腕が疲れ切った感覚です。


縁を切る前に、私は怖くて兄を呼んで、私のために上のベッドに寝てもらいました(私の部屋は二段ベッドです)。


その夜、誰と話したのかは覚えていませんが、寝ている間に大声で笑ったらしいです。


上の段で寝ていた兄がそれを聞いて、翌日「怖くて眠れないと思っていたけど、昨夜誰かと話して大声で笑っていた」と話してくれました。


占い師に縁を切ってから戻ったその日以来、私は長い間トラウマに苦しみ、精神科医の診察を受け、精神安定剤を飲む毎日でした。


気持ちを楽にするために毎日仏法を聞かなければなりませんでした。


徐々に良くなりましたが、その後も色々な不思議な事に会いました。


多分私は一生この男の霊から離れられない気がして覚悟しています。

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